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この異世界もう地球化してるんですけど……ぐあっ!右手がぁっ……!  作者: 濃縮原液
第1章 特定外来生物ウホゴリラ(地球名:ニホンザル)
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08 異世界人協会①

 トキナさんにドン引きしつつ異世界人協会ニムルス支部の中へと入る。

 中は市役所のような感じになっていた。

 案内板などには日本語も書かれているので僕でも読める。


『上の方はニムルス語じゃから下が日本語か、ずいぶんと複雑な文字じゃの』


 漢字も混ざってますからね。

 ニムルス語の方は文字の種類が少なくファルファベットみたいな感じのようだ。

 まあここで言葉も覚えられるという話だったので今は気にせず瑛さんの後をついていく。


 ちなみにアロとは異人会の前で別れた。

 アロは最初は漫画喫茶に行くと言っていたが。

 だが瑛さんと少し話して結局家に帰ることになった。


 アロは何日か家に帰ってなかったらしい。

 それなのに家より漫画喫茶に行こうとしていたとか。

 アロちゃん、たまには家にも帰ってあげようね……。


 そうして、色々手続きが終わったら僕も遊びに行っていいとのこと。

 瑛さんも行くから一緒に行こうと言われている。

 なので手続きが終わったらアロの家に行く予定だ。

 トキナさんも今の庶民の生活を見てみたいと言っていたし。



「まずは住民登録からだね。今の世の中IDなしじゃ家すら借りられない。印世君が持って来た荷物の換金もしたいがそれも登録の後だ。IDカードさえ作ってしまえば銀行のキャッシュカードとしても使えるからね。ぶっちゃけ相当な大金になるだろうから換金後は銀行に預けるといい。これから生活するための日用品を買うとしても手持ちは10万円もあれば十分だろう。電子マネーまではまだ普及してないしね」


 どうやら持って来た品物は相当な額になるようだ。

 最低でも10万円以上。

 いや10万……円? 円って日本円でいいのか?

 日本と同じ価値と考えていいのか疑問はあるけどとにかく大金のようだ。

 ちょっとわくわくします。


「では住民登録をしますのでこの書類に記入をお願いしますね」


 住民登録は結構簡単な物のようだ。

 項目もそんなに多くはない。

 名前、性別、生年月日、人種……これは地球での人種だ。


 地球から飛ばされて来る人間はほとんどが日本人だと瑛さんは言っていた。

 ただし日本にいた人間なら外国人が飛ばされてくることもあるらしい。

 例えば日本に来ていた観光客とかだ。

 まあ僕は日本生まれの日本育ちだったので普通に日本人と書く。


 ちなみに受付の人は白人みたいだ。

 アメリカ人とかフランス人かも知れない。髪が緑色だけど。


『いや、妾と同じ平人ひらにんじゃろう。地球人はこの世界に数万人はいるという話じゃったが、つまりはたったの数万人じゃ。地球人と区別のつかぬ平人だけでもこの世界に3億はいると思うぞ。瑛の話じゃとこの世界の総人口は現在10億人を超えるそうじゃからの』


 地球人の数が数万人というのに最初は驚いたし、召喚された人間としては今でもとんでもない数だとは思っている。

 でも、この世界での人口としては限りなく少ない。


 森の中で発見した遺体は日本人だけだったし、トキナさんの次に会った2人の内1人が日本人だったから地球人がどこにでもいるイメージだったけど実際は違うようだ。


『まあ平人と言っても妾のように髪が黒い人間は少ないからの。日本人が基本黒髪なら他の髪の色の人間は平人と思って問題なかろう』


 日本人でも染めれば髪の色は変えられるけど、まあ緑色はない。


『というか、わざわざ地球人と平人を区別する必要もないじゃろう。主を見る限り能力的にも平人と地球人には差異もないようじゃしの。猫人などの他の種族と比べれば平人と地球人は同じ種族と言ってもいいくらいじゃ』


