Episode:22
間をおかず、ルーフェイアの攻撃。突いて、返して、薙いで、変幻自在ってこのこと。
イマドは防戦一方だ。けど、防げるだけでもすごい。ふつうならこんなの、ものの数秒で負けて終わりそうだもの。
みんな文字通り、息を呑んで二人を見守る。
またルーフェイアの攻撃。打ち下ろしてきたのをイマドが、横にした杖で受け止める。
瞬間、彼女が懐にもぐりこみながら、イマドの杖を支点にして、自分のを反転させた。
みぞおちへの返し突きを、イマドは避けきれない。
「そこまで!」
教官の声と目にしたものに、みんないっせいにどよめいた。
ルーフェイアの強烈な突きは、寸止め。イマドは怪我してない。
圧倒、なんてもんじゃなかった。正真正銘の桁違い。これじゃ上級生どころか、傭兵隊の先輩たちともやりあえる。
こんな子を、もし怒らせたら。そう思うと、背筋がちょっと凍りそう。
「強すぎ……だよね、あれ」
「ちょっと怖いかも」
ほかの女子も同じこと思ったみたいで、あたしのそばで囁きだす。
「あたしもう、あの子に何かするのはやめる。キレたら殺されそうだもん」
「おとなしいから、それはないと思うけど……」
「でもおとなしい子のほうが、キレたらヤバくない?」
これが決定打だった。ただでさえミルの言った、「MeS上がりとか少年兵あがりかも」って話で、みんな浮き足立ってたわけで。そこへこんなもの見せられたら、とてもじゃないけど手出しなんてムリ。
「おまえなぁ、もっと手加減しろよ。危ねぇだろ」
イマドはなんでか知らないけど、ルーフェイアの強さには慣れっこみたいで、なんか突っ込みいれてるし。
「ごめん……」
また謝るルーフェイアのところへ、とつぜんミルが乱入した。
「ルーフェやっぱりすごい〜! ねね、こんどあたしにも教えて。いいでしょ」
「え……」
ルーフェイアはいつもどおり、黙ったまんま困った顔。ホントに話さない子。
「待てミル、ルーちゃんに教わるのは、この僕が先だから」
「えー、ずるーい! あ、じゃぁいっしょならいいよ」
「なんだそれは。僕は一回も、いっしょなんて言った覚えはないぞ」
なんかぎゃぁぎゃぁ、周りのほうが騒ぎだす。
そこへ、ほかの男子が声をかけた。
「おまえらさ、そこで教官、頭から湯気出してるぜ? 最後の挨拶くらいしろって」
「最後の挨拶って、まだ時間きてねーぞ?」
やり取り見て、何かが動いたかも……って気がした。何がって言われると上手く答えられないけど、ともかくいままでと違くなったのは確か。
急に心配になって、シーモアを見る。こんなの見せられたら、冷静じゃいられないと思うから。
けど彼女、黙って自分の荷物持って、教室のほうへ向かって。
「シーモア!」
慌てて追いかける。
シーモアは、振り向きもしなかった。






