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葛藤 ルーフェイア・シリーズ04  作者: こっこ
Chapter:03 転機
20/32

Episode:20

「ルーフェがね、ふつうとはちょっと違うのは、たしかだけどさ。でも、それといじめは別だよ。いっしょに考えたらダメだよ」

「そう、なの……?」

「そだよ」

 ひょいっと彼女が立ち上がる。


「違う違うって言うけどさぁ、同じ人なんて、ぜったいいないじゃん。みーんなどっか違うもん。なのに比べるとか、あたし分かんないなー」

 はっとした。たしかにミルの言うとおりだ。

 何もかもすべて同じ人は、どこにも居ない。


「ちょっと、分かった?」

「……うん」

 少しだけ、楽になった気がした。

「よーし、そしたらイタズラいこー!」

 彼女はどこまでも楽しそうだ。


 そのようすに呆れ顔で、イマドの友だちが突っ込んだ。

「もしかして、ルーちゃんのためってより、単に面白そうだからって言わないか?」

「うん」

 きっぱりとミルがうなずく。


「でもさ、悪くない話だと思うんだ〜。

 あたしは楽しめちゃうし、上手く行けば片付くし。サイアクでも、現状維持ってだけだし」

 彼女の魔を秘めた笑顔。

「イマドたちも利用できるものは、利用したほうがいいんじゃない?」

「………」

 三人とも言い返せないみたいで、そのまま黙る。


「じゃぁそしたら、次の授業からやってみよっかー」

 次の授業っていったら、午後の実技だ。内容はたしか、自衛のための格闘技。

「なにを……するの?」

「んー、要するにこういうのって、勢力図がが変わればいいんだよね」

 ミルがちょっと考え込みながら言う。「どう説明すればいいか」を考えてるみたいだ。


「えーっとだからね……こういうのって誰か、中心になってるのがいるでしょ?」

 イマドたちがうなずいた。あたしは気づかなかったけど、みんな分かってたらしい。

「じゃぁさ、どうしてこういうふつうじゃダメなこと、やれちゃうか分かる?」

「本人が、そういう性格だからじゃ?」


 ヴィオレイの答えに、ミルは首を振った。


「それもあるけどね、それだけじゃできないよ。ひとりでやってたら、その人のほうが“おかしい人”になっちゃうから」

「――そういうことか!」

 納得がいった顔で、イマドが声を上げる。


「けど、どうやるつもりだ? 切り崩すったって、ちょっとやそっとじゃできねぇだろ」

「女子はねー。でもさ、今回って男子は日和見だから〜」

「そりゃそうだけどよ、だからってすぐ、どうにかなるもんじゃねぇぞ?」

 二人の話に、ついていけない。


「あのな……オマイら二人、何の話してんだ?」

 イマドの友だちがそう言って、ちょっとほっとする。分からなかったのは、あたしだけじゃなかったみたいだ。

「えー、こんなに説明してんのにー?」

「してないしてない」

 たいへんな話のはずなのに、なんだか笑ってしまうようなやり取り。


「だからね、切り崩す話なんだってば〜」

 ミルは自信満々だけど、あたしたちは顔を見合わせるばかりだった。

「ワケわかんね……」

「というか、ミルの言うことだから、最初から理解とか無理だってば」

 ひどい言われようだ。

 だけどこれがふつうなんだろうか? イマドは当たり前って顔をしてるし、ミルのほうは完全受け流しだ。


――彼女、強いな。

 そう思った。周りを気にしないで、自分のスタイルを貫けてる。


「ともかくさー、やってみようよ? おもしろそうだし。

 それにもう、毒流してきちゃったーし。上手くいったらいまごろ、仲間割れかも?」

 楽しそうに、くすくすと笑うミル。

「――しゃぁねーな。ほかに選択肢、いまんとこねぇし。やるだけやってみっか」

「そだな。このまま何もしないじゃ、ルーちゃんいつまでもこのままだし」

 みんなの意見がだいたい一致した。


「じゃぁ決まりね!

 そしたらさっきも言ったけど、次の授業からやってみよ!」

「だからさっきも聞いたけど、何すんだよ」

「んー、わかんなーい。でもそのときになったら、ヒラメくと思うんだ。ともかくお昼お昼!」

 ミルの言うことはなんだかいい加減で、ちょっと不安な気はする。

 でも、何かが少しだけ動くかもしれない、そんな感じがした。



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