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2話:魔力を探そう【荒野しかありませんが~?】

 この世界にも、昼夜の概念はあったらしい。

 俺は日が落ち、登るまでの一晩中、岩石を貪り続けた。

 

 その結果として……


『HP:3/3 MP:50/150』


 なんとか、消滅までの時間を伸ばすことに成功した。

 1秒1秒数えて計算してみたが、この体、およそ30分でMPを1消費する。

 そして、HPが減っていた場合はより早くMPが消費され、その分自動でHPが回復するようだ。

 つまり、今の段階で、約1日はMPが持つ計算、かな?

 なんとも、心もとない話である。

 場合によってはもっと早く減ることだってありえるのだ。油断していたらあっという間にゲームオーバーだろう。


「現在のMPが50、全体の3分の1だから……これを節約しながら進んで行くしかねぇな」


【そうですねぇ~。少しでも魔力が溜まっている空間を見つけないと、多分持たないのではないかと~】


 魔力溜まりか。

 本来ならば、そういう場所で精霊は生まれ、その魔力を糧に自然を豊かにする活動をしながら一生を過ごす、らしい。

 それに比べて、俺の生まれた場所はこんな枯渇した岩石地帯。

 生まれたのも自然が発した魔力ではなく、魔物から漏れ出た魔力。


 出生から環境まで、全てが落ちこぼれている…!


 確かに、こんな所にいたら、2日と持たずに消滅してしまうことだろう。

 既にあらかた岩石も食い散らかして、穴だらけだしな!


「役所のお姉さんよ、そういう魔力溜まりのある場所はわかるのか?」


【いやっははは、流石に世界地図出せるわけじゃないですからね~。山辺さんの周辺にあれば多少の範囲は見れますが、それより離れている所は~】


 つまり、俺が足で稼いで、役所のお姉さんが目で稼ぐ必要がある、と。

 できればもう少し高性能なカメラ用意して欲しいところだが、役所のお姉さんがいると居ないとではまったく効率が違うのは確か。

 ここは頑張って動くとするか。


「じゃあ、俺が移動するから、その周辺をくまなくモニターしておいてくれよ。頼んだぞ?」


【お任せくださ~い!】


 不安しかない。


「さて……行くかぁ」


 去らば、生まれ故郷よ。

 俺は行くぜ、生きるために。

 あばよ、こんな場所に一房だけ生える根性のある草。

 お前は、枯れるんじゃねえぞ!また会おうぜ!

 同郷の雑草と、熱く握手(体当たり?)をかわす。


『HP:3/3  MP:40/150』


「ぎゃああああ!?草にMP吸われたぁぁあああ!?」


【や、山辺さ~ん!?】


 体を一気に襲う脱力感に、思わず後ずさる。

 こ、この草、10もMP持っていきやがった!?

 何が起きた!?俺、草に触っただけだぞ!?


「っ、あ、あれか!精霊は植物を育てるって、こういう事か!?」


【え、えぇ、そうですねぇ~。確かに、精霊は自然を豊かにするために魔力を用いているそうですが~…ここまで心臓に悪いことしてたんですねぇ~。ですが、それは精霊自体が魔力の提供をしないと起こらないはずですが~…】


「………………………」


【………………………】


 枯れるなって、念じましたね、私。


【……山辺さん~、あんまり、ハラハラさせないように~】


「すいません…」


 命を削って自然を育む、精霊が自然の歯車ってのはホントなんだなぁ…。

 はは、見ろよこの草、艶々してやがる。

 心なしか、背も高くなっているようだ。

 いや、心なしどころか…俺の直径越えてんなこれ…。


「なんか、食虫植物みたいになってんだけど…」


【逃げましょう~、ろくな事になりませんよこれ~】


「間違いないわ」


 君子危うきに近寄らず。

 俺は、そそくさとその場を後にしたのであった。


               ◆


 さて、移動中だが、まずもって俺の欠点を上げていこう。

 ひとつ、HPが異常に低い。

 見ての通り、俺のHPは3しかない。

 これは、地球の蟻に劣るHPだ。

 

