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プロローグ【それは始まりの物語~】

こんにちはこんばんははじめまして、貴方の街のべべともうします!

初投稿初作品初小説という初尽くしの一冊をご提供!

なにかと拙い文章ではございますが、ノリと勢いで楽しく書いていきたいと思います!

ではでは、幕を開けましょう。ご賞味あれ――――


 山辺やまべ けい

 平凡にオタクやりつつ適当な会社員だった俺ことこの俺の人生。


 姉と弟の真ん中、いわゆる長男にして弟というよくわからん立場に生まれて、親に甘え家族に甘え、27歳まで実家暮らしをしていた。

 しかし、姉が子供を産み、親が孫につきっきりになって立場は一転。半分逃げるように一人暮らしを始める。


 趣味はTRPG、テーブルトーク・ロールプレイングゲームで、毎週日曜をサークルメンバーとサイコロ転がし合い馬鹿笑いする日常。

 趣味が合ったおかげで彼女もでき、後に結婚。低収入ながらも夫婦で協力し合い息子を育て上げた。


 大きな病気もなければ大きな怪我もない、たまに息子の人生に口を挟んでは喧嘩して、翌日には互いにケロッと居間でテレビを見てる、そんな他愛もない毎日。

 人生で一番落ち込んだことは、妻が60という若さで病死したこと。

 あの時はへこんだなぁ……俺より2歳年下だったから、てっきり俺が先に逝くもんだとばかり思ってた。


 その後はまぁ、なんとか吹っ切れて、根っこに染み付いてたオタク趣味を満喫するために余生をエンジョイしたな。オンラインでTRPGしたり、漫画読み漁ったり。

 で、93まで行きて、息子と姉貴と弟に看取られて老衰でご臨終。


 孫?できなかったよ!それが心残りだよ!

 

 とまぁ、それが俺の、『今回の』人生。


                                  ◆

 


「いやぁ~、ずいぶんとまぁ平凡ですねぇ~」


「だなぁ、こう、なんか書類見ててほっとするもんなぁ」


 今現在、俺は役所にいる。

 適度に黄ばんだ壁に、無駄に高めの天井。

 自動ドアの入り口があり、その横には背の高い観葉植物。

 木造の受付と、そこに並べられた書類の数々。無機質なようで人間臭い空間。……うん、どこからどう見ても役所である。


 そして俺の目の前にいるのは、役所のお姉さん。

 ウェーブがかった黒髪に、糸のように細い目。素の表情でも、まるで微笑んでいるようだ。

 整った顔立ちだが、突出して美人でもない。なんともまぁ、役所によく居そうなお姉さんだ。


 俺は死んだんじゃなかったのかって?あぁ死んだとも。


 ここは、死んだ者が集まる役所なのだ。


【黄泉ノよみのくに南区役所みなみくやくしょ:「転生科てんせいか」】


 これが、この役所の名前だ。

 昔はもっと高潔な名前だったそうだが、時代のニーズに合わせて改名したらしいこの役所、どんな所なのかは、科の名前を見て貰えればわかるだろう。

 そう、ここは、死んだ人間が輪廻転生するための手続きを行う場所なのだ。


 輪廻転生は、一人の人間がアパートの部屋を借りる感覚に近い。

 それを、人間じゃなくて魂に例えてみればいい。


 前世の魂が、「人間」の器に転生する。

 そして、その一生の中で、何かを成す。

 中には悪事であったり、中には栄光であったり、様々だ。


 その後、一生を終えて器から抜け出した魂は、その時の記憶を持ち込み、もう一度この役所に帰ってくる。

 そして、役所の人達と相談しあい、「前回は人間だったから、今回はケモミミ美少女でいこう」、と決める訳だ。

 当然、そんときの役所の記憶は、来世には持ち越されないけどな。


「いゃっははは、山辺さん、これはですね~、平々凡々過ぎて逆にポイント高いですよ。悪事は極最低限、お釣りちょろまかすくらいですし、誰かの人生を脅かすような人事も行っていませんしね~」


