表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊大陸紀行  作者: plekios
24/26

煉獄を歩む者

 インベントリに仕舞ってあった使役獣(ペット)の石をタップすると紫色の魔法円が出現、地面から数枚のリングが円柱状に湧き上がり首無し鎧騎士(デュラハン)のシルエットが光って現れる。

フィールドでエリアボスモンスターとして登場するときの名は『煉獄(パーガトリー)歩む者(ウォーカー)

地下魔城を攻略始めのプレイヤーがこぞって捕獲に走った高い物理防御力と耐久力持つ前衛タイプの捕獲可能ボスである。

 紫色の魔法光は属性が【(ゴースト)】で上級=レベル55になると使役者(マスター)の魔力を元に実体化できる。それまでは召喚しても半透明な半物質化状態(アストラル)で戦う。

 アンデットとは少し異なりヒールなど聖魔法をかけてもダメージは受けない、物理戦闘に適して居て魔法による攻撃に対しやや苦手としているが、この辺りのフィールドにこいつを倒せるほどの魔法を使ってくるモンスターは出てこない、したがって安心して盾代わりとして使用できる、気をつけるのは燃費切れくらいだ。


 ゲームではプレイヤーのアバターよりふた回り大きいグラフィックで描かれていたが、こうやってアバター視点で改めて見るとデカイ……


兜が無いので肩までの高さで言えば180cm以上は有る、文字通り壁と言う感じ。今は戦闘時召喚ではないので両足を軽く開いて「待機姿勢」であるが逆手にした剣先を地面に向けて両手で柄を握っている姿は威圧感にあふれている。

 本来兜のある辺りと、腋やひじの間接部分など鎧下(ギャンベゾン)が覆ってあった部分から蒼白い炎が陽炎のように漂う。

 得物である剣は肉厚で幅広の両手持ち剣、刃の部分が150cmはあるそれは「ツヴァイヘンダー」と呼ばれ、熱と雷魔法に対する耐性持ちで、所どころ溶岩の満ち溢れる灼熱マップ『煉獄』にふさわしいしろものである。


 使役契約を結ぶには単に倒すのではなく、残りHPをギリギリ__ライフゲージ残り1パーセント__まで削り、あと一撃で倒せる、となったときに契約の石を投げ使役獣(ペット)になる事を承服させる。倒してしまわないよう手加減してライフゲージを減らすだけでも難しいのに、契約の段階になっても合意せず消えるケースが多く、ゲームでは1体ゲットするのに20回程度チャレンジはざら、と言う状況だった。

 もちろん、フロアボスだからこその難度で雑魚モンスターなら4~5回チャレンジすれば使役獣として捕まえられる仕様である。


「……すごいですね、こんな強そうな使役獣を見たのは初めてです」


 使役獣を出している間は使役者のMPの自動回復は遅れるため、親密度を上げる狙いでわざと安全地帯で放置するケースを除き、戦闘召喚時以外で外に出す事は少ない。

だから他人の使役獣を見るのはモンスター狩りでのマスターの支援する姿を目撃するのが大半だ。


 外に出し続けて時間が経てば使役獣も腹をすかせて満腹度が30を切れば『空腹』となり、空腹状態の次に満腹度ゼロの飢餓状態に突入する。

『飢餓』のペナルティーとしてその状態で5分経過すると親密度は1つ減る。

親密度を上げるには外に出した状態で10分経過で1つ上がるが、満腹状態から空腹状態そして飢餓状態になるのはゲーム時では約2時間だったかな……



「こいつの名は『村崎(むらさき)』と言う。ほれ、ごはんだ」と先ほど買ったホールサイズ缶詰を手渡す

そう言えばゲームではアイコンクリックだけでえさをやった事になるのだが画面の中に入った事となる現状ではペットの食事はどんなふうなのだろう? 缶切りは無かったがイージーオープン(パッカンとあける奴)ではなかったな。


 俺からデカ缶詰を受け取った武具精霊(むらさき)は左手と胸の間に缶を抱え込み、右手握りこぶしに親指を立て__いわゆるサムズアップ__ポーズを作り、その爪先を缶の上面に衝き立てて器用にキュッキュッと円周に沿って切り開いていく、その滑らかさはまるで電動缶切りの如し。

 缶の上面を9割ほど押し切ったところで人差し指爪先でクイッと引き上げ……顔面があると仮定した空間にポイッと缶をシュート、青白い炎が鎧の襟から立ち上り、缶は空中で消えた。


「……これが使役獣の食事……初めて見ました」

うん、ゲームでは日常行為(ルーティンワーク)で気にした事なかったけど省略された部分は予想した以上にシュールな光景だったよ。


 手元のステータス表示で『村崎』の満腹度が50まで回復していたので缶詰をもう3個追加して満タンの100にしておく、ゲームよりだいぶ回復量多いのはありがたい。


「ムラサキ、体調のぐあいはどうだ?」

使役獣は空腹度はともかくとして疲労度(スタミナ)は表示されない隠しパラメーターになっていると聞く

HPやMPは専用ポーションかプレイヤーの魔法で回復できるが疲労度回復手段はゲームでは非開示なのでペットの行動でおおよその具合を推測する感じだった。


 そのペットの行動は封印石から出して『自由行動』を選択して観察する事で、あるじのまわりをうろうろ歩いている場合は疲労度低くてあるじと遊びたい状態、じっとしている時はニュートラル、座り込んでいたら疲労度マックスと言った感じである。まぁゲームではそんなに見る機会はあまり無かったが。

