Episode:23
◇Imad
クラスの雰囲気はかなり変わった。
恐れをなしたんだろう、女子どもはルーフェイアに悪さすんのをピタっとやめてる。
細かいこと言うならこれもヤベぇんだろうけど、とりあえずいろいろ言われなくなっただけ、ルーフェイアの顔色も良くなってた。
あとすげぇのが、ミルだ。あの独特のノリでルーフェイアのヤツにまとわりついて、完璧な防波堤と化してる。学内のブラックリストにゃ片っ端から載ってるような、とんでもねぇ災厄娘だけど、今回ばっかは感心するっきゃなかった。
男子のほうは、だいたい元通りだ。俺ら仲介にする格好で、ルーフェイアはそれなりにやれてる。
いちばん気になるシーモアのやつは、だんまりだった。あれ以来クラスの女子と微妙に距離が出来てんのもあってか、目立った動きはゼロだ。ただ諦めたとか納得したふうじゃねぇから、まだひと悶着ありそうな気がする。
ただとりあえずは、平穏ってとこだろう。
「ルーちゃん、つぎは教室移動だよ。ここで用意しちゃダメだよ」
「え? あ!」
ヴィオレイのまとわりつき、かなり激しい。けどルーフェイアは、誰かが面倒みねぇとどうもダメだから、あんま問題になってなかった。
「あれ、えっと……あと何……?」
それにしたってコイツ、バトルだとあんな冴えてんのに、ふだんの生活はボケ過ぎだ。
「工具だ工具、キット取って来い」
慌ててルーフェイアのヤツが、教室の後ろへ向かう。
途中で女子どもの脇を通ったけど、どうってことなかった。すんなり奥まで行って戻ってくる。
――けど。
通りすがり、シーモアのところで一瞬、ルーフェイアが立ち止まる。
「なんか言われたのか?」
「ううん」
気になって、戻ってきたコイツに訊いてみたけど、答えはNOだった。どう見てもなんか言われてきたっぽいのに、それ言わないってのは、要するになんかヤバいんだろう。
「ならいいけどな。行くぞ」
「うん」
知らん顔して立ち上がる。
こいつ、こういうことは頑として言わない。迷惑かけるのがイヤとかなんとかで、なんだって自分でどうにかしようとしやがる。
でも、ともかくなんか起こるのは間違いなさげだから、気をつけながら様子見ってセンだろう。
――アーマルとヴィオレイにも言っとくか。
あるとしたら、授業終わってからってのは確実だ。さすがのシーモアのヤツも、授業中にやらかすほど、ムチャクチャじゃねぇし。
だったら念のためでも、手が多いほうがいいだろう。
授業だのの合間狙って、あの二人に伝える。
「それってさ、なんかする気満々ってことじゃ?」
「でもよ、アイツ罠とかキライじゃん」
「シーモアのことだから、サシで勝負じゃねぇか? あいつ性格、直球だかんな」
「あー、それアリかもな」
そんな話してたら、教官に呼ばれてたルーフェイアのヤツが戻ってきた。