 俺の人生について、意見をあげる役所のお姉さん。

 彼女は魂の管理者の一人であり、わかりやすく言えば「神」と言える。

 まぁ、本人は神なんかと一緒にするなとか言うけどな。俺からしたら似たようなものだ。


「だろ?まぁ、ポイント使って『可もなく不可もなし』を取ったかいはあるよな」


「ほぼ最低ポイントで取れるものですが、山辺さんの場合は『趣味傾倒』と噛み合って極力趣味以外に関わりを少なくするっていう小手先もありますから、こんなに平凡に仕上がったんですかねぇ~」


 転生に必要なのは、自分が生前の行いの中で得た『ポイント』だ。

 このポイントをやりくりし、『特典』と呼ばれる属性を付与することで、その後の人生がどのようなものになるかを示唆できる。

 ちなみにこの名称は、見る者の都合よく認識できる言葉に翻訳されているそうだ。


 例えば、『一匹狼』なんて特典を付与した場合、硬派なヤンキー兄ちゃんになったりするし、逆にボッチの引きこもりになる可能性もある、って感じだ。


 ポイントがどういう基準で振り込まれるかは、役所の人たちの審査次第なのだが、人間に転生した場合はお概ね、「社会に貢献した」だとか「悪事を働かなかった」といった要素で加点される。

 他にも、歴史に名を残したりすればポイントは莫大なものになる。悪事か善行かにかかわらず。


 今回の場合、俺は生前の俺になる前、つまり前回の役所手続きの際に、ポイントをやりくりして「地味な人間」になれるようにし、そして生前はその狙い通りに地味にポイントを稼いだってことだ。

 なんでそんな事をしたかって?ふふん、それはだな……

 

「え~、それでは改めてご説明いたしますね~?」

 

 おっと、俺の説明はいらなそうだな。

 

「山辺さんは、20回前の前世で『勇者の仲間』であった特典として、利用可能サービスに『前世の記憶持ち』が追加されています。今回はその特典をご利用なさる為にこの様な手続きを行ったと、我々も把握しておりますが、いかがですか~?」


「あぁ、それで間違いないよ」

 

 そう、これが理由だ。

 俺は、初めて魂の概念として己を自覚し、命としてこの世に生を受ける際に、はっちゃけて初期ポイント全額つぎ込んで『歴史的偉業の可能性』を指定してしまったことがある。

 結果、その時の俺の人生は、『勇者の相棒』として華々しいものになった。


 その時の功績が認められ、役所からは高ポイントと、『前世の記憶持ち』という、素晴らしい特典が授与されたのだ。

『前世の記憶持ち』。その名の通り、前世の人格をそのまま来世にコピーするという夢の特典。


 正確には、転生の際に処理される前世の記憶や、この役所でのやり取りの記憶。その中の、【前世の記憶】のみを次の素体に移す、というものだが、まぁ難しいことはこのさい必要ないだろう。


 とにかく、この特典があれば、前世の経験を元にまったく文明が進んでいない地域に産まれてそこを発展させたり、魔術が盛んな異世界に科学の知識を持ち込んだりできる。

 歴史にバンバン名を残し、ポイントがバンバン手に入るのだ!

 まさに人生――――もとい、輪廻生バラ色が安泰される夢の特典!


 …………しかし、俺の転生の場合、その後が問題だった。


 初めての転生で指定した『歴史的偉業の可能性』。ポイントをその1回につぎ込んだ俺は、その後の転生で人間に生まれ変わる為のポイントまで使い切ってしまっていた。


 その上、特典で利用可能になった『前世の記憶持ち』には、地球で人間に1000回生まれ変わるくらいの、それこそ「魔王」を名乗る様な化物に生まれ変われる程の莫大なポイントが必要だったのだ。


 その額、なんと50万ポイント。

 無特典人間が500ポイントっである所から、どれだけ大変なものか理解できるだろう。


 あんまりだと思わないか?せっかく世界を救った英雄になったって、その知識を引き継ぐ為の特典を得られないなんて。

 だから、俺は考えたのだ。

 どうせなら、この特典を最大限に活かすために、たっぷり準備をしようと。


「……長かったよ、ここまでくるのは」


「あはは~、お疲れ様です~。ようやくスタートラインですねぇ~」


 それからというもの、ミミズやネズミ、果てはスライム、微生物なんぞになりながら、ちまちまとポイントを稼ぐ日々。地球に異世界、ポイント節約の為に転生場所もランダムだ。

