さて、漸く街の外へ…
sideミト
取りあえず俺のアビリティ『無属性』については一旦保留という事に落ち着いたらしい…ハクアさんに余計な心配を掛けたくないからリアルで問い詰めるとは言われたが…。
訓練所では特に変わった事は無くハクアさん以外が初期装備を一品づつ貰った。
そのまま訓練所で戦闘訓練する事も可能ではあったが、その間ハクアさんを放置するわけにはいかないし、パーティーに経験者が二名いるから特に訓練の必要はないだろうと足りない装備品と消耗品だけ購入してフィールドに繰り出す事にしたのだ。
一応各自が購入した物だけ書き出しておくと。
《アス》
[小盾]ウッドバックル(固定式) 300fc
《シルミル》
[脚甲]レザーレギンス 200fc
《ミツルギ》
[大盾]ヒーターシールド 400fc
[鎧]チェインメイル 500fc
《ミト》
[投槍]ブロンズショートスピア 200fc
《ハクア》
薬草系採取道具一式(スコップ大小、草刈鎌、園芸鋏) 200fc
回収用麻袋×10 20fc×5
最初は初心者用フィールドの一つである東の草原(初心者ソロでも充分戦える場所)でハクアさんの採取を補助しながら単独のアクティブモンスターしか出ないエリアでのみ戦闘する事で特に危険な事態には陥らないだろう事、多分生産職プレイヤーがそろそろ手習い品を放出し始めるという経験者二人の予測の元初期所持金をあまり減らさないで次の装備品購入を少しでも楽にしようという方針になった。
ハクアさんの道具一式は採取時に使用する事で品質を落とさず採取可能になる道具一式と採取後のアイテムを纏めてアイテムボックス内に仕舞う事が出来る(通常アイテムボックス内のスタック数は一品につき最大10個×品数は20品迄、生産職プレイヤーのみ専用の大容量材料ボックス在り)回収用麻袋(採取品[一品のみ]×100個容れる事が可能)を取りあえず10個購入して採取の効率を上げる事にした。
…で、フィールドに出たわけだが…
「「人いっぱいだねぇ~」」
「ああ、幸いというか採取してる人は殆ど居ないが…多いな」
「初日だしな…仕方がないっちゃ仕方がないんだが…観える範囲内にはソロばっかだな」
「そうだな…ハクアさん取りあえず邪魔にならない様に薬草採取しながら少し奥迄行こうか?」
「は、ハイ!お願いします」
で、最初はテクテクと一丸となって歩いては採取歩いては採取として居たのだが…
「ステップ!」
「ステップ!」
「「ステップ♪」」
あまりにも敵と遭遇出来ないがため前衛組が回避のトレーニングを始めてしまい…
「ぁ、袋が一ついっぱいになりました…です」
「コッチも(投擲用に)拾ってた石がそろそろボックスいっぱいになるな…」
周りに競合相手が居ないため手付かずに成っていた薬草の群生地で採取開始から一時間もしない内にハクアさんの麻袋一つ目がいっぱいになって、俺のアイテムボックスにも石(未鑑定品)が約80個程貯まっていた。
「どうする?場所を変えるか?」
「んー…ハクアさんアビリティLvの成長はどんな感じですか?」
「えっ!…えっとこんな感じです!」
・・・・・・・・・・・
【ネーム】ハクア
【種族】エルフ
【種族Lv】Lv.0
【職業】薬草採取師
【職業Lv】Lv.3
【性別】女
【称号】[運命の女神の祝福を受けし者]
【ステータス】
[HP]26/26
[MP]32/32
[STR]10(+1)
[VIT]12(+1)
[DEX]12(+1)
[SPD]12(+1)
[INT]14(+1)
[MAD]10(+1)
[LUK]10(+30)
【ボーナスpt】0pt
【アビリティ】
〔ラックLv1〕
〔野草識別Lv9〕
〔薬草採取Lv5〕
〔薬草知識Lv2〕
【スキル】
《共通語》《エルフ語》
・・・・・・・・・・・
「流石に救済的なアビリティですね…一時間でLv9って他のアビリティじゃこんなにも上がりませんし…」
「Lv10迄もう一息だし一旦戻りながら途中で採取してけば街に着く頃には上がってるんじゃないか?」
「…そうですね、狩り場も混雑してて獲物が私達にまわってきませんし…」
「この辺りのモンスターはパーティー組んでると瞬殺なんだろ?」
「ええ、ソロでも余程のミスをしなければ安全に狩れる程度のモノしか出ませんからね」
「湧き待ちのソロプレイヤーがこんなに居る状況じゃあ仕方無いな…ちょっと危険だけど北の荒地か西の海岸でレベル上げした方が良いかもしれないな」
現状モンスターと戦闘してるソロプレイヤー1に対して湧き待ちのソロプレイヤーが平均で2名程度居る。
そしてソロプレイヤーが一体のモンスターを狩る間に2名の内1人が座ってHPMPの回復やアイテムの確認、もう1名が次のポップ(湧き)の警戒と暗黙の了解が出来ている様で新規で街から出てくるプレイヤーがモンスターの横取りをしようとすると自然と待機組から注意が入る。
新規組も逆らうと周り全員を敵にまわすと雰囲気で判るのか横取りを謝った上で暗黙のルールに従う者が大半だ。
因みに俺達はパーティーと云う事と、主目的が薬草採取である事、β組の二人が横取りをするつもりが無いことを近くに居るプレイヤーに声掛けしていたので特にトラブルも起こらなかった。
ミツルギが言うには今居る東の草原が出てくるモンスターが一番弱く順に南の森、西の海岸、北の荒地と強い敵が居るらしい。
現在、北の荒地に行って居るプレイヤーは殆どがβテスターのみで構成されたパーティープレイヤーぐらいで恐らくβテスターでもソロプレイヤーは東か南に行っているだろうと予測していた。
此は《N∞W》のHPの上昇が基本的に種族Lv上昇以外に増える事が無く、ゲーム内時間で1日や2日では種族Lvはそう上がるものではないかららしい。
では何故ソロプレイヤーが沢山居るかといえば、序盤はソロの方が金銭的に有利だからである。
始まりの街の宿に一晩泊まると朝食付きで1000fc必要なのだが、東の草原ででるモンスター最弱のラージラット(まんま大きな鼠)一匹の戦利品は通常ドロップがラージラットの皮×1(売値100fc)でレアドロップが魔石片×1(売値300fc)である。
此はモンスターの数分しか入手出来ないのでパーティーを組んで居ると1日の宿代を稼ぐのも結構困難な事になるかららしい。
なので多少湧き待ちがあっても東の草原でソロプレイなら宿代以上の実入りは十分に稼ぐ事が出来るのである程度稼げる能力が身に付く迄は初心者ソロプレイヤーがかなりの割合になるだろうと云う事だった。
「そうだな…じゃあ一旦街に戻って薬草を売ったら南を覗いて混んでたら即座に西って事で」
「「はーい♪」」
「了解」
「わかりました」
「は、はい!お願いします」
結局この後東の草原から街に戻る間には戦闘も起こらず無事に街についてしまった。