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魔導戦記ヴァルキュリア  作者: ケントゥリオン
ブランデンブルクの乱
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反逆者の死

ブランデンブルク軍のヴァイマル方面を任されたラオジッツの部隊は、ラインフェルデン大橋の倒壊により混乱状態に陥った。

「ラオジッツ将軍、ダークス子爵の部隊が撤退を始めました!」


「報告します!クロリック将軍とニーブル将軍の部隊が同士討ちです!」


「ち。すぐに鎮圧しろ!まずは秩序を取り戻せ!」


最高指揮官であるブランデンブルクと交信が途絶したばかりか、敵中である帝都の市街地にわずかな戦力だけで取り残されてしまった。さらにブランデンブルク軍の精鋭部隊がラインフェルデン大橋倒壊という荒業によって壊滅状態。帝都に攻め込んでも、敵には橋を倒壊させて水掘に突き落とすという策があることは分かっているのでむざむざ橋を渡ることはできない。かと言って、持久戦に持ち込むような時間はない。これでは、兵達の士気が下がるのも仕方がない。元々勢い任せで従っただけのような寄せ集め部隊なだけに状況が不利と見ればすぐに裏切る者まで現れる始末だ。


「将軍、こうなったらウルバン砲で帝都を砲撃しましょう!宮殿にうまく命中させられれば、我等の勝利です!」


「馬鹿者!もし、うまく照準が合わずにブランデンブルク侯の居場所に命中でもしたらどうするつもりだ!?どこにおられるのかも分からんのだぞ!」


「・・・では、このまま何もせずに味方が全滅するのを待てと言われるのですか?」


「そうは言わん!そうは言わん、が。・・・くそッ!このような小細工1つで軍の9割を遊兵にされてしまうとは・・・」



その頃、ブランデンブルクは1個師団にも満たない戦力で前左右の3方向から迫る帝都守備隊の大部隊を相手に戦っていた。

数の上ではブランデンブルク側に勝ち目はないはずだが、彼等は数の不利を感じさせない圧倒的な強さを見せた。

建物を影を利用しながら徐々に敵に近付き、一気に懐から攻め込んで陣形を崩しに掛かり混戦へと持ち込んだ。

「しょせんは、帝都でぬくぬくしていたような実戦経験のない輩!我等の敵ではない!」

数こそ少ないが、ブランデンブルクの率いている部隊は彼の直属部隊。その実力はヴァルキュリアでもトップクラスだろう。



ブランデンブルクの戦いぶりを少し離れたところの建物の屋根の上から観戦している1機のガーディアンがいる。騎士の鎧のような黒い外装に純白のマントを羽織っているスタイルで、左右の腰にはバスタードソードが1本ずつ装備され、右手には魔導銃が握られている。コックピットにいるのはラルフだ。この機体はラルフ専用に開発された新型ガーディアン・ザフリード。ラルフお抱えのイタリア軍事工廠で開発された新型ガーディアン・デリングを改良して作られた機体で、機動力重視の設計がなされている。

