1話:この世界では特訓と言うらしい【地球ではDVと言います~】
俺がダークエルフの里で暮らすことになって、1週間が経過した。
住みかとして、聖樹での寝泊まりを許可されている。
いや、一応他に魔力溜まりのある場所を提供してもらったんだけど……足りなかったんだよね、MP。
だってさ、俺は普通の精霊の倍以上の保有MP量を持つのだ。
魔力溜まりのある場所ってのは、必然的に他の精霊達も集まってくる訳で……俺ばかりが魔力にあやかってると、精霊が消滅しかねない。
それでは本末転倒と、ナルゥが大婆様に報告すると、
「ならば聖樹に住まわせろ」
という無茶ぶり。
里の住人に話を通さずして聖樹に住まわせるなど出来ないと、慌ててナルゥは俺のお披露目会を企画した。
しばらく俺を秘密にしておくという考えはご破算、ということだ。
「いいか…お前に求められるものは、威厳と聡明だ。少しでも舐められたらそれ即ち、大婆様や聖樹様に泥を被せる行為となる。わかるな?」
「任せろ、土下座は得意だ」
「よぉし今から精霊の蒸し焼きを作ってやろう」
「マジスンマセン」
あの時のナルゥは、マジだった。
そして、俺が迎え入れられて三日後、里の住人を集めての紹介と相成った。
びっくりしたね。
この里、総勢で男女30人しかいねぇでやんの。
そもそもダークエルフは長命の種であり、出生率も悪い。
そして、最低限の森の恵みで生きる者達である。
少ないのはまぁ、当然と言えば当然なのかな。
しかし……男女比率が2:8。まぁ見事にハーレム状態なのは許せん!
美男美女しかいねぇしよぉ……くそっ、くそぅ!
もちろん、反応は様々だ。
精霊の紹介なんて前代未聞だろうしね。
俺を認めようとしない者もいれば、すんなり受け入れる者もいる。
子供達なんかは俺に興味津々だった。子供の内は精霊はあまり見えないらしいから、珍しいのだろう。
まぁ総じて、大婆様の一言で大抵は引き下がった。
「この者は聖樹にも認められた。なおかつ、私の判断で招いた。反論はあるか?」
反論できるわけねぇだろ。
みんな押し黙っちゃったよ。
そんなこんなで俺は、聖樹の生み出す魔力を吸収しつつ、過ごす事が出来ていた訳だ。
………いや、まぁ、時々なんかやべぇ視線を感じたりすることがあるんだが……4日経ってもなんもないし、気のせいという事にしておく。
ちなみに、役所のお姉さんいわく、
【聖樹の解析をするためには必要な環境でした~、グッジョブですよ、山辺さん~!】
とのこと。
よっぽど、ハッキングされたのが悔しかったんだな…。
◆
青い空!
白い雲!
眩しい太陽!
なんとも清々しい朝である。
こんな日は、日向ぼっこでもしながらゴロゴロするに限……
「おぶはぁぁぁぁあ!?」
どうしてこうなった?
