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ジブラルタル海戦

ミッチャー提督率いるアメリカ艦隊にもジブラルタル要塞からヴァルキュリア艦隊が出撃したとの報告が届いた。ミッチャーはジブラルタルなどヴァルキュリアの主要な軍港に監視の手を伸ばしており、大西洋におけるヴァルキュリア海軍の動きが手に取るように把握できた。

「何とか敵を引きずり出せたか。だが、問題はここからだ」

一歩間違えば、作戦の全てが瓦解してしまう。ミッチャーは改めて気を引き締め直す。


一方その頃、ジブラルタルから出撃したヴァルキュリア艦隊はフィニステレ岬に近海を航行していた。

「アメリカの艦隊はまだ見つからんのか?」


「発見できません」


「この辺りにいるはずだ。よく探せ!」

ジブラルタル要塞駐留艦隊司令官のルーゲ中将は必死だった。これまで大西洋では大規模な海戦がほとんどなく武勲を立てる機会がなかったため、ルーゲはこの好機を逃すまいとしている。

徐々に焦りと苛立ちが募っていく中、見張りから敵艦隊発見、の報が入った。

「全艦戦闘配備!針路変更急げ!」

ヴァルキュリア艦隊はアメリカ艦隊を殲滅すべく最大戦速で移動を始める。

だが、対するアメリカ艦隊がアメリカ本土に向かって撤収し出した。弱腰のアメリカ艦隊にルーゲは追撃を命じた。

速力で勝るヴァルキュリア艦隊が徐々に距離を詰めていき、大砲の有効射程に敵を捕えるまで後わずかという時、ジブラルタル要塞から緊急通信が届いた。

「要塞が敵艦隊の襲撃を受けたとの事です!艦隊は至急要塞に戻るよう要請してきています!」


「馬鹿な!では、あの艦隊は何なのだ!?」


ルーゲの疑問はすぐに解決した。見張り役の1人がアメリカ艦隊をよくよく観察した結果、艦隊を構成する戦艦の大半が戦艦ではなく、民間船を偽装して作った偽装艦である事が分かった。

ルーゲはアメリカ軍の陽動作戦にまんまと誘き出されてしまったのだ。

「おのれアメリカ人め!全艦撤収!急ぎ要塞に戻るのだ!」

艦隊が反転して要塞へと戻ろうとする中、アメリカ艦隊の戦艦部隊が帰らせないと言わんばかりに砲撃を浴びせてきた。敵が退けば攻撃し、敵が攻めてくれば退く。そんな戦い方を繰り返すアメリカ艦隊にルーゲは完全に身動きを封じられてしまった。

要塞を守るためにも本格的な海戦をしている暇は無い。かと言ってアメリカ艦隊を無視して要塞へ向かえば敵の攻撃を一方的に浴びてしまう。



その頃、ジブラルタル要塞ではミッチャーのアメリカ艦隊本隊が砲弾を雨を降らせていた。

要塞に配備されている大砲群や停泊中だった戦艦の抵抗を駆逐したアメリカ艦隊の次の標準は港湾部である。

「準備ができた艦から砲撃開始だ。要塞港湾部は何としても潰せよ」

ジブラルタル要塞の港湾部さえ使用不能にできれば大西洋でのヴァルキュリア海軍の活動はかなり抑えられる。その間に欧州と南米の連絡線を分断でき、大西洋の制海権も確保する時間が稼げるだろう。

アメリカ艦隊が次々と港湾部に向けて砲撃を始めるが、これを防ぐ手立てがもう要塞側にはなかった。一方的に攻撃を繰り出すアメリカ艦隊は確実に戦果をあげる。

「敵艦隊が戻ってきました!」

それを聞いたミッチャーはニヤリと笑みを浮かべる。

「ちょうど良いタイミングだ。全艦、艦隊戦用意!針路変更!敵艦隊を迎え撃て!」


艦隊戦の用意を始めるアメリカ艦隊に先制攻撃を仕掛けようとするヴァルキュリア艦隊。だが、その背後から先程振り切ったアメリカ海軍の陽動艦隊が後を追って迫っていた。

これでヴァルキュリア艦隊は前後から挟みこまれる形になってしまう。

「構わず進め!要塞へ撤収するのだ!」

そう指示を出すルーゲ。ヴァルキュリア艦隊はアメリカ艦隊本隊と反航戦を始める。

正々堂々とした大海戦。間断なく撃ち続けられる砲弾の撃ち合いに両軍の戦艦は次々と海の藻屑と化していく激しさ。

だが、あと一歩でルーゲの乗艦が敵の砲撃から抜け出せるという所で、アメリカ艦隊の最後尾の部隊が急遽針路を変更し出し、ヴァルキュリア艦隊の頭を抑えようと動き出した。

「敵が艦隊正面に展開!」


「砲撃来ます!」


「針路を2時方向へ転進!砲撃しつつ敵別働隊を迂回しろ!」

どうにか敵の攻撃を掻い潜ろうと試みるが、アメリカ艦隊の砲弾がルーゲの乗艦に命中した。致命的な被害はなかったが、艦の速度がやや低下してしまう。これを境にアメリカ艦隊の砲撃が集中し、何発もの直撃を受けて損害を蓄積させていく。

「艦内に浸水!」


「消火急げ。弾薬庫に引火しないよう気を付けろ」


「艦の速度がさらに低下しています!」

その時、艦内で激しい爆発音が鳴り響くと共に凄まじい振動が艦を揺らす。

弾薬庫に引火してしまったようだ。ルーゲは退艦命令を出すが、艦を脱出する前に炎に逃げ道を塞がれて逃げられずに艦と運命を共にしてしまう。

ジブラルタル駐留艦隊司令官ルーゲ中将戦死の報はすぐさまルーゲの乗艦の後ろに付いていた二番艦が確認し、全ての艦に通達された。この報で動揺したヴァルキュリア艦隊はアメリカ艦隊の砲撃の前に7割の戦力を失うという大損害を被りながらもジブラルタル海峡へと逃げ込んだ。


ジブラルタル海戦はジブラルタルの軍港機能の喪失、駐留艦隊の壊滅という結果でヴァルキュリア軍の敗北に終わった。

これを境にフリードリヒ2世は大西洋での海上活動を消極化する戦略を打ち出して海軍力の温存を図る事になる。だが、これは南米で戦うブランデンブルクの遠征軍への補給が滞る事も意味している。

陸戦ではほぼ無敵を誇っているヴァルキュリア南米戦線も海戦がきっかけで徐々に追い詰められようとしている。

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