 理性なく生きる野生の生物って、罪がない分ポイントがウマウマなんだよ。ミミズとか土地耕すし、世界に対する貢献ポイントすごかったなぁ。


 けど、その時の記憶は役所にいる俺に引き継がれる。

 理性なく生きる日々を思い出す度にあの勇者一行の記憶と混同してしまうのだ。

 自業自得とはいえ、フラストレーションがマッハだぞ?栄光から一転して虫けらになるのって。

 もう限界!記憶なんていいから普通に人間……って時に、ようやく、ようやくポイントが溜まったのである。


<俺:50万4千ポイント>

 

 こうして俺は万感の思いを込めて、前々から計画していた通り、『前世の記憶持ち』の特典をフルに活かすため、あえて今回人間に転生したのだった。


「よし!じゃあ早速『前世の記憶持ち』をポイントで購入するぞ!」


「はいはい~。一応確認しておきますが、引き継げる記憶は、『この特典を使用する前の前世』からになります。つまり、今私が呼んでいる、山辺さんの記憶が来世に、そしてそのまた来世に適用されますね~」


「あぁ、それで問題ないぜ!」


 そう、だからこそだ。

 前世の俺、つまり山辺慶には、ファンタジー好きのオタク趣味があった。

 もちろん、転生モノ漫画も小説も、TRPGのネタにする為にある程度読み漁っていた。

 更には「もし俺が転生したら~」なんていう恥ずかしい妄想の元、役に立ちそうな知識は一通り目を通している!

『趣味傾倒』の特典のおかげだな!

 普通ならイタイことこの上ないが、俺は今まさに「転生モノ」の主人公になるのだ!完璧な流れであると言っても過言ではない!

 『前世の記憶持ち』は1度購入してしまえば引き継ぎ可能な特典だ。事前準備に力を入れるのは当然と言えよう。


「はいはい~。では早速……あ、そうだ~。せっかくなんですから、この『お友達』の特典を差し上げましょう~」


「『お友達』?」

 

 なんだ、それ?

 初めて聞く特典だ。

 

「これはですね~、貴方の意識体に、役所の人間と会話できるスペースを作る特典なんですよ~」


「なんだって?つまり……」


「来世の貴方は我が役所でも貴重な、初の『前世の記憶持ち』対象者ですから~。私共でも、モニターからサポートまでこなしたいと、そう思っております~」


 ふむふむ。転生モノでもよくある、意識の中で物事を説明してくれるサポーターが付いてくれるってことだな。

 願ってもないことだ。

 役所側、というかこのお姉さんも打算があっての事だろうが、こういうのは貰っておいて損はない。

 来世ではこの役所の知識はないだろうから、少し混乱するかもだが……慣れれば心強いことこの上ないだろう。

 

「じゃあ、それも付与で」


「は~い、受理いたしました~」


 お姉さんが判子を書類に押すと、俺の足元に魔法陣のようなものが展開される。

 21回目の、転生の瞬間だ。


「それでは、良い人生を~」


「あぁ、行ってくるぜ!」


 足元から光に包まれる。温かい、心地いい光だ。

 まるでそれは、俺のこれからの栄光を示唆しているようで――――


「ところで、お姉さん。その『お友達』の特典、ポイントは?」


「…………あ」


「あ?」

 

 あってなに!?

 俺は慌てて、残高を確認する。


<俺:200ポイント>


 総額3800ポイント持ってかれてるじゃねえか!?

 人間になる為の最低が500だぞ!


「やってしまいましたね~。ん~…じゃあ、こちらで何か適当な生物に転生できるように処理しておきますね~」


「おいこら待てなんだそれ!?やり直し!やり直しを要求するぅぅ!」

 

 俺の必死の抵抗も虚しく、光は体を包み込み、俺を来世へ送り込む。

 あぁ、なんという…………っていうか!


「役所の人!適当すぎやしませんんんんんんんんん!?」

 

 そして、俺の意識は、途絶えた。

 

「…………てへっ♪」


感想で、有難い意見を頂戴し、加筆修正いたしました!


「前世の記憶持ち」の特典の後に、「前世の記憶は役所内限定で引き継がれてる」という描写をしていたため、分かりにくかったとのことで!

たしかにそうだと、その前に役所のメカニズムについて付け加えてございます。


感想感謝!でございます!

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