実際は、言い伝え程キレイじゃない
時は、戦国時代。
織田信長、武田信玄、上杉謙信、今川義元、豊臣秀吉、徳川家康と名だたる武将が駆ける時代。
だけど、名を残す武将は素敵だけど、その下で泥にまみれても必死に生きてる人もいるんです。
普通なら気にも留めない足軽の物語。
名前は、吉田 晋助。一応は武士。現在は、浪人中。
浪人といっても、生活する為に戦場を転々としてます。
幸いなことに、今は下克上ブーム中
かといって、どこかに仕えて出世しようなんて考えは全くない。
何故って?
乱世過ぎて、大大名がどんどんなくなっているんだもん。
こんな時代じゃ、どこに仕えても明日はわからないじゃない?
だったら、勝ち戦が堅いところに足軽参戦した方がお金も稼げるし、討死もしないかなと思って。
え?武士の風上にも置けない奴だなって?
いやいや、この時代生きるの大変なんだよ?
この間なんか参戦した戦があったんだけどさ。
天下に1番近いとされてた今川義元軍に入ったの。
今川義元って言えば、そりゃメジャーで「東海一の弓取り」みたいな二つ名があって、家柄も頭も良くて武田家や北条家と同盟したばかりで、今一番乗ってる大大名よ!
そんで、いざ京へってことでまず手始めに代が変わったばかりの田舎大名の織田家を攻めるっていうんで、勝ち戦になること間違いないと思って、参戦しました。
道中、戦というか遠足でしたね。
かくいう俺も、周りの人と京の女はどうのこうのって話ばかりして行軍してたよね。
まぁ、なんていってもウチの総大将なんか城囲んで酒盛りしてましたから!
こりゃ、楽勝だなと2、3人倒して首やら耳やら鼻を取って、奉行さんに報告。
この報告で戦の報酬が違ってくるのですよ。
やっぱり、名のある人とか豪華な鎧や良さげな格好してる人は、倒した時の報酬も高くてね。
でもね、そういう人は大体が強かったり、屈強な護衛に守られていたりと、危険度がたかいから僕みたいな人は、全く最初は近づかないでみてるの。
え?それでも武士かと?
えぇ!武士ですよ。
この時代の武士なんかそんなもんですよ。
そもそも、名のある人が討ち取られた後って、どうなるか知ってます?
首斬られるだけだと思ってるでしょ?
残念ながらミンチになるんだよね……
そりゃあもう、モザイクないとダメなくらいのグチャグチャ…
討ち取られた後、みんなが群がって、我先にと腕やら足やら切り取って、誰々の首やら腕って奉行さんに報告する為にね!
もちろん、首は討ち取った人に権利があるんだけど…まぁ、この話の続きはまた後で。
それで、今回の戦すっごい楽勝で簡単だから明日には織田家を討ち取れるだろうって桶狭間で少し休もうって、事になって陣を敷いてどんちゃん騒ぎしながら、朝を待つようにしたの。
でも、次第に雨が降るようになってきて、雨脚が強くなったから、俺は木の下に移動して休んでたんだけどさ、なんかガヤガヤし始めたんだよ。
最初は、ハメを外し過ぎて誰かが喧嘩を始めたのかとか、相撲でもやって盛り上がってるのかな?って思ってたら…
「今川義元、毛利新助が討ち取ったり」って声が聞こえた後に勝鬨が上がったのよ。
え?って思って、本陣見たら織田の旗立ってるじゃないですかーー!
こうなるともうダメです。
私ら足軽は、直ぐに逃げます。
報酬も当然貰えませんから、一目散に逃げます。
退却の号令なんて待っていれません。
中には、討ち取られた味方の刀や槍やら盗んで逃げるのもいたけど、私はそんなことはしません。
だって、いくらにもならないんだもん。
足軽の装備なんて、木の棒に鉄の棒くっつけたようなのとか、包丁より切れない刀とかそんなんばっかりですから。
なんで、今回の桶狭間の戦い(今川家)は、ノーギャラです。
それにしても、今回は負けたのも意外だったのですが、生き残った人も大分いて意外でした。