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05 遭遇

 僕とトキナさんがジャングル生活をしていた密林に人が入って来た。

 僕だけでなくトキナさんも警戒をしている。


 この場所は未開領域と呼ばれる危険地帯で、少なくともトキナさんが封印される前は人が足を踏み入れるような場所ではなかったそうだ。

 実際に今まで見た死体も召喚されたと思われる日本人のものだけで、この世界の人が密林の中に入った形跡はなかった。


 こんな未開のジャングルに人が入って来たというのだから警戒するのは当然である。

 最悪、トキナさんの石化が解けたのを感知された可能性もある。

 僕は右腕の包帯を確認する。

 少しゆるくなっていたので、きつく巻きなおしておいた。


 密林を出る前から《獄炎紋》を見られるわけにはいかない。


『相手との距離はまだ離れているようじゃ。人数は1人……いや、2人じゃな。ちょうど南から密林に入って来たところのようじゃ』


 僕は声には出さずに対応をトキナさんと話し合う。


(それで、どうしましょうか?相手がまだこちらに気付いてないならへたに接触しないほうが……)


『いや、相手がこちらを探していないのなら遭遇に問題はない。そして、相手が妾の存在に気付いているのなら、印世には悪いと思うが妾のいる遺跡との距離が開いている内に対処してほしい。』


 相手と接触することに決定です。

 まあ元々外に出れば人と接触するのだし、相手が2人なら危険も少なそうだ。

 僕は相手に警戒を与えないよう魔力を抑えつつ近づく。


 が、ここで問題が起きました。


『印世、どうやらドラゴンが向うの2人に近づいているようだ』


 困ったものです。

 相手が敵なら放っておくところですが……。

 そうでない可能性があるので助けにいこうと思います。

 実は僕1人ではまだドラゴンと戦闘していないので勝てるか不安な面もありますが。


『主がドラゴンに勝てるかを心配する必要はない。今のお主なら問題なく勝てるからの。じゃが、向うの人間がこの密林がどんな場所かを知っておるなら本来助けはいらぬはずじゃ。ドラゴンがいると知って入ってくるのならそれに勝てる実力の持ち主ということじゃからな』