【その分、精霊は物理攻撃に対して強いアドバンテージがあるんですよ~。魔力を介した攻撃でなければ、ほとんど無効化できると思いますよ~】


 まぁ、言わんとしてることはわかる。

 俺の体はほとんど魔力の霧。

 霧を切っても切っても効果はないだろうさ。

 とはいえ、魔力を介した攻撃には弱い、というか一撃で消し飛ばされるだろうし、油断は大敵だ。


 そして次。常に魔力を消費していること。

 ここに関しては、今現在で解決策を見つけている。

 魔力のたまり場に行けばいいのだ。

 体が魔力で出来てるのだから、魔力を吸えば体が保てる。単純な話である。

 つまり、俺にとって魔力は酸素。現在の俺は、素潜りで海を泳いでるに等しいのである。


 更に、パラメーターが低い。

 役所のお姉さんが作ってくれたステータスでは、大きく別けて5つの能力値がある。

 この中で、まだ見ていられるのが、魔力の140でしかない。

 他は壊滅的。筋力など、0である。

 まぁ、この体に筋肉なんぞないんだから当然と言えば当然なのだが。

 この点に関しては、生物としての経験を積んでいくことが重要である。

 分かりやすく言えば、『レベル』を上げるのだ。


【ステータスの中にあるレベルの概念は、主に『生命活動時間』、『肉体に蓄積された経験』『その種族の中での格付け』を表しています~。このレベルが高ければ高いほど、生物として成長、進化していると考えていいでしょう~】


 なるほどな。

 俺の前世はスキルや特典は狙っていたが、このレベルには頓着していなかったような気がする。

 進化が目的なら、このレベルを上げるのは必須と言えるだろう。


 という訳で、現在の優先順位は、以下の通りだ。


『一、魔力のたまり場を見つけ、消滅を防ぐ』

『二、虚弱な生命力をどうにかし、死ににくくする』

『三、レベルを上げ、生物としての高みを目指す』


 これらを達成すれば、輪廻からの消滅は免れる、はずだ。


「よっしゃ、目標がはっきりしたから、これから頑張っていける!かもしれん」


【ま~死なない程度に危機感持ってればいつでも達成可能な目標ですよ~。頑張っていきましょ~】


 そんな訳で、魔力のたまり場を探しているのだが……

 ない。

 進めど進めど、見つからない。


『HP:3/3 MP:36/150』


 MPが4減ってるってことは、少なくとも二時間はさ迷い歩いて、もとい、浮いている計算だ。

 だというのに、魔力を感じられる場所はほとんどない。

 じりじりと削られるMPに焦りは隠せないが、俺の『消化吸収』は石一つで10分程時間を費やさねばならず、その間は停止していなければならない。

 少し減ったからと言って、逐一止まってお食事していては、移動だけでどれだけ時間がかかってしまうか、考えるだけで恐ろしいのだ。


「役所のお姉さん…これ、ほんとにあるのか?」


【う~ん、周辺にも見当たりませんが、その世界には普通にあるはずなんですよねぇ~】


 ぐるっと周りを見回してみるが、数本だけハゲあがった木が生えているだけの荒野である。

 …見るからに枯れてますが?


【これは無理かもわかりませんねぇ~】


 い、嫌だ!俺は諦めんぞ!

 諦めたらそこで試合終了だって、いっつも聞いて生きてきたんだ!

 ひとまず、ここはスキルだ。スキルを使ってどうにかしてみよう。

 ええと、今の俺のスキルは…


―――――――――――――――――――――――――

<スキル>

『魔力操作:Lv1』 『魔力攻撃:Lv0』 『司令塔:Lv5』 『悪食:Lv3』    

『消化吸収:Lv1』 『翻訳:Max』    『発声:Max』  『環境適正:Lv1』

『状態異常耐性:Lv1』 『防御修正:Lv0』 『属性耐性:Lv0』 『隠密:Lv1』

『発見:Lv1』    『マッピング:Lv0』

―――――――――――――――――――――――――


 0レベル多くありません?


【0レベルというのは、この先練習やレベル次第で使用可能になる、可能性があるものとして上げています~】


 つまり、意識してそういう行動を取って行けば良いわけだな。

 とはいえ、今必要なスキルは……これだな。『発見』だ。

 平たく言えば物探しの為の力っぽいが、俺は精霊。

 魔力とか、そういうものも探し出せるかもしれない。

 ついでに、0レベルのマッピングも使う努力をしてみよう。


【はいはい~。では、モニターしているマップをそちらに移すので、スキルの練習に使ってくださいな~】


 次の瞬間、俺の視界の端にうっすらと周辺のマップが浮かび上がる。

 ほうほう、役所のお姉さんはこう言うのを見ていたんだな。

 こう、アドベンチャーゲームで見たような、上からのマップが俺を中心に動いている。

 半径で言えば。300mくらいの範囲は、見ていられるみたいだ。


「ありがと、役所のお姉さん」


【いえいえ~、同時進行で探してみましょう~】


「初めての共同作業ですね…!」


【いやっははは、下等生物のくせに生意気なこと言わないでくださいよ~。神の力の一端あたり使えるようになってから出直してきてください~】


「はっはっは、上位種族でも性格がこれじゃあそういう経験なかったでしょう?甘えていいんですよ~?」


【「はっはっはっはっは~」】


 その後。

 俺達の口喧嘩は、荒野を抜け、森林地帯に差し掛かるまで続いた。


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