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事の顛末と改める認識


「すまないね、助かったよ」

 俺達が保護した『ママ』と少女に呼ばれていた獣人族の女性――ニキさんと言うらしい結構有名な人なんだそうだ――は俺達へ礼と共に事情を語ってくれた。

 曰く、薬草等を求めに何時ものように冒険者を雇って採取に来ていた事。

 今日は一度も獣に襲われる事も無く結構順調に採取は進んでいた事。

 気の緩みをつかれ頭上から大飛蜘蛛の奇襲を受けてしまいニキさんがいきなり毒を受けてしまった事。

 護衛の冒険者達には大飛蜘蛛は荷が重く、毒消しを行う間もなく冒険者は逃げ出してしまった事。

 蜘蛛はニキさんとニンフォちゃん―ニキさんを『ママ』と呼んでいるヒューマンと思われる少女―の二人で何とか討伐する事が出来たが毒がまわりニキさんが意識を失ってしまった事。

 実はニンフォちゃんは成長する特別なホムンクルスでニキさんの血を引く『娘』である事。

 ただその事情を知られると『錬金協会』による様々な妨害等の恐れがあるのでニキさんが養女として引き取った戦災孤児という形にしてある事。

 なのでそう言った事情は秘密にしておいて欲しい事…当然俺達は他の人には喋らない事を約束した。

 あと助けられた恩を返したいのでギルドと自宅へ共に来てほしいと言われた。

 それについてもこの二人だけを森に放置するつもり等最初から無かったので全員一致で招待を受ける事にした。


#ポーン♪


 その時、パーティーメンバー全員に何かを知らせるチャイム?が聞こえたのでシステムログを確認するとこんなメッセージが表示されていた。



○緊急フィールドクエスト『錬金術師を救え!』をクリアしました。

○新たな称号『救助者』を獲得しました。

○新たな称号『秘密を共有する者』を獲得しました。

○派生クエスト『ホムンクルスのみる夢』が発生しました。


「うおぉーCクエキターー!!」

 馬鹿が突然騒ぎだす…おい、こらヤメロ!皆が怯えてるじゃないか!

「う~~んこのパ~ティ~に居ると退屈しないね~」

「コレもやっぱりハクアさん補正なんですかね?」

「まぁそうかもな?…おいミツルギ騒ぐのヤメロ!まだ森の中だぞ!」

「あ、ああっ悪ぃ」

 しかし一度上がったテンションは中々落ち着かないらしくニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべている。


「あ、あの…」

「ああ済まないなチョット良いことがあったらしくて興奮してるみたいなんだ」

「は、はぁ…」

「気持ち悪いかも知れないが…害は無いんで放置してやってくれ」

「えっと…判りました」


 ところで(シー)クエとはなんぞ?

 わからなかったのでアスに訊ねてみると…

「チェーンクエスト、略してCクエだよ。何か特別な行動や選択がトリガーになって始まる連続したクエストの事」

「ふ~ん…成る程な…でもそれってクエストが連続してるだけだろ?何でミツルギはあんなに興奮してるんだ?」

「それはね、Cクエの遭遇率と報酬にあるんだよ」

「…?」

「Cクエはね何時発生するか、トリガーは何なのか判らなくて狙って遭遇出来ない分報酬が珍しい物だったり、スキルptだったり、システムの拡張だったりってするの」

「ほぉ~それは凄そうな」

「うん…多分今回のトリガーはハクアさんとピナさんがしてた薬草採取かミクスさんがしてた木材採取を南の森でしたのが条件の一つで、ミト兄がニンフォちゃんの助けを求める声に気付けたのが幸運だったからハクアさんのLuk補正が掛かってたんじゃないかな?」

 ふむ、確かにこんなタイミングで微かな声が聞こえたのはタイミング良すぎるよな…

「なんにせよ二人共助けられて良かったよね」

「ああ、確かNPCも独自の生活してるんだったっけ?」

「うん、だから助けられ無かった時はこの世界からあの二人は居なくなってたって事だからね…」


 俺はシルミルと両手を繋ぎ歩くニンフォちゃんと其れを慈母の眼差しで見詰めるニキさんを改めて確認する。


 ニンフォちゃんが助けを求める必死な泣き顔。

 ニキさんが意識を取り戻しニンフォちゃんも無事だと知った時の安堵した笑顔。


(うん、NPCとか思えないよな…)


 俺は今まで此処はゲームの世界なのだからどこかプレイヤーとだけ関わって行けば良いと思っていた。

 幸い二人もβテスターがリアルで知り合いなのだ、判らない事は大抵聞けば答えて貰える。

(でも…違うんだよ、このままゲームだからって認識じゃ駄目なんだよ…)


 俺は一人、認識を改めながら皆の後ろをついていった。



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