 確かにその通りだ。

 そして、相手がドラゴンに勝てる実力の持ち主で、かつトキナさんを探している場合が最悪の事態となるだろう。

 だがまずは現場に向かうことだ。


 僕は魔力を開放して一気に密林に入って来た2人の元へと向かう。

 密林の南側への探索は進めていなかったが、ただ真っすぐ進む分には問題ない。

 ついでに言うと、遺跡は密林の南側にあったので西へ行くよりも距離は短かった。


 そのため、ほどなくして僕は密林へ入って来た2人の元へと到着した。

 ドラゴンとの距離はまだある。


 「にゃ?」


 この密林に入ってきていた2人はどちらも女性だった。

 1人は20代の日本人とおぼしき女性で、もう1人は小さな女の子だ。


 日本人っぽい女性の方は黒髪のショートカット、活発そうな顔立ちでいかにも探検家といったいでたちをしている。テレビでたまに見る探検家の格好そのものだ。

 そして小さな女の子の方は、褐色の肌に金髪のショートカット、格好はこちらも探検家といった感じ。

 そして……耳が猫耳である。


猫人ねこにんと……もう1人は日本人かも知れぬな。妾の種族と見た目が同じだから外見だけでは判断できぬが』


 この世界にはトキナさんのような地球人と見た目の区別がつかない平人ひらにんという種族の他にいくつかの亜人種が存在する。

  その1つが猫人で、猫っぽい耳と尻尾が生えている亜人種だ。後は人間と変わらない。


 亜人種についてはあらかじめトキナさんから聞いていたが、実際に見ると色々と感動してしまいます。

 子猫ちゃんですね。

 ぎゅってして耳をなでなでしてあげたいです。


 などと僕が妄想している間にその猫人の方がミャーミャー何かをしゃべってきた。

 多分言語はトキナさんと同じ……だと思う。


『ニムルス語じゃな。主が突然現れたから驚いておるようじゃ』


 トキナさんには言葉が分かるようで良かった。

 でも僕が言葉を分からないのは不便だし対応にも困りますが。

 トキナさんに翻訳してもらっても僕がニムルス語を発音できるかも怪しいし。

 と、色々考えていたけどそれは杞憂に終わった。


 僕に言葉が通じてないのを察知したようで向うが日本語に切り替えてきたからだ。


「ニムルス語は分からないみたいだにゃ。見たとこ日本人くさい気もするけど日本語なら分かるにゃ?」


 日本語が通じるようで良かった。

 当たり前のように猫人が日本語を話したことに対してトキナさんが少し驚いているようだったけどとにかくラッキーなので接触を開始する。


「君、日本語が話せるんだね。確かに僕は日本人だ。少し前にこの世界に来て、初めて人と会ったんだけど言葉が通じて良かったよ」


 トキナさんが頭の中で何か言いかけた気がするけど普通に話を進める。

 僕は器用ではないのでトキナさんと相談しつつ相手の出方をうかがうとかは無理なので。


「やっぱり日本人にゃ!あ、アロはアロだぞ。猫人にゃ。ネコミミさんにゃんだぞ。すごいだろ!」


 うん、すごく可愛いネコ耳です。

 自分からネコ耳アピールしてくる辺りに疑問は感じるけど。

 そんな感じでアロという猫人の方はテンション高めで話しかけてきたけど、日本人っぽい女性の方は何かに警戒している感じがする。


「一応私も自己紹介はしておこうか。私の名前は坂谷瑛さかたにえい、キミと同じ日本人だ。で、色々話してあげたいのは山々なんだが、キミどうしていきなり走ってきた?」


 その言葉で僕はここにドラゴンが近づいて来ていたことを思い出す。


「あ、そういえば今ここにドラゴンが近づいて来ています。それで2人が危険と思って走ってきました」


 その僕の言葉に瑛という女性は大きなため息をついた。


「そうか……ドラゴンの気配には気付いていたんだな。でもその上で魔力開放するとか本当に勘弁してほしいんだけど、こっちはドラゴンと戦う戦力なんて準備してないんだから」


 どうやらドラゴンと戦えるから密林に入ってきていたわけではなかったようだ。


「というわけで私としては一度密林から出るのを提案したいんだけど」


 という瑛さんの言葉に隣の猫人の方が割り込んできた。


「え、逃げるのかにゃ? ドラゴン倒したらお肉いっぱい食べれるのに。アロはまだドラゴン食べたことないから食べたいにゃ!」


 猫人の方はやる気まんまんというか食べる気まんまんだ。


「まあドラゴンの肉は魔素が濃いから貴重だし食べれば魔力も上がるだろうけどな。全部勝てればの話だ。アロの実力じゃまだドラゴンには勝てない。もちろん私は戦闘系じゃないから戦う気ないしな。」


「手榴弾投げても駄目にゃ?」


「これはあくまで護身用だよ。威力も中級魔法程度だ。手榴1発でドラゴンが倒せるならこの密林だってとっくに開拓されてるって話だ」


 猫人の方が食い下がっている。というか手榴弾とか危険な単語が飛び交っていますが。

 色々ツッコミたいところもあるけどドラゴンが迫ってきているので話に割り込む。


「えっと、一応ドラゴンなら僕が倒そうと思いますけど」


 僕が腰に差していた刀を抜きつつそういうと2人は驚いた顔で振り向いた。


「刀にゃ! サムライブレードにゃ!」


「ひょっとして、君その刀で戦うつもり?」


「はい、こう見えても僕はしばらくこの密林で過ごしていましたから。ドラゴンを倒せるだけの力はありますよ。だから助けようと思って来たんです」


 僕は自信を込めて宣言する。

 猫人の方は刀に興奮しているだけみたいだが、日本人の瑛さんの方は少し考え込むそぶりを見せた。

 だが、僕の方をしばらく見ると納得したように頷いた。


「確かに、君……可愛い顔して相当強い魔力を放ってるね。分かった。君が勝てるというなら任せよう。一応少し離れて見てるからやばそうなら言ってくれ。その時は手榴弾を投げてドラゴンが怯んでる内に逃げるから」