俺は地面に転がり、顔面でトリプルアクセルを決める。
ビターン!とその辺の木に叩きつけられ、ズルズルと落ちていく。
死ぬ、このままでは死んでしまう。
「どうしたヤマベ、さっさと浮け」
淡々とした声で弓矢を構える鬼。
起き上がる前に、体スレスレの地面に矢が刺さった。
「ほぎゃあああ!?」
慌てて体を浮かせて体勢を整える。
おっそろしい事にこの矢、魔力が込められているのだ。
しかも、俺がダメージを受けるギリギリの威力に調整されて。
「おま、おままおまぁぁあ!?馬鹿じゃないの!?馬鹿じゃないの!?」
「よし、まだ元気があるな」
「ありません!許してくださいお願いいたします!?」
「却下だ」
額に矢が突き立つ。
その瞬間、俺の体を構成する魔力の渦が、別の魔力に吹き散らされた。
―――――――――――――――
<種族:精霊>
現状:下級精霊
レベル:2→(5)
状態:焦燥
HP:5/5→(4/11) MP:260/260→(237/275)
筋力:0 器用:4→(17) 敏捷:36→(98) 魔力:145→(170) 精神:110→(125)
防御力:「物理:20→(30)」「魔法:11→(14)」
<スキル>
『魔力操作:Lv1→(3)』 『魔力攻撃:Lv0』 『司令塔:Lv3』 『悪食:Lv5』
『消化吸収:Lv3』 『翻訳:Max』 『発声:Max』 『環境適正:Lv1→(2)』
『状態異常耐性:Lv1』『防御修正:Lv2→(3)』 『属性耐性:Lv0→(2)』 『隠密:Lv1』
『発見:Lv1→(2)』 『マッピング:Lv1→(2)』『ドロップ運:Lv0』『傲慢:Lv2』
『魔力吸収:Lv1』 『体力吸収:Lv0』 『悪運:Lv5』 『奔走:Lv3→(5)』
『不屈:Max』 『無能:Lv2』
<特典>
『前世の記憶持ち』 『お友達』 『率いる者』 『食い道楽』
『ピーチクパーチク』 『慣れれば平気』 『かくれんぼ』
『貪欲に、傲慢に』 『敗残兵の意地』
―――――――――――――――
「ぎゃああああ!?」
中々に深刻なダメージを受けたな!?。
ただの矢なら、俺の防御力を考えればダメージになることはないってのに…ゴスゴス来すぎじゃないですかね!?
こんなふうに、殴られ始めたのが2日前。
それにより、俺のレベルは5に上がっていた。
いやね?わかるよ?これは特訓で、ナルゥは俺を強くしようとしてくれてるんだよね?
でもね、あの時は……というか現在進行形で、俺はお前から殺意しか感じていないんだよ!!
ーーーーーーーーーー
問題のシーン
『ヤマベ、入るぞ』
『入ってから入るぞって言っても遅いとボクは思います』
【なんですか~、せっかくピザが届いたのに~】
役所のお姉さんを思いきりぶん殴りたい。
『こい』
『はい?』
『いいからこい』
『え、あ、ちょ、なに?なんなの?』
『これからお前を射るから、強くなれ。いいな?』
『は?』
【う~ん、チーズトロトロ……は?】
ーーーーーーーーーー
それからあれよあれよという間に広場に連れていかれて、千本ノックならぬ千本弓道ですよ!
俺は声を大にして言いたい!特訓ってのはもっとこう、少年漫画的に熱く燃えるものであるのだと!
けして、爆乳美女が淡々と若干殺す気で射撃してくるような特殊なプレイではないと!
【でも本当は悪くないんでしょう~?】
そんなネタ振ってもノラないぞ!?
【イケず~】
「まだ消滅しないな、じゃあもう一発だ。受けるか流すかしろ。避けるな」
「いやいやいやいや!だから俺は魔力の操作がまだうまく出来なくてたな!?」
「その為の特訓だろう。さっさと慣れろ、さもなくば死ね。戦士に無能は必要ない」
ダークエルフ、武士過ぎません!?
ツッコミもさせて貰えないままに、俺の体を矢が掠める。
『HP3/11 MP237/275』
それだけで、HPが1減った。
「うひぃぃぃ!?」
この矢が仮に、周囲の魔力と精霊を媒介に発動された「魔法」であれば、俺の『属性耐性』の効果範囲かもしれない。
この『属性耐性』は、炎や風などのエレメンタルな技に強くなるスキルだからな。
けど、ナルゥが射ってるのはあくまで、「自分の魔力をこめた弓矢」だ。
属性などある筈もなく、当然、俺がこれを防ぐには、「魔法防御力」で軽減するか、『魔力操作』を用いて籠った魔力を受け流すしかない。
【しかし、山辺さんの『魔力操作』は現在3レベル~。最初より慣れてるとはいえ、かわしきれない速度で飛んでくる矢にまとわりついた魔力を剥がせとなると、そうそう上手くはいかないでしょうね~】
だよね!?
そうだよね!?
それなのにあの乳袋は平然と無茶ぶりして来やがんの!!
「今、私を不名誉なあだ名で呼んだな。追加20本だ」
「エスパー!?いやいやそうじゃなくて誤解ぃぃぃひいい!?」
特訓は、俺のHPが残り1になるまで続いた。
散る寸前をわきまえてるとか、ダークエルフ怖い……。




