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葛藤 ルーフェイア・シリーズ04  作者: こっこ
Chapter:03 転機
25/32

Episode:25

「イマドおにいちゃん、おかえりー!」

「ただいま、リティーナ。いい子にしてたか?」

「うん!」

 同室の先輩の妹だ。


 この子はまだ五歳だから、シエラには入学できない。けど先輩のほうは、もともと他所のMeSに行ってたのもあって、シエラに入学しちまった。だからリティーナはひとり、孤児院に預けられたワケなんだけど……泣いてばっかで何も食わなくて、たちまち痩せちまったらしい。

 で、それじゃ命に関わるって話になって、特例で寮でいっしょに暮らしてる。

 先輩と昼飯食ったあと、リティーナはいつも部屋に一人だから、一回戻って様子見んのが俺の日課だった。


「勉強、終わったのか?」

「終わったよ、ほら、見てこれ!」

 答えを書き終わったプリントを何枚も、誇らしげに見せる。

 このまま兄貴といっしょにいるには、シエラの本校に入学しなきゃなんない。けどそれ、かなり難関だったりする。

 だからいま、リティーナは猛勉強中だ。兄貴と離れたくない一心で頑張ってる。


「あとで丸つけしてやっからな。ん? 洗濯物どこだ?」

「これー!」

 洗濯物の塊になって、リティーナが出てきた。ぜんぶ抱えてきたらしい。

「危ねぇぞ。ほら貸せ」

「はーい」

 ぜんぶ持ってやって、チビ連れて洗濯場まで行く。


「悪りぃ、ヴィオレイ、こんだけ頼むわ」

「ほーい。リティーナ偉いね、お手伝い? イマドにいじめられてない?」

 リティーナは寮じゃけっこう人気者だ。可愛がられる性格だし、ここじゃ弟妹失くしたヤツも多いから、どこへ行ってもかまわれる。

「イマドお兄ちゃんが、そんなことするわけないもん!」

「そっかー、なら良かった」

 他愛ない話しながら、洗濯物を突っ込んでく。


「ねぇお兄ちゃん、リティーナお腹すいた!」

 チビがこう言い出したら、食わせるまで黙らない。

「まだ、おやつ食ってねぇもんな。食堂行くか?」

「やだ! お兄ちゃんのパンケーキがいい!」

 こいつわりとワガママだ。


「いいだろ、食堂ので。ケーキとかうまいぞ」

「や、だ! お兄ちゃんのほうがおいしいの!」

 向こうは本職なんだから、ンなわけねぇんだけど、こう言われちまうとダメとも言えない。

「しゃぁねぇな……今日あんま時間ねぇから、少しだけだぞ」

 押し切られて、部屋から材料持ち出して、調理室まで行く。


「はやく焼けないかな〜」

「触んじゃねぇぞ、熱いから」

 フライパン覗き込もうとするリティーナを引き離しながら、手早く焼いて出してやった。

 ふぅふぅと冷ましながらコイツが、さっそくほおばる。

「おいしーい!」

 こういう顔されると、まんざらでもない。


「悪りぃけどあんま時間ねぇから、早めに食えよ」

「うん」

 言われてしばらくの間、黙って食ってたリティーナが、とつぜん口を開いた。

「イマドお兄ちゃんって、あのきれいなおねえちゃんと、ケッコンするの?」

 真顔で訊かれて思わずむせる。



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