 そう言って瑛さんとアロの2人はドラゴンが向かってくる方向と反対方向に少し離れる。

 話している間にドラゴンも迫ってきていて、ほどなく僕はドラゴンと相対した。


 迫って来たドラゴンは僕がこの密林に来て最初に見たドラゴンより少し小さかった。

 多分年が若いのだろう。

 ただし元気はいっぱいなようで、すぐに僕を食べようと口を大きく開けて襲いかかってきた。

 頭は悪そうである。

 超人的な存在としての竜というよりは肉食恐竜の方が合っているかも知れない。


 そして、僕は襲い来る口を左側へとすり抜け、ドラゴンの首を刀でねた。


 一撃だ。


 ドラゴンは首から勢いよく血を噴き出して倒れる。


 初めてのドラゴンとの戦闘で緊張はしたし、実際に攻撃を避けるのも楽ではなかったけど、終わってみればあっという間だった。


 ただし僕にも余裕はなかったのでこの一撃は全力で放った。

 おかげでドラゴンの首から上は空の彼方に消えていったし、斬撃の余波でドラゴンの後ろにあった木も軒並みぶった切ってしまったのはご愛敬である。


 前方の木を全部切り倒してしまったので森の中が少し明るくなりました。


「すごいにゃ! 一撃にゃ!」


 猫人のアロが尊敬のまなざしで僕を見つめている。

 ずっと密林にいたせいで実感はないけど、やはりドラゴンはこの世界でも強い部類の生き物なのだろう。


 そして純粋なまなざしを向けるアロとは対照的に、瑛さんの方は少しいぶかしむような目で僕を見ていた。


「君……すごいな。今のは硬化か? いや少し違うな。光属性の魔法で剣の周りをコーティングしているのか。それもドラゴンの魔法障壁をたやすく貫通できるレベルだ」


 瑛さんは僕の剣筋を一目見ただけで僕の戦い方を看破してしまった。


 そう、僕はただ剣を振っただけではない。

 いや、動作としてはそうなのだけど、名刀でもないただの刀で首を落とせるほどドラゴンはやわではない。

 というかこの世界の生き物は強い者ほど魔法による強力な障壁を体にまとっている。

 ドラゴンが手榴弾で倒せないというのも多分その辺りが理由だ。


 僕は魔術師系の才能はなかったので戦士系の能力を鍛える方向でトキナさんから修行を受けていた。

 そして鍛えたのがこの光の魔法による武具のコーティングである。


 光属性で行われる強化は俗に《光武装ひかりぶそう》と呼ばれているそうだ。

 今は単純に威力を上げるだけだけど、慣れれば射程を延ばしたりもできると言っていた。

 最終的には魔法だけで剣を作ることもできるらしい。

 ただ、触媒というか芯というか、性能のいい剣に魔法をかぶせる方が威力が高いともトキナさんは言っていた。


『しかし、この女やはり危険じゃの。主に教えた光武装自体は昔からメジャーじゃったから知っておっても不思議ではないが、一度見ただけですぐ判別できるというのは……』


 トキナさんも不審に思っているようである。

 でもドラゴンと戦う準備ができていないと言っていた点からしても、トキナさんを探しに入ってきたとは考えにくい。

 実際2人から感じる魔力もドラゴンより弱い物だし、そもそもよく考えてみれば2人しかいないという点でも敵とは考えにくい気もする。


 ともかく疑ってもきりがないのでまずは話をすることだ。

 と、ここで僕はまだ自分が自己紹介をしていなかったことを思い出した。


「あ、そういえば僕の名前がまだでしたね。えっと、僕の名前は汽坂印世きさかいんせ。16歳の高校1年生、でした。この世界に来たのは3週間前くらいで、ずっとこの密林の中にいたので人と会うのは貴方達が初めてです」


