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1話:転生!…あり?アリ!?【いやいや下等ですね~】

 暗い。


 なんだこれ。


 体が動かない。


 はてな、なんだこれは?

 俺、確か自分家の畳布団に寝てたはずだよな?

 隣には掛かり付けの病院からようすを見に来てくれる医者、高田さんがいて……そうそう、息子と姉貴、弟もいたな。

 なんか皆してドタバタしてた記憶がある。

「声をかけてあげてください…」だとか、「父ちゃん!」「慶!」「兄貴!」だとか、皆して叫んでやんの。うるさくて敵わんかったわ。


 ん、ん~…………


 その後の記憶がねぇな。

 はて?俺どうなった?

 確か、うるさいとか言おうとして、声がでなくて…あぁ、眠かった。すごい眠かったんだ。

 んで、声もだんだん小さくなって、寝た。

 そして起きたらこれよ。ぜーんぜん手足動かねぇでやんの。


 縛られてる?誘拐?90の爺を?

 ないない。

 それは違うとして……だったらなんだろ、この状況。


 ふん!

 ふんぬ!

 ほいさぁ~!


 うん、手足は動かんが、体はくねらせることくらいできそうだ。

 んで、分かったこともある。

 この空間、狭いわ。背中とかに、壁の感触がある。

 するってぇと、俺は小さな空間に箱詰めされてるわけで……え、まじで誘拐?

 ウッソだろ!?遺産目当てかなんか!?遺産って言っても少しのお金と膨大なシナリオの貯蓄くらいですが!?

 ヘルプミィィィイ!?アイムベリーベリーノットストロンググランパァア!?


「ギチィッ!?キチチチッ!?」


 うひぃ!?何今の音!?


「キチィ!?キキッ!?」


 え、あ、え~、ホワィ?

 なんか、俺が喋ったタイミングで鳴りませんでした?

 まるで固いものをこすり合わせたかのような音。キチキチという表現がピッタリの……あれだ。B級パニックホラーで巨大化した虫の噛み合わせの音のような……。


 ……あ、い、う、え、お

「キチ、キチ、キチ、キチ、キチ」


 ……まさか、これ……俺の口から鳴ってんのか。

 てことは、俺の口にそういう、何かがついてんのか。

 てことは、俺――――


 人間じゃ、なくなってんのか!?


 え、ちょ、ま、何それよくわかんない。コワイコワイコワイ。

 考えろ考えろ、つまり、だ。俺は今人間じゃなくて、小さな何かに箱詰めされてる。

 手足が動かないってことは、手足が……ない?

 体を動かせるってことは、そういう、胴体だけの何かになってる……?

 自室で寝て、起きたら人外になってましたってか?


 笑えねぇ!?


 うおおお!出せ!だせよぉ~!

「キチチチ!キチチィ!」


 半狂乱になって体を暴れさせると、目の前の壁にわずかな亀裂が走ったのがわかった。

 抜け出せる!

 這いつくばった体をうねらせると、少しずつだが前進して行くのが体感でわかる。

 やけに前進がスムーズなのはなぜか……いや、考えたくない。とにかく今は、現状の、ここがどこなのかの確認だ!


 そして俺は、恐怖のままに、そこから抜け出したのだった……。


                                 ◆


 ズルリ

 

 べちゃっ


 「キチィ!?(アウチ!?)」


 俺は、デコボコの地面に落下した。

 特に整備はされておらず、大きめの石がゴロゴロしてる。

 アウチとか言ったが、痛みはない。この体には痛覚がないんか?いや、怖いからまだ考えたくないが、そうも言ってられないんだろうな…。

 周囲を見渡す。暗くてよくわからん。

 見回すにしても、首が動かんから体ごとだ。ってか首もないんか。

 ほんっと、なんだここ?どうなった俺?


「キチ、キチチィ?(すんませ~ん、誰かいません?)」


 …………返事、なし?


『ギチギチ……』


 あって欲しくなかった返事いただきました!

 俺の出すキチキチ音より数段ごつそうな、ギチギチ音が奥から聞こえる。

 そして、何かが近づいてくる気配……やばいヤバイやばい!

 現状把握も済んでない状態で第一村人と遭遇とか、死亡フラグ以外の何者でもない!

 どっか隠れられそうな場所……暗くてわからん!?ていうかこれ、俺今視力がないのか!?


 これは、詰んだ、か?


 体もうまく動かせねぇ、前すら見えねぇ、目の前から接近してくるギチギチさん。

 ホラー映画の犠牲者の心境が大変理解できます。

 クソぉ!なんだこれ、訳もわかんねぇままデットエンドとか、俺の平凡な人生どこ行った!?

 誰か!誰でも良い!助けて!


 死ぬのはいやだ!いやだ!やだやだやだ!?まだしたいことあった!孫も見てない!オンラインセッションのキャンペーンもあった!ユーザーの皆さんに90の爺ちゃんですって言って、タイピング遅くても受け入れてくれた数少ない卓だったのに!

 息子ともまだ話してたかったし!姉貴も年がいなく甘いモンばっか食べて俺にも勧めてきて!弟は胃にガンが見つかったって言ってたからその経過も知っとかなきゃいけなかったし!?

 あああヤダヤダヤダ!助けて!?たす、


 誰か助けて!?


                              ◆


【おっと~、やっと見つけましたよ~】


 !?