ザフリードのコックピットには通信機を通して前線で戦う兵達の声が聞こえてくる。

「第2中隊がやられた!早く増援をッ」


「敵の勢いを抑え切れん!一時後退する!」


「隊長!応答してください!隊長ッ!!」


「敵の後ろに回り込め!包囲しろ!」


「第3大隊が突破されたぞ!」


こちらは数倍の戦力で相手をしているというのにこの醜態ぶりにラルフは小さく息をついた。

「流石はブランデンブルク侯だ」

ラルフは通信機をONにする。

「ロンメル軍団は直ちに側面から敵の中央に突っ込め。クールラント軍団はそれに呼応して敵を圧迫しろ」


「「ヤー,マイン・ヘル!」」



戦場を勇猛果敢に駆けるブランデンブルクのゲフィオンが目の前にいる敵のうち最後の1機をバスタードソードで胴体を真っ二つにした。

「ふん。この程度の力で我等を止めようなどと、笑わせる!」


「閣下、こちらの敵も片付きました」


「よし、このまま一気に次の城壁まで進むぞ!止まれば、敵に反撃の隙を与えることになる」


「ヤー,マイン・ヘル!・・・あ、閣下、敵の新手です!」


「うろたえるな」


「で、ですが、敵は恐ろしく早い新型のようで、う、うわああッ!」

これを最後に彼との通信が途絶してしまった。

「おい、どうした?応答しろ。・・・ちッ」


ブランデンブルクは残存戦力を確認するためと部隊の集結のために一旦自分の下に集まるよう命令を下した。

と、その時、突然頭上から銃弾が飛んできた。ブランデンブルクは辛うじて直撃を避けるも、護衛機の2機が着弾し、戦闘不能に追い込まれた。

「くそッ!上か!?」

建物の上に視線を向けるとそこにはロンメル軍団に配備されている新型ガーディアン・デリングの姿があった。デリングは屋根から飛び降りてブランデンブルク軍に襲いかかろうとする。

「舐めたマネをしてくれるじゃねえか!応戦しろ!1機たりとも生きて返すな!」

機動力重視のデリングは味方間で連携を図りながら四方八方から縦横無尽にブランデンブルク軍を攻めて追い詰めるも、ブランデンブルク軍の戦いぶりもそれに劣らず見事なものである。

その様を見て、ロンメルは思わず感嘆の声を漏らす。

「流石はヴァレンシュタイン公に並ぶヴァルキュリアの双璧。これほどの劣勢にあっても戦意を失わないとは、恐れ入る」

ロンメルのデリングは自ら前に進み出てブランデンブルクのゲフィオンと対峙する。

それに気付いたブランデンブルクもロンメル機に機体を向ける。

「あの名高い狐将軍殿か?」


「その通りです、閣下」


「ならば相手として不足はない!貴様の首、貰い受ける!!」

盾をロンメル機に向かって投げ付けると両手でバスタードソードを握って斬りかかろうとする。

ブランデンブルクの投げた盾を、自身の持つ盾で防ぐも、その間にブランデンブルク機に突進されて姿勢が崩れる。

「ッ!!」

後ろへジャンプして辛うじて姿勢を直すロンメル。後ろへ下がりつつ、盾を失ったブランデンブルク機に魔導銃を放つも、素早く動く敵にうまく狙いを定められない。

ブランデンブルクは俊敏に動いてロンメルの攻撃を避けつつロンメルとの距離を詰めて両手のバスタードソードを交互に振り落とす。

右手の剣は避けるも、左手の剣で右腕を切り落とされてしまう。


「これで終わりだ!」

ブランデンブルク機の2本のバスタードソードがコックピット部目掛けて刃を突き刺そうとする。

ロンメルが死を覚悟したその時、漆黒のガーディアンが剣を振るいながら間に割って入る。

「な、何だ!?」


「ザフリード!?・・・か、閣下、どうかお下がりください!ここは危険に御座います」


「ロンメル、退くのはお前の方だ。もうじき私の本隊が到着する。後は私に任せてお前は後方に後退しろ」


「で、ですが!」


「命令だ!速く行け!」


「ヤー,マイン・ヘル」

ロンメルのデリングは反転するとその場から走り去った。

ブランデンブルクはもうラルフにしか興味がないと言わんばかりに、ロンメルのことは気にも留めていない様子でいる。

「ヴァレンシュタイン公、この日を待ちわびたぞ!これまで散々お前のような若造とヴァルキュリアの双璧として比べられ続けてきたが、遂にどちらが真にヴァルキュリア最強か、決着を着ける時が来たな!!」


「決着、ですか。それなら、もう結果は出ているでしょう。これまでにあなたとは176回チェスをしましたが結果は私の全勝。そして151回してきたガーディアン模擬戦はあなたの全勝です」