「よろしくにゃ! あ、アロはアロにゃ! アロ・エピオ、印世と同じ16歳だぞ! なりたてだけど傭兵にゃ! 今は師匠の護衛をやってるにゃ!」


 どうやらこの猫人の子が日本人女性の護衛だったらしい。

 確かにこのアロの方が魔力は高い。

 というか日本人女性の瑛さんの方からはほとんど魔力を感じない。

 魔力総量自体が少ないわけじゃないけど戦闘用の魔力が恐ろしく少ない感じだ。


「えっと、うん。ドラゴンは君が倒してくれて当面の危機は去ったわけだし、私も改めて自己紹介させてもらうか。私の名前は坂谷瑛、28歳だ。この世界に来たのは4年前で、今は国連環境計画の自然調査員をやっている。専門は外来生物が自然環境に与える影響の調査だな。あ、ここで言う外来生物ってのは、つまり異世界であるとろこの地球から来た生物のことだ」


 うん、よく分かりません。

 瑛さんが28歳で4年前にこの世界に来たってとこまでは分かった。


『……国連……? 自然調査……? この女は何を言っておるのじゃ? この世界にはない概念がだいぶ入っておる気がするが、印世には理解できて……おらぬようじゃの』


 トキナさんも理解に苦しんでいるようです。

 そんな感じで僕の頭に疑問がいっぱい浮かんでいるのに向こうも気付いたようだ。


「あー、っと、そういえば君、人に会うの初めてって言ってたな。ずっとこの密林の中にいたならこの世界のことまだ知らないんだよな」


 そう言って瑛さんは困った顔をしていた。

 人の良さそうな感じである。

 最初は少し怖そうな気もしたけどあれはドラゴンが迫っていたからだろう。

 勘はするどそうだけど悪い人とかではないのかも知れない。


「それだとまずはやっぱ一度異人会に行くのが王道だよな。まだこっちの言葉も覚えてないみたいだし」


「おー、異人会行くのかにゃ? じゃあアロも付いてくにゃ! 近くの漫画喫茶で日本のマンガ読むのにゃ!」


 猫人ちゃんがはしゃいでいます。

 というかこの世界、漫画喫茶があって日本のマンガが読めるのか。

 今までここは中世っぽい世界だと思っていたけど、外の世界に対するイメージがどんどん崩れていく気がする。


『なんというか……、妾が話に付いていけぬのじゃが。この数十年の間に一体この世界に何があったというのじゃ』


 トキナさんも困惑しているようです。

 長い封印から目覚めたら世界が変わっていたって感じだろうか。

 まだ実際外に出てはいないけど、もしかしたら僕よりトキナさんの方が衝撃を受ける事態になるかも知れない予感がしてきます。


「とりあえず、君さえ良ければ異人会の方に連れていってあげたいと思うんだけど。君、この密林の中で暮らしてたみたいな事言ってたよね? 住んでた場所があるならそこに荷物とかもあるだろうし、一度戻った方が良さそうだね。邪魔でなければ私達もついて行っていいかな?」


 それはまずいです。


『妾に気付いておるかは知らぬがここにこられるのはまずい。そもそもこの女魔力感知にけているふしがある。すでに妾の魔力を感知しておるかも知れぬし、遺跡内に入れば妾が普通の人間とはあきらかに違うというのも分かるじゃろう。一度戻って荷物を整えるはよしとして、この女を連れてくるのは絶対に駄目じゃ』


 僕も同意見だ。


「えっと、そうですね。一応密林の奥に住んでいた場所はあるので、できれば一度荷物なんかを取りには戻りたいけど、できれば僕1人の方がいいかな。やっぱり密林の中は危険だし」