 ペットがファンシー系、たとえばウサギや花妖精なら見て(なご)むが、鎧武者やゴーレムがプレイヤーの周囲をうろうろ歩き回れると「おまえ、あっちで狩りしてこい」と思ってしまうのは仕方ない。



「system all green. I'm all Ready , Order please sir 『ワレ体調万全ナリ。イツデモ下知ヲ 』」

機械音声(マシンボイス)ぽい返事が返ってきた、そりゃ首無し騎士だから普通の声じゃないと思ってたけど

どこのロボット兵かと思うような返事でなおかつ二重音声なのは困る。

「ん、今度から会話は英語省略でw」


『委細承知シタ』

うん、たぶん翻訳機能のせいだろうけどサムライ口調になるのは名前のせいだろうか……


「今回の呼び出しはお前の空腹度の解消と俺のフレンドにお前を紹介するだけだから、挨拶したら送還するので後でゆっくり休んでおけ」


 その後「村崎」は大剣を右手で脇に立て、左手で拳を作り胸に当てて

『オノオノガタ、ハツニオ眼通リニカカリシ村崎デゴザル、是ヨリ末永クオ付キ合イ宜シク願イタテマツリ(ソウロウ)

恭しく挨拶してくれたのはあるじとしてちょっと誇らしかったけど、西洋甲冑姿でサムライ口調だったのはムズ痒い気分だった。




 使役獣を封印石に戻してジョブスキルを手に入れるのは明日にするか、太陽もやや傾いてそろそろ日暮れも近い事だし、そう告げてロバート達と別れて宿を探す事にする、やはり最初にこの世界に来た時の『猫のひげ亭』にしよう、あそこの魚料理は煮魚・焼き魚・から揚げと色々楽しめそうだし数日連泊しても良い宿だ。

 実は宿代節約でゲーム時代に手に入れてたホームを実体化しようと試みたのだがシステムメッセージで『土地を手に入れないとホームは置けない』と出たのでそこらへんも協会で聞いて見るか、ゲーム内通貨で手に入る最小機能の『ミニハウス』だが何度かのアップデートで生産設備を置く事も出来るようになっている、もしジョブスキルの入れ替え制約が解放されたなら拠点として申し分ない。


 ホームの機能を使用するには『設置』を選択して実体化する必要があるが『家具配置モード』にすれば半透明のシルエットで家具を置いたり倉庫に戻したり出来る。

 家具には『魔力値』が設定され、その総量と室内の清潔度によって機能の制限が解除される仕組みとなっている。

 ゲームの開始当初は課金により家具を買って設置する仕様だったが、数回のバージョンアップでプレイヤーの作れる家具もしょぼいものから見た目の豪華な魔力値の高い家具などの製造レシピが公開されることでギルメンの生産職に採取や狩りでドロップした材料とゲーム内通貨渡すことでハウスの格で決められた数の上限置くのがデフォだった時期も有ったが……


 それもギルドが戦争イベントで分解して行った事で機能しなくなった

戦争となれば投入する資材がしゃれにならない量になり、生産職が数時間採取した資材100や200が数分で熔ける有様だったからな。



 運営会社が代わり戦争イベントで失うデスペナルティ「一回の死亡で5%の経験値ロスト」という仕様を「戦争イベント中に限りデスペナルティ無し」に変更したが時既に遅し。


 生産職ギルメンがログインしなくなったギルドは次第に戦争イベントに参加しなくなった、それはまだ競争原理がはたらいた、と言える


性質(たち)が悪いのは「戦争の勝利で得る領地は1ギルドで1エリア」のままだった事で、普通なら四カ国で誘うなら同じ国に所属するギルド同士は協力関係を組む

それなら資材収拾に弱いギルドにも領地獲得ができる可能性があるが

その同盟関係を良しとしないギルドが出てきた。


 そのギルドがやった事は他国所属フレンドに手回しをし、自国トップギルドに粘着攻撃を行わせ、戦争イベント外でも生産職放置キャラにまでMPKを仕掛けた

戦争イベント外でのキャラ死亡のデスペナは5%ロスとのままだったので高レベル生産職ほどダメージは大きい。


「同じ国の領地は奪えない」

A国トップギルドが所有してた領地がB国C国連合に落とされた跡、B・Cいずれかの領地とワールドアナウンスされるタイムラグにA国二位ギルドが(フレンド)の見守る中、領土シンボルをたたく事で自ギルド(A国)を手に入れる。


もちろんそんな事すればネット掲示板で叩かれるのは必須だが

そんなことする奴は匿名掲示板で叩かれる事など屁にも思わない。


運営が垢バン(アカウント凍結)で対応したものの

そういう(やから)は複数アカウントは当たり前で複数国にサブギルド持ちなのでしらみつぶしに対応する事できず、結果その(サーバー)を別鯖との統廃合という荒療治でケリをつけたのであった。



まさに『煉獄』である







*




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