 確かにトキナさんの言う通りだ。

 まずトキナさんがどう見ても日本人だし。

 僕はエッチの度にトキナさんに子供ができちゃわないかドキドキです。

 魔法的な方法で避妊しているからそれはないと断言されてはいるけれど。


 ちなみに子供については、亜人種間でもちゃんと子供ができるそうだ。

 普通に猫人と地球人のハーフとかいるらしい。


 そのため、この世界での区分けとして《異世界人》と認定されるのはこの世界に直接飛ばされてきた第1世代の地球人だけということである。


 地球人同士の子供でもこの世界で生まれた人間は異世界人とは呼ばれない。

 地球人同士の子供なら人種は平人ということになるそうだ。

 というより、地球人自体が平人として区分けされているとも言える。


 異世界人としての特別の区分けが存在するのは、それは被召喚者である第1世代の地球人が異世界である地球の情報を持っているからだ。

 だから地球人同士から生まれようともこの世界で生まれた人間はただの平人ということだ。



 色々思考しているために遅くなりつつも必要事項を書類に記載する。

 記載自体は本当に少ない。

 記入欄にはこの世界での住所とかもあるのだけど、僕は住所不定だし。


 魔法属性の欄とかもあったけどこっちは書かないでいいと言われた。

 最低限の記入だけを終えて受付のお姉さんに紙を渡す。


「現状での記入事項は以上ですね。次は魔法の適正検査がありますので奥の部屋へ来ていただけますでしょうか」


 魔法属性の欄は記載するのではなく判定してもらえるようだ。




 奥の部屋に入ると医者のような格好をした猫人のおじさんがいた。


「では、まずは君の魔力を覚醒させようかと……思ったのですがな。どうやらすでに覚醒しているね君。しかも相当に強い。一体何があったらこうなるのやら」


 医者っぽい猫人のおじさんが戸惑っていた。


「えっと、僕は今まで中央大密林っていう所にいたので。その中で暮らしている間に強くなったのかなぁ……って思います」


 中央大密林で暮らしていたこと自体は隠すことではない。

 というかそこで瑛さん達と出会ったのだから隠しようがない。

 他の部分については適当にごまかす。


「なんと、中央大密林とな。それはまた……。まさか未開領域に召喚されて生きて出られる者が存在するとはね。なるほど、それならこれだけ強いのも分かる。いや、むしろこれほどでなければ未開領域から生きて出ることなど不可能だろう」


 中央大密林で暮らしていたと話すとすぐに納得されてしまった。

 あの密林、どうやら本当にやばい所だったようだ。


「ふむ。適正も問題はないようですな。まあ全ての要素が奇跡的に噛み合いでもしない限り未開領域で生きるなど不可能でしょうしな。だが本当に良くあの密林から生きて帰ってきたものだ。君は本当にすごいな」


 とにかく驚かれた。

 まあ僕が生き残れた理由は主にトキナさんと出会えたおかげだと思うけど。


「一応、きちんと魔力の方も測っておきますか。こちらはIDカードにも記載がされるし、今後君が就職する際にも役に立つ物だからやるに越したことはない。未開領域で生き抜いたという実績もあるなら傭兵ギルドに入って傭兵として生きるというのもありだろう」


