Episode:15
「ちょっとマテ、だってあいつ、俺らと同い年だろ?」
「あの可愛くて優しいルーちゃんが、そんな、そんなの……」
言いたいことは分かる。黙って座ってたらルーフェイアのヤツ、誰がどう見ても、おとなしいお嬢さんだ。太刀振るって人を殺せるとか、思いつくヤツのほうがおかしいだろう。
「3つの頃から戦地にいて、5歳の頃にはもう、伝令とかやってたらしい。
ここ来る直前とか、ホンキで最前線にいたしな」
「マジかよ……」
重苦しい沈黙。
いくらMeSのAクラスったって実戦経験のあるヤツなんて、ましてやこの年じゃ、いるわけない。
その中に混ざる、「殺す」プロ。異質なんてもんじゃなかった。
「じゃぁ、ルーちゃんが本校へ、直接入学したのって……」
「ああ」
悪友たちが顔を見合わせる。
「少年兵あがりじゃ、分校とかじゃハナシにならんよな」
「ルーちゃん……気の毒すぎるよ」
話の流れから、部屋の奥でぼけっとしてるあいつに視線が集まると、それを感じたらしい。ルーフェイアのヤツが顔を上げた。
何か思うとこがあったらしくて、ふわりと立ってこっちへ来る。
金糸の髪。碧玉の瞳。白磁の肌。
――妖精のような雰囲気の、華奢な美少女。
その手が血に染まってるとか、まったく信じらんねぇ。
「……?」
俺らの注目あびて、ルーフェイアが不思議そうに首をかしげた。
「えっと……どうしたの?」
「――あのさ、戦場にいたってホントなのか?」
「このバカっ!」
とっさに口ふさいだけど、間に合わない。
ルーフェイアの顔が曇った。
「……話しちゃった……の?」
寂しげな瞳。
なんかどきっとする。
「――すまねぇ」
「いや、俺らが聞いたんだし。イマドがわざと言ったとかじゃないから」
「ゼッタイ喋らないって」
口々に言う俺らに、ルーフェイアのヤツが儚い微笑みを向けた。
その瞳には、涙。
(おい、ちょっといいか?)
悪友2人にささやいて、俺はルーフェイアから少し離れた。状況が状況だから、こいつらもすぐ分かって、目配せしあってこっちへ来る。
「――あの通り、あいつもう、ボロボロなんだよ。だから……お前ら、頼むわ」
「分かったよ」
悪友二人がうなずいた。