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悪役令嬢の怠惰な溜め息  作者: 篠原 皐月
番外編:完璧令嬢の憂いの溜め息

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(1)アラナ、運命の出会い

今回の番外編は、エセリアの姉コーネリアと、彼女の専属メイドであるアラナの話です。コーネリアに振り回されつつも、ある意味彼女の最大の崇拝者であるアラナの、若かりし頃の苦労話になります。

 シェーグレン公爵邸での勤務を始めて、僅か半年足らず。若冠十五歳のアラナは、一週間ほど前にこの話を聞かされてからひたすら恐縮していたが、事ここに至って緊張がピークに達していた。


「アラナ……。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ? コーネリア様はもう十歳におなりで、手のかからない、賢くて優しいお嬢様ですから。勿論、分からない事があれば他の者が教えたり手伝うので、いつでも声をかけてくれて構いません」

「はっ、はい! 精一杯頑張ります!」

 廊下を並んで歩きながらメイド長のロージアが心配そうに言い聞かせてきたが、それどころではないアラナは強張った顔で頷くのみで、殆ど聞き流していた。


(うぅ、緊張する! お屋敷に勤め始めてまだ日も浅いのに、いきなりお嬢様の専属メイドに抜擢されるなんて! お嬢様達が幼いうちは、年が近い使用人の方が親密にお世話できるからという考えで、このお屋敷では若手が専属になるのが長年の慣例らしいけど、確かに光栄な事でしょうけど無茶過ぎない!?)

 不安と緊張のあまり既に涙目になっていたアラナだったが、さすがにコーネリアの部屋の前で足を止めた時には涙を拭い、殆ど根性だけで笑顔を作った。


「コーネリア様、失礼いたします」

「はい、どうぞ」

 ロージアがノックに続いて恭しく入室の許可を求めると、明るい高い声が返ってくる。それを確認してから二人は入室し、その部屋の主であるコーネリアと、今現在の彼女付きメイドであるサーシャの前にゆっくりとした足取りで進んだ。


「コーネリア様。サーシャの後任になりますアラナを、ご挨拶に連れて参りました」

 ロージアの台詞に、コーネリアは椅子に座ったまま笑顔で頷く。

「ロージア、ごくろうさま。アラナ、初めまして。これからよろしくお願いします」

「い、いいいえっ! こちらこそっ! よっ、よろしくお願いいたひまぎぇっ!」

「…………」

 可愛らしく微笑まれて、慌てて頭を下げながら用意していた挨拶の言葉を口にしたアラナだったが、それは途中で無様に途切れた。


(い、痛い!! 挨拶の台詞どころか、本当に舌まで噛んじゃった! もう駄目だわ……。皆、呆れているに決まっているし)

 さすがにロージアとサーシャも咄嗟にフォローができず、室内に不気味な沈黙が漂う中、アラナがあまりの失態に頭を下げたまま涙ぐんでいると、いつの間にか椅子から立ち上がったコーネリアがアラナの前に進み、手を伸ばして彼女の頭を軽く撫でながら優しく声をかけてくる。


「大丈夫だから、落ち着いて? アラナの名前は分かったし、痛くなくなったら少しお話ししましょうね?」

「……お、お嬢様ぁぁ」

 情けない声を上げながら涙目で顔を上げた視線の先に、何事も無かったかのように小首を傾げて優しく微笑むコーネリアを認めた瞬間、アラナは感動で胸が一杯になった。


(コーネリア様……。初対面で失態を晒したのに、何てお優しいお嬢様なの? お美しい以上に、本当に思いやりのあるお方だわ)

 その一事で、アラナがこれから仕える主に心酔したのを見て取ったロージアとサーシャは、これなら心配は要らないだろうと判断し、無言のまま満足そうに頷き合った。



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