「確かに、私みたいな非戦闘員は足手まといになってしまうか」


 素直に納得してくれたようで良かった。


「そうだね。それじゃあ良ければ後日村まで来てくれるかな。私達はしばらく向うの村にいる予定だから。あ、村はこの方向に密林を出てまっすぐに歩けばつくから」


  そう言って瑛さんは密林の外を指さす。


『南と言えばニムルスじゃな。最初に猫人の娘が話しておった言葉もニムルス語じゃったから、恐らくは国も残っておるのじゃろう。妾の時代には確か比較的近くに村があったはずじゃ』


『目的地と向きは違うが別に構わぬじゃろう。むしろ初めから封印を解くのは後回しにして、とにかく先に外に出ておくべきじゃったかも知れぬ』


 僕としては1人で密林を出るのが嫌でしぶっていただけなのだが、トキナさんの言うことももっともではある。


『一度遺跡に戻って準備をしたら、まずはニムルスに行くのもよいじゃろう。サラスタンへと向かうのは一度外の世界を見てからでも遅くはない』


 方針はおおむね決まった。

 トキナさんの封印を解くのは遅れるけど、そもそもトキナさんは封印が解けても引きこもりをやめないふしが見受けられつつあるので僕もあきらめます。


「じゃあとりあえず明日村に来てもらうとして、そういえば印世ちゃん携帯とか持ってる?あ、っていうか印世ちゃんって男っぽい……いや、かっこいい名前だね」


「あ、スマホは電池切れちゃって今は持ってないです。それと僕男っぽい名前っていうか男です。一応」


「にゃんだってぇー!」


 猫人の娘がいい感じに驚いてくれました。

 ここしばらくトキナさんとしかすごしてなかったから女の子に間違われるのもすごい久しぶりな気がする。


「あー……男の子だったのか。うん、分かった。で、携帯――スマホは持ってないんだったね。うーん、じゃあやっぱ普通に村まで来てもらうのがいいかな。村には一応電気も通ってるから充電もできるし。って、あ、どっちみちここ圏外だったわ。あははごめんね。一応村の中なら携帯も使えるし、まだ壊れてないなら持ってくるといいよ。あ、それと携帯使えるって言っても通話だけでネットは無理だからね」


 その後結局1時間ほど話してから2人とは別れた。

 ちなみにドラゴンの死体は猫人のアロの方が食べたそうにしていたので3分の2程度をあげた。

 ドラゴンの価値については瑛さんが皮膚とかも高く売れると教えてくれたので、高く売れる部位だけ遺跡に持って帰ることにする。

 トキナさんの見解とほぼ同じだったので嘘をつかれていることもないだろう。


 ちなみにドラゴンは体の奥にある魔結晶と呼ばれる部位が一番高いということ。

 これもトキナさんと評価は同じだが、魔結晶に対する解説は少し違っていた。

 トキナさんは魔術的なことを色々と言っていたが瑛さんは要は人間で言う所の胆石だと言っていた。

 まあとにかく価値はあるそうなので持って帰ることにする。


 2人の方はドラゴンの肉を持って帰っていった。

 ドラゴンの肉は食べると魔力が上がるとかなんとか、そういえばトキナさんも初日にそんなことを言っていたかも知れない。

 そのトキナさんは魔結晶の方を普通に食べていた気もするけれど……。


 ともかく、明日その村へ行くことを約束して一度遺跡へ戻ることにする。


『しかしあの女、村に電気が通っていると言っておったな。電気というのは地球の物だとばかり思っておったが』


 電気についてくらいはトキナさんにも話をしていた。

 あくまで僕のいた世界についての話だったのだけど。


 僕のこの世界に対するイメージは中世的な感じの世界観で、それはトキナさんがそんなものだと話していたからだったのだけど、どうやらトキナさんが封印されている間にこの世界は大きく様変わりしていたようだ。

 恐らく、地球人の手によって。


 瑛さんも普通に日本人だったし、日本人自体が多くはないがいるところにはいるって感じだったからね。

 それ以前にこの世界の猫人がわざわざ日本語を覚えているくらいだ。

 予想以上にこの世界にいる地球人の数は多そうだ。


 明日には密林を出ることになるけど、思っていた以上に前途は多難そうだ。


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