「そういう話ではない!・・・まあいい。そろそろ行かせてもらうぞ!」

ブランデンブルクは機体を走らせてザフリードに両手のバスタードソードで襲い掛かる。


ラルフは上に向かって高くジャンプして建物の屋根の上に飛び乗り、そこからブランデンブルクのゲフィオンに魔導銃で銃撃を浴びせる。

「ブランデンブルク侯!もう勝敗は決しました!あなたの部隊は帝都の守備隊に殲滅され、堀の外にいる部隊はアジアからの援軍に駆逐されるでしょう!」


「降伏でもしろと言うのか!?随分と甘いこと言うようになったものだ!」

ラルフの銃撃を避けつつ、ブランデンブルクは壁をよじ登ってラルフの下まで迫り、左手のバスタードソードでラルフの魔導銃を一刀両断して破壊する。

だが、すぐさまラルフもバスタードソードを抜いてブランデンブルクのゲフィオンの左腕を切り落とす。

両者は激しい白兵戦を見せるも、機動力そして馬力共に新型のザフリードの方が優れており、一見ラルフの方が優勢にも思える。

しかし、ブランデンブルクの卓越したパイロット技量は機体性能の差を補って余りある。

「新型まで持ち出してその程度か!?それでは私には勝てんぞ、ヴァレンシュタイン公!」


「ち。このままではマズいな」


ゲフィオンに蹴り飛ばされてザフリードが屋根の上から地面に叩きつけられる。


「貰ったああッ!!」

仰向けに倒れるザフリードを追ってブランデンブルクも屋根から飛び降り、剣の先をザフリードに向けたまま重力に任せて落下する。


「くッ」

今から避けようとしても間に合わない。ここまでか、とラルフは全てを諦めたような表情を浮かべる。

ブランデンブルクも勝利を確信したその時、側面からゲフィオンの胴体を銃弾が貫いた。その衝撃で姿勢が崩れてザフリードのすぐ横に倒れた。

「な、何だ!?」


それはヴァレンシュタイン騎士団の精鋭部隊の1機が放った銃弾だった。

「閣下、ご無事ですか?」


「ヴァレンシュタイン公を援護しろ!続け!」


新手を確認したブランデンブルクは、留めを刺せなかったことを悔やみつつもすぐに起き上がってその場から姿を消す。

一方ラルフは負けたことに意気消沈しているのか、師を免れたことに安堵したのか、倒れたままそこから動こうとしない。部下達が無線機で交信を試みるが、まったく反応がないので皆、ラルフが意識を失っているか、機体の損傷で身動きが取れないと思って一旦数機がかりでザフリードごと後方へ引っ張っていくことにした。



その頃、水堀の外側にいるラオジッツは、城壁の守備隊が後退したのを確認して水上艇を使って地道にガーディアン部隊を帝都に進軍させるよう指示を出していた。

「少しでも構わんから、戦力を侯爵閣下の下へ送り届けるのだ!この戦いは我等の負けだ。何としても閣下を連れ戻し、何処かへ落ち延びる!」


「で、ですが、あのブランデンブルク侯が退いてくれるでしょうか?」


「おそらくは難しいだろう。しかし、このままみすみすあのお方を死なせてはならん!」

ラオジッツは部隊を帝都に送りつつ、自分はブランデンブルクが戻ってきた時にすぐに撤退できるよう用意を進めている。本当なら自ら彼の下へ行きたかったのだが、味方が敵に寝返ったりしないように睨みを利かせておかねばならなかったのでやむを得ずこの場に残っていた。


だが、ラオジッツの願いは無残にも打ち砕かれることになる。この後すぐ、ブランデンブルクは残存部隊を纏め上げて敵陣突破を図るも、クールラントの布いた隙の無い強靭な布陣を突破するのには戦力が少な過ぎた。ブランデンブルクは銃弾の雨に晒されて機体を蜂の巣にされ戦死した。

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