 傭兵ギルドとかあるようだ。

 駅とかこの異人会とかがあまりに現代風なので、傭兵とかファンタジーっぽい言葉を聞くと逆に新鮮に感じる。

 まあ中央大密林みたいな危険な場所があってドラゴンとかもいるのだから、他にもファンタジーな要素があること自体は不思議じゃないのかも知れない。


「傭兵ギルドって言っても要はなんでも屋みたいなものだけどね。ちなみにアロも傭兵だ。今は私の護衛として働いているけど所属自体は傭兵ギルドになっている」


 アロも傭兵だったようだ。

 まあそのアロが瑛さんの護衛として仕事をしているところは見ていないし、今は護衛の任務をほっぽって家に帰っているけど。



 そんなことを考えている間に魔力を測定する魔道具の準備が終わった。

 血圧を測る機械みたいな装置だ。

 装置の中に腕を入れて魔力を測定するらしい。


 ここで瑛さんが少し離れる。

 魔力を測定する際には近くに人がいると正確に測れないからだそうだ。

 猫人の医者も魔道具をセットした後は少し離れて結果が出るのを待つ。


 が、エラーが出てしまったようだ。

 瑛さんがさらに僕から離れる。

 医者も困った顔をしつつ離れてもう一度測定。

 再びエラー。


「おかしい。見たところお前さん光の属性があるように見えるのだがなぜか闇属性が混ざって検出されている。ワシの属性も闇ではないし――」


「私も闇属性は持ってませんよ。私に6属性みたいな属性がないのは知ってますよね」


 医者も瑛さんも闇属性はない。

 僕は光属性だから反対の闇属性の反応が出るのはおかしい。


 ヤバイ。

 思い当たる理由が1つしかありません。


『…………』


『しばらくの間伝達回路の接続を断つ。検査が終わったら主から念話で話しかけてくれ』


 トキナさんが伝達回路の接続を切った。

 特に体に変化は感じなかったけどなんとなく寂しい気がする。


「とにかくもう一度やってみよう」


 医者が慎重に設定を見直して3度目の測定。

 今度は上手く行った。


「ふう……少しあせったがどうやらノイズが混ざっただけのようですな。この部屋も魔力的に遮蔽されているわけではないから外で何かあったのかも知れない。ともかく検査は終了だ。検査結果もすごい。印世君は光属性だ。これは戦闘系6属性の1つで、戦闘に適した者などに出やすい属性ですな」


「光属性ってのはRPGとかである魔法の属性みたいなものと思って問題ないよ。この世界には他に私みたいな戦闘6系統とは別の属性もあるんだけど、印世君はやっぱり戦闘系だったってことだね。魔力量も相当すごいよ」


 瑛さんが感心した顔で言ってきた。

 医者の方は瑛さんよりさらに驚いているようだ。


 こんなところであまり目立つのは良くないけど、僕の魔力が予想以上に高かったおかげで医者も瑛さんも最初に闇属性が検出されたアクシデントについては忘れてくれそうで良かった。


 検査も無事終わったのでトキナさんとの伝達回路を忘れず復旧させておく。


(魔力の検査は無事終わりました。もう大丈夫だと思います)


『それは良かった。じゃが……やはり妾の魔力まで検出されておったということじゃの。念話しか行っておらぬ間の魔力は人には検知できぬレベルのはずなのじゃが。それも分かるというのは相当に性能のいい魔道具だったということじゃの』


 思わぬところで緊張を強いられた気がする。

 ただ魔道具でトキナさんの魔力を検知できるということは、魔力感知に長けた者なら道具に頼らずに僕に闇属性の魔力が混ざっているのを感知することも可能だろうとのこと。


 例えば、今も隣にいる瑛さん。

 彼女は僕の魔力の異常さに気付いている可能性もあるとのことだ。


『坂谷瑛とアロの2人が中央大密林に足を踏み入れておったのは、それが出来る能力があったからと考えるのが妥当じゃ。それはアロの戦闘能力ではないじゃろう。そして坂谷瑛が実力を隠していて、実はすごい力の持ち主……ということもないはずじゃ。つまりそれ以外の方法で、坂谷瑛は密林に足を踏み入れられる能力の持ち主だということじゃ』


 そして瑛さんが僕をここまで連れてきたのも、単なる親切心だけではないはずだというのがトキナさんの見立てである。

 確かに親切心だけでここまで着いてくる必要はない。


 異人会は被召喚者の保護もやっているという。

 だから本来ならその担当者に連絡して僕を引き渡せばすむ。

 わざわざ見つけた本人が一緒に付いて来る必要はないのだ。


「やっぱり君は面白いな。一緒に着いて来て正解だったよ。本当はここまで着いて来る必要はなかったんだけどね。なんて言っても君は未開領域で生きのびたレアな人間だ。私としては君が未開領域から持って来た色々な物にも興味があるしね」


「そうですか……恐縮です」


 瑛さんが僕の思考に返事をするかのように話しかけてきた。

 思考にツッコミを入れられるのはトキナさんで慣れているけど、まさかこの人僕とトキナさんの念話も読めたりしないよな?


