拠点設営開始
情報公開をして、全プレイヤーにミッションクエスト発生のアナウンスが流れるとその対応は早かった。
先ず、前二回の討伐レイドを率いた『だん☆ちょ~』さんが攻略組メンバーを数人引き連れ十音色堂へ顔を出した。
情報公開のお礼の言葉と共に、前回レイドメンバー全員の参加を取りまとめてやって来てくれた様で是非協力されてくれと伝えにきたのだ。
次にやって来たのは冒険者ギルドの職員と名乗るNPCだった。
今回の仮設キャンプ地の設営に伴い、臨時ギルド窓口を開設する為、同行の許可と施設を造る為の人員と資材の運搬というクエストを請けて貰いたいと言う話だった。
渡りに舟だったので承諾し正式にクエストとして拠点設営を請けおう事なった。
その後場所をギルドに移動して、キャンプ地の選定や資金について等を話し合った結果、場所は草原奥地の森の手前でこの街から歩いて丁度1日(12時間)の場所に、資金は十音色堂とギルドで3:7の割り当てで、但しこの作戦後に宿場町としての開発権利と店舗の優先権利を貰える事に成った。
こちらとしてはまさかの条件だったのであるが…そもそも一時的な拠点のつもりが町を造る話に変わるとは思わなかった。
そこで先行組として地割りや測量の技能を持つ人(主にギルドの用意したNPC)とその護衛として十音色堂メンバーが翌日早朝に出発、第2陣で周辺探索組の一部とレイドメンバーが仮設テント等を持ち職人(NPC&PC混合)を護衛しながら徒歩でお昼前に出発、その後随時資材と職人を十音色堂他の荷馬車持ち部隊がピストン輸送と云う作戦で決定した。
翌早朝、十音色堂の主要メンバー全員で先行組として東の草原奥地へ出発する。
途中ギルド前にて技師要員三名とギルド職員一名を乗せて極力戦闘は避けて馬車をひたすら走らせお昼過ぎには予定地に到着した。
街からは大体30km前後らしい、重装備の戦士が休憩を取りながら歩くと大体10時間かかるのがこの辺りに成るとの事、ボス戦闘の起こる場所迄歩いて一時間半~二時間くらいの場所だ。
ただ今回のクエストに当たり十音色堂では秘密兵器を投入している。
其れは『インスタントエリアポーター』である。
此れはクランメンバーに限りホームに設定したポーター同士を通行出来るというシステムアイテムだ。
本来転移ポータルは次のエリアの『街』に行かないと無いのだが…此れはクランホーム間限定&クランメンバー限定という簡易ポータルなのでギルドにて販売されていたのを、50万fcという大金と引換に購入してきたのだ。
此れは十音色堂がいち早く店舗兼ホームを手に入れ、安定した品質の商品を提供出来ていた為にとれた強行手段に等しい。
何せクランホームを持つプレイヤーや店舗を持つ職人プレイヤーは現在の所2つだけで、その残りの一つは服飾専門店舗『けもらんどりー』と云う店である。
名前から想像できると思うが、『けもらんどりー』は主に獣ミミ尻尾ファッション&獣人用服飾装備専門店である。
因みにこの店のオーナークランは『もふもふ団』と云う獣人&コボルトプレイヤーのみの結構有名なクランで、モットーは『獣ミミ獣尻尾と、もふもふが在れば勝つる!』だそうだ。
今回のミッションクエストにおいてはレイドメンバーに参加予定だ。
まぁつまりうち(十音色堂)ほど稼いでいるプレイヤーもクランも未だ居ないという事だね。
そしてそれだけの大金を使用してまでこのポータルを購入した事である裏技が発動する。
其れは『荷物を積んでいない馬車はアイテム扱い』と云うシステムの盲点だ。
始まりの街から仮設キャンプ場迄は荷物や人員を満載して馬車で移動する→全ての荷物を降ろしポータルで始まりの街の十音色堂へ帰還→再びキャンプへ馬車で出発のエンドレス輸送が出来るのだ!
この恩恵は大きくかなり安全に非戦闘系プレイヤーやNPCを移動させる事が出来る予定だ。




