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マナウスの戦い

宝暦1937年10月3日。

ヴァルハラ宮殿・玉座の間には、落ち着かない様子で玉座の前をグルグルと歩き続けるフリードリヒ2世の姿があった。

彼は今、南米戦線の事について考えていた。大西洋全域の制海権はアメリカ海軍が握っている。この前のジブラルタル海戦の敗北から海軍には厭戦気分が蔓延していた。

しかし、このままでは南米への補給が滞り、作戦行動に支障が出てしまう。

「南米征服。そのためには大西洋の制海権が必須。これをどうやって手に入れるか。おのれぇ!アメリカめッ」

眉間に皺を寄せて怒りを露にするフリードリヒ2世に対して、傍に控えていた帝国宰相・ジグマリンゲン侯爵が近付く。

「皇帝陛下、先程、ゲルマニアのベルリン教皇庁より南米からの撤収を条件にアメリカへの停戦協定を結んではどうかとの教皇聖下よりのお言葉が届きました」


「何だとッ!」


「いざとなれば、自分が仲介人になっても良いと話しております。この手の事は宗教家の方が都合がよかろうと」


「教皇め。余の頭を押さえつけるつもりだな。だが、そうはいかんぞ!」

教皇への対抗心も相俟って、フリードリヒ2世の南米征服への闘志はさらに燃え上がる。

「インドシナ属州のヴァレンシュタイン公に連絡しろ。オセアニア王国に南米戦線の支援を要請しろ、と」

フリードリヒ2世は大西洋が駄目なら太平洋から南米への補給ラインを構築しようと考えたのだ。ヴァルキュリアとオセアニアは良好な関係にあり、オセアニアにとってヴァルキュリアは最大の貿易相手でもある。穀物生産量世界一を誇るオセアニアに物資の支援を頼むのは決して無理な話ではない。

オセアニアにしても、輸出量を一気に伸ばせるのでかなりの国益が確保できる。

ジグマリンゲン侯爵はすぐさまラルフにフリードリヒ2世の命令を送った。

しかし、その命令がラルフに届くよりも前に猛将ブランデンブルクは動いていた。




宝暦1937年10月5日。

ブランデンブルクは南米遠征軍の物資が底をついてしまう前に一気に南米を制覇してしまおうとしていた。彼は動かせる戦力を全て南米北部の交通の要所・マナウスへと向けて進軍する。「緑の魔界」と恐れられるジャングルの中を進み続けるヴァルキュリア軍はブランデンブルクの指導力の下、統制の取れた動きで進んでいる。

「全軍に通達!斥候の調べでは、敵はこちらの動きに気付いていない!ジャングルを抜けたら一気に市街へと突入しろ!この町を手に入れれば、南米制覇も目前だ!」

無線機から兵士達を鼓舞するブランデンブルクの眼前には、ジャングルの向こうに町が広がっている。

「町が見えたぞ!全軍、進めえ!!」

兵達が雄叫びをあげながらゲフィオンが一気に駆け足になる。ジャングルを抜けて町へと一目散に進軍する。ブランデンブルクの言った通り、アメリカ軍はヴァルキュリア軍の侵攻など予想もしていなかったらしく、ガーディアン1機どころか兵士1人の姿も見えない。


数千機のゲフィオンが町へと突入する。

町には、軍隊どころか住民一人の姿も見えなかった。

ブランデンブルクのこの異様な町の様子に疑問を抱くが、今更後にも退けない。

町の全域にヴァルキュリア軍が展開を終えようとした頃、町の民家が次々と爆発し出した。アメリカ軍が設置した時限式の爆弾だろう。爆発にゲフィオンが巻き込れ、町の各地で部隊が混乱を起こした。

「うろたえるな!全軍、一度町から出るんだ!」

すぐに町からの退去を命じるブランデンブルク。


だが、それを妨害するかのように町の周囲にあるジャングルからアメリカ軍のセイバーの大部隊が出現した。セイバー隊は町の主だった出入り口を襲撃してヴァルキュリア軍の逃げ口を塞ぎにかかる。

部隊が町の全域に展開していただけにブランデンブルクも各部隊の統制が執りづらくなっており、アメリカ軍への対応が遅れてしまった。

ブランデンブルクも直営部隊を持って、アメリカの一部隊と交戦している。

流石にヴァルキュリアの双壁と評されるブランデンブルクの直営部隊というだけの事はあり、他の部隊と違って一糸乱れる事の無い統制の取れた動きでセイバー隊に応戦していた。しかも、多数の敵に対して優勢に戦いを繰り広げていた。

「このまま押し切れ!アメリカ軍に好きになせるなッ!!」

ブランデンブルクのゲフィオンを筆頭に勇猛果敢な戦いぶりを見せるヴァルキュリア軍。物量にものを言わせて包囲網を形成していくアメリカ軍。

ヴァルキュリア軍の精鋭部隊とも言えるブランデンブルクの軍団は、歴戦の勇士揃いである。その戦いぶりからもそれは見てとれる。しかし、アメリカ軍の兵力は尋常なものではなく、最初はヴァルキュリア軍が優位に立っていたが、徐々にアメリカ軍の包囲網の前に撃たれる兵が増えていった。

流石のブランデンブルクもこのまま戦闘を継続しようとするようなただの猪武者ではない。

「全軍!撤退だ!撤退!」

この撤退命令はすぐにヴァルキュリア軍の全部隊に通達されたが、敵の包囲下からの撤退は容易な事ではない。元々、重装甲で防御力の高いセイバーの大軍が戦列を整えて包囲網を布こうとしているのだ。そう簡単に突破できるはずがない。

ブランデンブルクの直営部隊ですらセイバーの銃弾の前に次々と倒れていく。

「怯むなッ!アメリカ軍如きの陣など食い破れ!!」

ブランデンブルクのゲフィオンは部隊の先頭に立ってアメリカ軍の包囲網の中へと飛び込む。


ヴァルキュリア軍は、今回の参加兵力の半分を失うという大損害を被りながらも命からがら包囲網を突破し、アメリカ軍の追撃も振り切る事に成功した。

マナウスの戦いと後に呼ばれる事になるこの戦いは、南米戦線におけるヴァルキュリア軍の初の敗北となり、戦局を覆される大きな転換点となるのだった。

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