『眷属紋による念話を他人に読みとられることはない。それができるならもうそれは他人の思考そのものを読む能力があるということじゃ。じゃがそんなことはそれこそ伝達回路を形成でもせぬ限り不可能じゃ。警戒するなら魔力を傍受されることよりも、主の顔から思考を読みとられておらぬかをこそ警戒すべきじゃの』


 そっちの方が可能性が高いようだ。

 瑛さんは魔力探知に長けている可能性があるとトキナさんは言っているけど、それ以外のカンも相当するどそうだとも言っている。

 魔法的な能力に頼らずに僕の思考が読まれる可能性もあるのかも知れない。


「そういえば、瑛さんの属性は何属性なんですか?さっき戦闘系の6種とは別の属性だって言っていましたけど」


 せっかくなのでここで瑛さんの能力を聞いておく。

 すると瑛さんは喜んで教えてくれた。


「ふっふっふ。良くぞ聞いてくれた。この世界には戦闘系の6属性以外に特殊な属性というか、属性では表現しにくい特殊能力がある。昔はそういうのをまとめて特殊属性とか呼ぶこともあったそうだが、今は細かく分けられているね。専門的に分けると100種類くらいあるかな? 最近は平和なせいもあってか戦闘6属性よりそれ以外の属性を持つ人間の方が多いくらいだ。メジャーなところで言えば錬金術とかね」


『100種類……じゃと』


 トキナさんがだいぶ驚いていた。

 魔法の属性に関しても今は細分化されて色々研究されているようだ。


「で、問題の私の能力だが、あえて属性で言うなら《情報属性》とでも言えばいいか。基本的には魔力探知とかに特化した能力だね。魔力以外にも視力や聴力、第六感みたいのも魔法で強化できる。あと私はもう1つ《隠蔽いんぺい属性》も持っていて、こっちは逆に自分の魔力を隠したりする能力だ。これがあるから無茶さえしなけりゃ私は未開領域でも魔物に襲われる心配がない。ただこの辺の能力を属性で表すのは最近の傾向には合わないな。隠蔽属性なら能力名としての《ステルス能力》の方が通りがいい。レーダーに移らないステルス戦闘機の魔法版ってところだね」


 属性自体は100種類ほどに分けられているけど、この区分けは細かすぎて一般的ではないようだ。

 だから属性と言えば今でも戦闘6属性を指すのが一般的らしい。


 で、それ以外の特殊属性はもう~属性とは呼ばれてなくて、特殊能力として《ステルス能力》とか《~クリエイト能力》などと呼ばれているそうだ。

 ちなみにクリエイト能力っていうのは錬金術のことで、金を作るならゴールドクリエイト能力、石油ならオイルクリエイト能力などと呼ばれているらしい。


 錬金術という1つの属性があって、それで何でも作れたりはしないようだ。

 そこまで細かくなるとやはり~属性ではなく~能力と1つの能力ごとに名前をふってしまう方が合理的かも知れない。


「戦闘6属性以外の属性は応用がきかないからね。印世君の光属性なら光からイメージできるようなことが幅広くできたりするんだけど、私みたいな特殊属性の能力者は本当にその専門の能力しか使えない」


 特殊属性はもう超能力みたいなイメージで考えた方がしっくりくるようだ。

 金を作る属性とか意味不明だしね。金を作る能力と言う方がしっくりくる。

 ていうかスルーしていたけどこの世界って普通に金を生みだす能力者がいるようだ。

    

『錬金術師なら昔からおったぞ。まあ1種類の金属しか生みだせぬような能力は大してすごい能力とは言えぬが、生活に直結した能力ではあったの。金などは自然界ではあまり取れぬから、流通しておるのはほとんどが魔法で作り出したものじゃった』


 錬金術ってこの世界だと生活に直結した一般的な能力だったようだ。

 地球でなら億万長者になれそうだけど、トキナさんの話を聞く分だとこの世界ではとっくの昔に金の価値とかは暴落してそうな感じがする。



 とか頭の中で話をしている内に住民登録の方まで終わってしまった。


「お疲れ様です。これで住民登録は終了ですね。しかし光属性のAランクですか。すごいですね。普通この世界に来たばかりの人は強くてもCかDランクの魔力しかないはずなのですが」


 受付のお姉さんもびっくりしていた。


「まあここに来る前に色々あったので」


 とぼかしておく。



「正式なIDカードが出来るのは少し後になるけど仮のIDでも異人会の中にある銀行なら使える。というわけで次は荷物の換金をやってしまおう。物によっちゃ鑑定に時間がかかる時もあるけどやはりお金は必要だろう」


 確かにお金は必要だ。

 そして森から持って来た素材や電子機器が一体いくらになるのか興味もある。

 僕は少しワクワクしつつ瑛さんの後についていった。


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