わんおぅの冒険4
ズベシャッ!
「…なぁ、もういいか?」
「マダダッ!もう一度だ!こんな…私が負けるはずないんだ!」
このやり取りも既に何度目だろうか?
しつこく、狩りの最中もついてきて勝負を挑んでくる『ボス‐カイゼル‐フォン‐ライルハルト(長いから以降ボスチワワ)』がいい加減うっとおしくなってきた俺は街に戻りPvP(プレイヤーvsプレイヤー)をボスチワワと行う事にした。
そして何度目かのPvPを終了して時間を確認すると残り時間(ピナとの待ち合わせ)迄後10分程、何度倒しても負けを認めず繰り返し挑んでくる姿は、さながらホラー映画に出てくるゾンビの如し―――だが此方にも都合というものがある。
「ハァ、なぁ勝っても負けても次でラストだかんな?」
「望むところだ!次こそ勝つ!!」
あーうん頑張ってな…
ボスチワワから送られてきたPvPの申請承認をyesで承認する。
二人の間には開始迄のカウントダウンがカウント10から始まり残りカウント3迄両者共に身動きがとれなくなる。
この時、決闘場となる場所には半径10m程の円形の特殊なフィールドが展開されてプレイヤーが転送される。
因みにこのフィールドが発生している間は周辺20m内のプレイヤーにPvPを行なっている者が居る事と名前が通知されていて好きに観戦する事が可能になっている。
このシステムのせいで深夜にも関わらず観戦者の数が徐々に増え、現在ざっと観た感じでは300名は越えている様だ。
(はぁ…目立ちたく無かったのに…)
コレではきっと掲示板のニュースになってしまうだろう、只でさえミトの方では『ロリパーティー』と云う不本意な目立ち方をしている様なのにまた悩みの種が出来そうだ。
そんな事を考えているとカウントが3になりアクションが可能になったが…俺はこれ迄同様右足を半歩前に出し、穂先が右上に成るように両手で短槍を構える。
両手は丁度槍の柄を三等分する位置に添えており相手の攻撃に合わせ自在に槍の柄を操れる防御に秀でた構えだ。
重心を半歩前に出した右足に乗せており相手が正面から近接だけしか攻撃してこないなら、これで上下左右どの方向から攻撃して来ても円の動きでいなす事が出来る。
ボスチワワは自ら決闘を申し込んで来るだけあって恐らくアビリティやスキルのレベル的には俺より一段か二段は上だと思うのだが…短絡的な性格とリアルスキル的な物がネックに成っていて俺に全敗している。
ボスチワワの装備は刺突剣(多分レイピア)にバックラー装備の軽戦士タイプでステータスはStr-Spdタイプ、プレイスタイルは突っ込んで来て連続突きからバックステップの繰り返し。
今回も開幕早々に突っ込んで来たので、連続突きをいなしながらバックステップの瞬間に構えているバックラーへ敢えて石突きを突き込んだ。
俺の目論見通りバックステップの最中にステップと同じ方向へ力を加えられた為、着地の瞬間バランスを崩しワタワタと両手を振り回して何とか立っていられたって感じだ。
(「……わんわん…何してるの?…」)
―と、丁度其処へ個人チャットで声が掛かった。
(「ああ~ピナ来ちゃったか、ちょっと絡まれてな?直ぐに終わるからちょっとだけ待ってて」)
(「…んっ…判った…」)
「悪いな、お姫様がお待ちだからもう終わらせて貰うぞ?」
「なにw…「ドガッ!」
「クッ!まだこんn…「バシッ!」
you win
「ヨシ終了!」
俺はお姫様が機嫌悪くして無ければ良いなぁなんて考えながら足早にその場を離れた。