 突然、頭の中に声が響いた。日本語だ。

 声色からして女か?間延びした、この場に不似合いな声だ。

 誰だ!?いや、この際誰でもいい!

 たす、助けてくれ!俺はええと、山辺慶やまべけい!いきなりで悪いけどホント助け――――


【あ~、ひどく混乱してますね~。まぁ記憶あったまま転生していきなりだと普通こんな感じでしょうね~】


 わけわかんないこと言ってんなよ!?あんたが誰でどうやって話しかけて来てるが知らねぇが、こっちは人生終わる一歩手前なんだよ!?

 状況もわかんないまま変な体になってギチギチしたのが近づいてくんだよ!気が狂いそうだ!?


【ままま、ご説明はしますし、この会話は周囲の時間なぞ無視して一瞬で済むようになっています~。ほら、事態が動いていないでしょう?】


 えぁ?


 ………………………………………………………

 ……………………………………

 …………………


 ほ、ホントだ。え、なにこれ?


【通信している間は、貴方の神経と思考が異常に瞬間的なものになっている、という認識でOKですよ~】


 さ、さいですか。


【さてさて、落ち着きました~?説明してもいいです~?】


 正直まったく落ち着かんし危機的状況は変わんないのねって絶望しかないが、どうぞ。


【そう悲観する状況でもないですが~……わかりました!ではご説明いたしましょう~!】


 そして俺は、この間延びした女から説明を聞いた。

 なんでも、俺は一度死んで、転生した、らしい。

 いままで小説で何度も何度も見た展開を、絶賛経験中とのことだ。

 そして声の主。こいつは前世の記憶を持って産まれた俺を、モニターする役割……なんだそうだ。


【私のことはそうですね~、役所のお姉さんとでも呼んでください~。というか貴方にもそう呼ばれていましたので~】


 俺にそう呼ばれていた?

 するってぇと何か?俺とあんたは会ったことがあるのか?


【ありますよ~。私は『前世の記憶持ち』特典を持っていた貴方の担当でしたから~。……あ~、これ言ってもいいのかな~?ん~……ま、いいか~】


 特典?ますますわからん。

 俺の知らん所で俺が何かをしていた?この……ええと、役所のお姉さんに会っていた?

 そして俺はここに来て…転生?して、役所のお姉さんはそれをモニターすることにした、と。

 つまり、この状況は…俺個人が引き起こした?


【お、もうその判断に至りますか~?良いですね~、話が早いし、私は答えを言っていないので責任問題に問われない~。素晴らしい~♪】


 どうやら正解らしい。

 俺は、山辺慶は一度死に、その魂(?)がお姉さんのいる役所(?)に行った。

 そして、前世の記憶を持つように手続きし、転生した…?


【んふふ~】


 役所のお姉さんは何も言わないが、これで正解みたいだ。

 ご都合主義みたいに頭が働きやがる……って、それよりもだ。

 役所のお姉さんなら、俺が何に転生したかわかるんだな!?今俺は目も見えない、手足も動かないんだ!

 モニターしてるってんなら、客観的に今の現状を見てるんだろ?

 

【あ~、そうですねぇ~。今貴方の視界をロードして見ましたが真っ黒です~。視力ないとか下等~。いやっははは】


 殺すぞ。


【冗談ですよ~。……ん~、よし、じゃあちょっとおまけして、視力を付けてあげましょ~】


 え?そんなん出来んの?

 それって割りと、ヤバイことしてない?


【まぁバレたらクビですけどバレなきゃいいんですよ~。ついでに、貴方の種族知りたいんですよね?それも教えたげます~。そっちはサポートの範囲ですからおけおけ~】


 よくわからんが、役所のお姉さんは俺の味方、とみて良さそう…か?サポートとか言ってるし。

 ていうか役所の人、適当過ぎやしません…?


【今から貴方の視界をクリアにして~、ついでにオタクにわかりやすいよう、ゲームチックにステータスを見れるようにしてあげましょ~。私ってば優し~い。いやっははは】


 あらやだ、天使かしらこの人!一発殴りたいけど!殴りたいけど!

 が、そんな俺の雑念を祓うかのように、視界がだんだんとぼやけていく。

 漆黒の闇から、明かりと呼べるようなものが見えてきたのだ。

 と、同時に…俺の目の前まで来ていたものが、ぼんやりと見えて来る。そして、俺の視界の端に、お姉さんが言った通りのステータスが、映り込んだ。


『種族:軍隊アリ』

 現状:幼虫

 レベル:1

 状態:健康

 HP:2 MP:0

 筋力:1 器用:1 敏捷:0 魔力:0 精神:1


『解説』

 地球産の軍隊アリの幼虫。

 一般のアリと異なり巣を作らず軍隊のように隊列を組んで前進し、目に付いた(ただし、グンタイアリ属の一部をのぞき、目が退化しているため、ほとんど盲目であろうとされる。)獲物には集団で襲いかかる獰猛な習性を持つ。

 魔力はなく、適当に力を入れるだけで容易に討伐可能。


 蟻

 アリ

 蟻だよ。

 俺の目の前には、ゲームでしかお目にかかれないような、人一人食い殺せそうな大きなアリがいた。

 イヤ、これは違うか、俺が、俺が小さくなってるのか。

 つまり、このステータスでもわかる通り……


 俺は、蟻に転生した、のか。


【そうですね~。いやいや予想外~】


 ふざ、ふざ……


 ふざけんなぁぁぁあああ!?


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