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魔導戦記ヴァルキュリア  作者: ケントゥリオン
知恵伊豆の一手
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TPMA結成

宝暦1937年10月15日。

日本ヒノモト、大唐帝国、アメリカ連邦、オセアニア王国の4ヶ国を主軸に、太平洋上に存在する他7ヶ国、計11ヶ国による環太平洋軍事同盟(通称TPMA)の発足式がハワイ王国王都ホノルルにて行なわれた。

この事は政綱によって大々的に世界中へと宣伝され、その日の内に帝都コンスタンティノープルに伝わった。

帝国宰相ジグマリンゲン侯爵は、これを知るとすぐに皇帝フリードリヒ2世に謁見した。

ヴァルハラ宮殿・玉座の間へ通され、ジグマリンゲンは早速本題に入った。

「TPMAへの対処は急がねばなりません。オセアニアが敵側に寝返り、アメリカと日本で軍事同盟を結成したとなるとヴァルキュリアにとって最大の脅威となりましょう」

明らかにジグマリンゲンはいつになく焦っている。


「参謀本部にはもう対TPMA戦の作戦案を纏めさせている。そう焦るな」

フリードリヒ2世は焦ることなくいつも通り堂々と玉座に座っている。

「それと、これは既に参謀本部に命じたことだが、南米遠征軍は全て撤退させる」


「御意」

南米戦線の撤収。それに対してジグマリンゲンは驚かなかった。いずれ近い内にそうなるだろうと思っていたからだ。

さらに、この撤収に付随して、フリードリヒ2世が立案していたブリタニア本土侵攻作戦も延期を余儀なくなれた。

「それで、ブランデンブルク侯には帰還後はどのような処置を取られるおつもりですか?」


「・・・北アフリカ戦線への転戦だ」

これは一種の左遷人事であった。近年のヴァルキュリアでは北アフリカ戦線への関心が薄く、連敗続きの将軍の左遷先となり果てていた。

そのため、北アフリカ戦線の将軍達はやる気が低く、戦局の停滞が加速しているのが現状だ。

ブランデンブルクは、表向きはTPMA誕生で勢い付くかもしれないアフリカ同盟への備えという名目で後日、転戦命令が下る事になる。


「あと、ヴァレンシュタイン公爵も帝都へ帰還させようと思う。太平洋進出が困難になった今、あやつには対アメリカ戦に備えて大西洋沿岸の防衛の指揮を執ってもらいたい」


「私も同意見です。では、極東方面軍に命じて唐へ攻め込みますか?」


「それはカレンベルク侯の判断に任せる。それよりも今はアメリカだ」

フリードリヒ2世が一番警戒しているのはアメリカのようである。




南米にて劣勢を覆そうと日々奮戦するブランデンブルクの下にフリードリヒ2世の勅命が届いた。

その内容に、ブランデンブルクだけでなく幕僚一同が落胆とした。誰もがいつか来るだろうと思ってはいたが、いざ来ると何とも言えない気持ちが皆の心に広がった。

沈黙の空気が続く中、幕僚の1人が痺れを切らせて口を開く。

「TPMAが誕生した以上、仕方ありますまい」


それを聞いたブランデンブルクの瞳には怒りの感情が宿り、全てを圧するかのような迫力を幕僚達は全身で感じた。

「貴様は、敗北を認めると言うのか!ヴァルキュリアに本来、敗北は許されんのだぞッ!」


「い、いえ、決してそのような意味では、」


「閣下、どうか落ち着いて下さい。今は一刻も早く陛下の御命令を実行なされるべきです」


時間が経てば経つほど南米におけるアメリカ軍の影響力は増大していき、南米からの撤退は困難になるだろう。いや、正確には今でも十分に困難な状態にある。

ブランデンブルクもそれは分かり切っていることだ。アメリカ軍に気付かれないよう撤退の用意を慎重かつ迅速に始める。


ブランデンブルクは、南米占領地域の政策担当を務める平和皇女ことヴァルキュリア第2皇女エリーザベト・カロリーネ・フォン・ヴァルキュリアの下を訪れ、南米からの撤収の件を告げた。

エリーザベトは驚く様子もなく、分かりました、と冷静に答えた。

「これからはオセアニア軍の上陸作戦も想定されますので、まずは皇女殿下だけでも先に帝都へ帰還できるよう艦船を揃えております」


「私1人だけこの地で戦う兵士達を置き去りにして、さっさと逃げろと言われるのですか!?」


「殿下にもしもの事があれば、私は皇帝陛下に申し訳が立ちません!」


「しかし・・・」

エリーザベトは1人逃げ出すという不名誉な行動が嫌なわけではない。遠く海を渡って南米の地にて苦楽を共にする兵達、自分達を信頼してくれている南米の現地住民の期待を裏切るような気がして嫌なのだ。

南米へ行くよう父であるフリードリヒ2世から命じられた時から、南米遠征軍の皆とは一蓮托生の覚悟でいる。

「皆を裏切るような真似はできません!」


「この撤退は皇帝陛下の勅命なのですぞ。陛下も皇女殿下の無事を心から祈っているはずです」

ブランデンブルクにしても第2皇女を死なせてしまうような失態をしでかせば、もう選帝侯の立場が無くなってしまう。こうなった以上、エリーザベトにはさっさと本国へ帰ってもらいたいという気持ちは強かった。

ブランデンブルクの説得の末、エリーザベトはどうにか彼の要求を受け入れた。

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