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三話「まさかの」

 その時、王女は急いで執務室にいる王の元へ駆けつけていた。ドアをぶち破る勢いで開けると、王はびっくりして王女と顔を合わせた。すると、王女の顔は蒼白で嫌な予感を王は感じたのだった。


「嗚呼、わたくしとしたことが、なんてことをしてしまったのかしら!!」

「む、どうしたんだ? 愛しの妻よ。何をそんなに慌てている」


「ローズは、ローーズは! ネズミ大嫌いなのよ!!」


「それは大変だな……」

「何よ!娘の一大事にずいぶんと他人事のようね」

「ねずみくらい慣れるだろう、きっと平気だ」


「そうかしら、わたくしは心配で心配でたまらないわ、まだ、あのネズミさんとローズが出会ってなければいいんだけれど……」

「明日の朝、我が双子と彼を面会させようじゃないか、な?」

「ええ、そうね……」


 王に宥められて、王女はおとなしくソファに腰を下ろした。


* * *


「チュチュ~……」(なんてことだ)

 ネズミは悩んでいた。


 目の前には、自分の倍の大きさの女が横たわっている。さっきから、顔をぺちぺち叩いているのだが、全く起きる気配がない。


「チュ! チュチュー!」(起きろ!起きろよ!!)

 この女は誰なんだろうか、しかも、ここはどこだ!?

たしか、俺は爺やの袋で寝てたはずなんだが……。目を覚ませば知らない兵士につかまってるわ、逃げ出して女子に見つかれば気絶するし、もう意味がわからん。

 とにかく、ここから一刻も早く逃げないと。


 急いで扉のほうに向かって走ろうとした時、声が聞こえた。


「おーーい、ローズ?」

 誰かが、こっちに向かって歩いてくる!? 

急げ、あと少しでこの部屋から出れる!! あと少しだ!!!


 しかし、逃げ出そうにも、小さすぎる手足では間に合わなかった。


「チュッ!?」(うぇ!?)

開け放たれた扉から一人の青年が現れた。しかも、きっちり青年と目が合ってしまった。


「え? 黒ネズミ?なんでこんなところに」


 そして、青年の目線は先方向へ。倒れている女のほうを見て、駆け寄っていった。

「お、おい。ローズ!大丈夫か?目を覚ませ!」

 ローズと呼ばれた女子はいくら青年に揺すぶられても目を覚まさず、そのうち寝息まで聞こえてきた。青年は安心してローズを担ぐと、近くのソファに横たわらせた。そして、またこちらに向いて近づいてきて、見下すように言った。


「なんで汚いネズミがここにいるの?」


「チュヂューー!、チュチュチュ!」(き、汚いネズミだと!!失礼な!! 俺はラルド=ロゼブリア様だ!)

「……!?」 

 青年は言葉も通じるはずのないネズミの俺を目を見開いて見つめた。


 もしや、こいつ言葉がわかるのか?なんて、淡い考えが一瞬浮かぶ。


 いや、爺やにだって話しかけても通じなかったのだから、この男に俺の言葉が伝わるはずはないだろう。せいぜい、ネズミの鳴き声で返答されて驚いているんだ。それだけでも珍しいもんな。

 あきらめかけた瞬間、青年は口を開いた。


「ラルドっていうのか、へえ」

「チュッ!!?」(ウソだろ)

男は小さく口角を上げて笑った。小動物の感だろうか、俺は嫌な予感がしてこの場から走り去りたかった。


どうも、初対面のこいつには俺の言葉が通じるらしい。

よっちゃんにパス!

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