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狐将軍ロンメル

ロンメルはラルフよりグレートブリテン島の南西に位置するウェールズ地方の侵攻司令官を任された。

ウェールズはブリタニア本土の魔導石鉱山と工業地帯が集中しており、ブリタニア経済に重要な役割を果たしていた。ここを攻略できればブリタニアの経済に大打撃が与えられ、ブリタニアの継戦能力は低下していくだろう。

ロンメル軍団はウェールズ地方最大の都市カーディフに向けて進軍した。しかし、カーディフは城壁によって守られ、鉄壁と言うほどではないものの強固な防御力を有し、ブリタニア軍はウェールズ中の戦力7個師団を集結させていた。

だが、ロンメル軍団は2個師団で構成され、ラルフお抱えのイタリア軍事工廠で開発された新型ガーディアン・デリングにより編成されている。このデリングは機動力重視の設計で、ゲフィオンに比べると同時間で2倍の距離を移動でき、格闘戦の際にも俊敏さでゲフィオンを凌駕している。その高速性能から開発当初はゲフィオンに比べて操縦性が劣る、動かしづらいという意見が相次ぎ、正式採用が見送られ続けてきたが、ガリア防衛線の直前にようやく実戦投入が叶った。

そして、今回ロンメルはデリングの快速を活かして一気にブリストルを制圧。さらに夜の内にブリタニアから奪った艦艇で海からカーディフを夜襲した。内陸部から攻めてくると考え、しかも攻撃は明日明後日と思っていたブリタニア軍は完全に後手に回った。城壁の中に侵攻したロンメル軍団は夜の闇に隠れながら縦横無尽に暴れ回ることで大軍が攻めてきたと敵に錯覚させ戦意を奪い勝利を収めた。ロンメルは約6個師団分の兵とガーディアンを捕虜にする事に成功し、この鮮やかな勝利はロンメル軍団の士気をおおいに高めた。




宝暦1937年12月20日。

ロンメルはその足を止めることはなく、カーディフの周辺に散っていったブリタニアの残存戦力の掃討をしつつ占領地域を拡大していた。そして、次の戦略目標をウェールズ南部の都市スウォンジーに定めた。この地はウェールズではカーディフに次ぐ人口第2位の都市で、軍艦造船所などブリタニアの重工業の拠点の1つとして発展していた。

ロンメルは幕僚達を軍団司令部のあるカーディフに集めて作戦会議を開いた。

「知っての通り。ウェールズにおける敵の主要戦力は諸君等の働きにより、今は我が軍の捕虜だ。しかし、敵軍が一掃されたわけではない。今後も敵の激しい抵抗があるだろう。そこで、部隊をこのように移動させようと思う」

作戦区域の地図に、ロンメルはチェスの駒を置いてこれを自軍の部隊に見立てて幕僚達に説明をしている。チェスの駒を使って作戦を考えたりするのは、元々はラルフの癖だ。いつの間にやらロンメルにも浸透していたらしい。

「いずれアイルランドからの援軍や大西洋のネルソンも来るだろう。その前に我々は己の足場を固めねばならない。皆も兵達も連戦続きで疲れているとは思うが、ここは踏ん張ってくれ」


幕僚達は一斉に「ヤー,マイン・ヘル!」と声を揃えて返事をした。ロンメルの幕僚は皆、ロンメルと同じく平民出身で優秀な者達だが、身分の低さが原因で出世ができずにいた。そんな時、ラルフのおかげで将軍となったロンメルに出会い、幕僚へと引き立てられたのだ。それだけに幕僚達のロンメルやラルフへの忠誠心は高い。

「公爵閣下とロンメル閣下のためとあらば、この程度どうということはありません!」


「ブリタニア人如き、ヴァレンシュタイン公の足元に跪かせてやりましょう!」




ヴァレンシュタイン騎士団オルデンがグレートブリテン島で占領地域を広げている中、ブリタニアの英雄ネルソン提督は指揮下のブリタニア艦隊と共に北アメリカ大陸セントジョン軍港に身を寄せていた。

ネルソンはすぐにも本土の援軍に駆け付けたかったが、ヴァルキュリア海軍大西洋艦隊と地中海艦隊がその邪魔をする。装甲艦で構成されたこの2つの艦隊を突破して帰国するのは現状不可能である。アメリカ大西洋艦隊も再建にはまだまだ時間がかかるため、独力で何とかするしかない。


ネルソンが何か策を旗艦の自室で考えていると、アメリカ海軍大西洋艦隊司令官ミッチャー提督が現れた。ネルソンとミッチャーは海軍学校の同級生である。

「アメリカ海軍としても、どうにかしたいとは思っているのだが、大西洋艦隊がやられた今はどうすることもできん。太平洋艦隊を大西洋へと呼び寄せる手筈を整えてはいるが、到着にはまだ時間がかかるし、太平洋艦隊の装備は大西洋艦隊に劣る。まともにぶつかってはヴァルキュリアには勝てはしないだろう」


「やはり俺達だけでどうにかするしかないか」

腕を組んで何か方法はないかと考えるネルソン。


「流石のお前でも、相手が多過ぎる!地中海艦隊、大西洋艦隊、北海艦隊、バルト海艦隊、これを全て相手取るのは不可能だ!」

せめて太平洋艦隊が来るまで待つようにミッチャーは言うが、ネルソンはそれでは間に合わないと答える。敵将がヴァレンシュタイン公ならば、このままでは本土もそう長くは持たないだろう。太平洋艦隊の来援を待っている間はないのだ。

「それに勝算がまるでないわけじゃないぞ。これ等の4つの艦隊は一緒に行動しているわけではなく、広域に展開している。それを個々に各個撃破していければ」


「相手は装甲艦だ。そう簡単にはいかんぞ」

ミッチャーもガリアで戦う数十万のアメリカ兵を救うために戦いたいとは思っているが、先の戦いでヴァルキュリアの装甲艦の恐怖を刷り込まれた彼は消極的な姿勢でいた。


「分かっている。だが、ヴァルキュリアから祖国を守る為には俺がやらねばならないんだ」


「・・・分かった。俺も残存艦や老朽艦をかき集めて形だけでも艦隊を作ってみる。役に立てるとは思えんが、無いよりは良いだろう」


「面倒をかけてすまん」


「海軍学校時代からの仲だろ。気にするな」




ネルソンとミッチャーは迅速に反攻作戦の準備に取り掛かる。しかし、その間にもヴァレンシュタイン騎士団オルデンのブリタニア本土侵攻は続いている。

宝暦1937年12月23日にはロンメルはウェールズの半分を占領するに至っていた。

「このペースなら後2日でウェールズは手に入るでしょう」


「2日後はクリスマスですな」


幕僚の1人がそう言うとロンメルは小さく笑いながら、では公爵閣下にウェールズをクリスマスプレゼントとして贈るとしようと、言った。

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