Episode:02
実技のテストは学期の最後だけだから、こいつらルーフェイアの実力はまだ知らない。けどルアノンでの火事騒ぎだのなんだの見たら、ぜったいおんなじこと思うだろうし。
「ルーちゃんって、そんなすごいのか……」
「オマエが最初っから諦めるとか、ハンパねーな」
教室の後ろのほうを見っと、当のルーフェイアはひとりで、けどけっこう楽しそうだ。
もっともアイツのことだから、満点――配られたコピー見りゃ一目瞭然――が楽しいとかじゃなくて、学院生活自体がおもしれぇんだろう。
と、気配を感じたらしくて、こっちへ振り向いた。
視線が合う。
ちょっと首をかしげたルーフェイアに軽く手を振ってみせると、嬉しそうにこっちへ来た。
「ルーちゃん、満点すごいね! おめでとう!」
「え? あ、ありがとう……」
ヴィオレイのヤツ、すっかりルーフェイアの太鼓持ちだ。
「でも、どうして……知ってるの?」
コイツの天然ボケも、治る気配ねーし。
「おまえなぁ、たったいま自分の答案配られたってのに、もう忘れたのか?」
「あ! やだ、どうしよう……」
今ごろ困るなと。
「だいじょうぶだいじょうぶ、満点なんだから問題ないよ」
「そう……なの?」
なんか丸め込まれてやがるし。
「そうそう、こいつみたいに点が悪いとかじゃないから、ぜんぜん平気だよ」
「どーせオレは頭ワルいよ、悪かったな!」
アーマルのヤツがヘソ曲げて、その隣でなぜかルーフェイアが脈絡もなく謝りはじめて。
どーしようもねぇほど、いつものしょうもないやり取り。
けどそのとき、なんか視線を感じた。
不思議に思って、さりげなく辺りを見まわす。
――なんだ?
女子どもが、敵意むき出しの瞳で、こっち見てやがる。
視線の先は……ルーフェイアだ。
こいつが満点取ったから、反感でも買っちまったのか。それともほかの理由か。
イマイチよく分かんねぇけど、なんかヤな感じがした。