Episode:01 誤解
◇Imad
「答案を返すぞ」
教官の言葉で教室ン中が、ざわっと騒がしくなる。
「まったくお前たち、何を勉強していた? かなり平均点が悪いぞ」
そりゃお前の教え方が悪りぃんだろ……と内心つっこんだ。
夏開けてから変わったコイツ、メチャクチャ授業ヘタだ。教科書丸写しの棒読みするだけなら、授業なんざいらねーし。
教官は順々に名前読んでっけど、ようするにいつもの順番だから、俺らみんなさっさと立ち上がる。並んどいてさっくりもらって、あわよくば教官に帰ってもらおうって魂胆だ。
なんか知らねーけどこのクラス、その辺の団結力「だけ」はバツグンだった。
で、俺も答案もらって。
――あ、やべぇ。
頭ン中で点数計算してみたけど、どうもルーフェイアのヤツに、実技以外でもトップ持ってかれたっぽい。
分校飛び越えて本校へ入学したって時点で、バトルだけじゃなくて頭もそうとうだろうっては思ってたけど、あいつマジでハンパなかった。
実技で張り合うのは、最初っから諦めた。つか、ぜったいムリだ。
ただでさえいろいろ桁外れだってのに、それを実戦で鍛えたようなヤツ相手じゃ、はっきり言ってうちの先輩たちだってヤバい。
けど学科もあんだけってのは、さすがに反則だろう。
語学系は実際に使ってたらしくて、主な言葉はほとんど全部読み書きまでできる。魔法に関する知識なんかも、ふだん使いまくってるだけあって、腹立つほどきっちりだ。
古い家系だからか、歴史も暗誦するほどよく覚えてやがるし。
しかも当人、何が難しいのかも分かんねーときてる。
――やっぱカミサマっての、えこひいきだろ。
そういうのがいるかどうかってのは別にして、いろんなモン偏りすぎだ。
ルーフェイアのヤツ、クラス分けのテスト受けた時点で、飛び級の話まで出たんだとか。本人が嫌がったんでナシになったけど、教官たちマジで残念がってたから、けっこー本気だったっぽい。
あいつが嫌がった理由聞いたら教官たち、のけぞっちまうだろうけど。
「飛び級」が何か知んなくて、どっか他所へ飛ばされることだと思ったから断ったとか、度を越した無知だ。
それにしてもこの新任教科担任、本気でクズらしい。模範解答手ぇ抜いて、ルーフェイアの答案のコピー配ってやがる。いくらあいつの答えが正確で詳しいからって、やっていいコトと悪りぃコトがあるだろうに。
「あとは各自、模範解答と突き合わせて訂正しておくように」
挙句に、これだけ言って帰っちまうし。
「イマド、お前どうだった?」
悪友どもが寄ってくる。
「一問落とした」
「マジ? つかそれ、ヤベぇんじゃん?」
こいつら、俺の答案奪ってくし。
「うわ、これ惜しすぎってやつ?」
「惜しくたって間違いだって。つか、返せ」
いくら俺でも、また答案破られたくない。
「細かいコト気にするなって。
にしてもルーフェイア、めっちゃデキるよな。さすがのお前も首席アブないってか?」
「実技と併せたら、あいつ相手じゃ最初っから取れねぇって」