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葛藤 ルーフェイア・シリーズ04  作者: こっこ
Chapter:03 転機
22/32

Episode:22

 間をおかず、ルーフェイアの攻撃。突いて、返して、薙いで、変幻自在ってこのこと。

 イマドは防戦一方だ。けど、防げるだけでもすごい。ふつうならこんなの、ものの数秒で負けて終わりそうだもの。

 みんな文字通り、息を呑んで二人を見守る。


 またルーフェイアの攻撃。打ち下ろしてきたのをイマドが、横にした杖で受け止める。

 瞬間、彼女が懐にもぐりこみながら、イマドの杖を支点にして、自分のを反転させた。

 みぞおちへの返し突きを、イマドは避けきれない。


「そこまで!」

 教官の声と目にしたものに、みんないっせいにどよめいた。

 ルーフェイアの強烈な突きは、寸止め。イマドは怪我してない。


 圧倒、なんてもんじゃなかった。正真正銘の桁違い。これじゃ上級生どころか、傭兵隊の先輩たちともやりあえる。

 こんな子を、もし怒らせたら。そう思うと、背筋がちょっと凍りそう。


「強すぎ……だよね、あれ」

「ちょっと怖いかも」

 ほかの女子も同じこと思ったみたいで、あたしのそばで囁きだす。


「あたしもう、あの子に何かするのはやめる。キレたら殺されそうだもん」

「おとなしいから、それはないと思うけど……」

「でもおとなしい子のほうが、キレたらヤバくない?」


 これが決定打だった。ただでさえミルの言った、「MeS上がりとか少年兵あがりかも」って話で、みんな浮き足立ってたわけで。そこへこんなもの見せられたら、とてもじゃないけど手出しなんてムリ。


「おまえなぁ、もっと手加減しろよ。危ねぇだろ」

 イマドはなんでか知らないけど、ルーフェイアの強さには慣れっこみたいで、なんか突っ込みいれてるし。

「ごめん……」


 また謝るルーフェイアのところへ、とつぜんミルが乱入した。

「ルーフェやっぱりすごい〜! ねね、こんどあたしにも教えて。いいでしょ」

「え……」

 ルーフェイアはいつもどおり、黙ったまんま困った顔。ホントに話さない子。


「待てミル、ルーちゃんに教わるのは、この僕が先だから」

「えー、ずるーい! あ、じゃぁいっしょならいいよ」

「なんだそれは。僕は一回も、いっしょなんて言った覚えはないぞ」


 なんかぎゃぁぎゃぁ、周りのほうが騒ぎだす。

 そこへ、ほかの男子が声をかけた。


「おまえらさ、そこで教官、頭から湯気出してるぜ? 最後の挨拶くらいしろって」

「最後の挨拶って、まだ時間きてねーぞ?」

 やり取り見て、何かが動いたかも……って気がした。何がって言われると上手く答えられないけど、ともかくいままでと違くなったのは確か。


 急に心配になって、シーモアを見る。こんなの見せられたら、冷静じゃいられないと思うから。

 けど彼女、黙って自分の荷物持って、教室のほうへ向かって。

「シーモア!」

 慌てて追いかける。

 シーモアは、振り向きもしなかった。



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