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精霊大陸紀行  作者: plekios
13/26

初クエスト その2

月影湖

それはグリンワルドから南へ、樹魔の森を東に徒歩三時間ほどにある地域である

年の大部分は三日月状で流れ込む河は三本、流れ出る河が一本

時計の文字盤で言えば12時、1時、2時、に流入口、4時が最大曲部、8時に流出口

湖の北東と東の山地に積もった雪が融ける春に水量が増えると満月のような円形の湖になる

密林と言うほどではなく、ある程度見晴らしの良い林が水に沈んだ「沈水林」を形成する

我々の世界で言うアマゾンの雨季に出現するそれを思い浮かべれば近い

湖が満月状になった時、水辺に棲む動物が繁殖期を迎え、一気にその数を増やす

それら増えた野生生物をエサに巨大化した物も出てくる


乾季で湖面が最小になったときが各採集素材の宝庫となる

特にある種類の樹木が沈水時に枯れてその樹液が水中で変化した「沈香」はこの地域でしか取れないウッドワース王国の特産物である

ゆえに採取する職人の野獣からの保護と密猟者対策の為

王国の警備兵が駐屯・巡回する重要地域である



樹魔の森エリアから月影湖エリアに入る

時計の文字盤で言えば9時方向に林道が通っており、8時の位置にある流出河川の北側にあたる

満水時でも水没しない丘陵地に警備兵と各種サービス施設が置かれている

施設と言っても屋根と柱のみで壁の無いピロティ方式で

一部屋根裏を倉庫にしている建物が数棟と言った感じである

雨が降った場合の退避場所か、採取した資材の簡単な処理加工の目的で使用されている

冒険者がキャンプする場合は使用料払って屋根のある土間で寝袋使用する事もあるが

初期冒険者で手持ちの資金が心もとないケースだと敷地内の広場で野営する事が多い


月影湖での狩り初日はこの野営地にベースキャンプを置いて近場で狩りをして

翌日は奥の部分に進む事に決めた


「まずは近くの北部でベアフライ(熊虻)を狩るのだが、

6人一緒で狩るか、スリーマンセル(三人一組)の2チームに分かれて狩るかを相談したい。」

指定された数を倒すだけでよい討伐クエストなら5人が集めて俺が範囲魔法で焼けばすぐだが、それだと目的の魔石も粉々になって解体して得る事が出来ない可能性があるとPTリーダーのロバートに伝えておいた

二手に分かれるスリーマンセル(三人一組)を取る場合、

各チームに火力職の魔法使いと回復職を置けばバランスが良い

Aチームに盾持ち重装戦士のロバート、精霊魔法のレナ、神聖魔法のアイリス

Bチームに双剣士のハンス、スカウト(野伏せ)のルーク、神聖・精霊魔道士の俺、ベル

これが効率的で良いと思えるが

狩りの対象であるベアフライには有る習性が問題である

普段はノンアクティブで攻撃しない場合は人間が近くを通っても無関心だが

攻撃してベアフライのHPが2割を切ると「遁走」を選択し、

そのとき「仲間を呼ぶ」スキルを高確率で発動する

呼ばれたベアフライはHPが満タン状態でも「仲間を呼ぶ」スキルを発動する

従って狩りの方法は仲間が近くに居る状態から弱い攻撃で単体ずつ引っ張り出して

出てきた個体を集中して短時間で仕留める必要がある

ベアフライは「ぬいぐるみのクマ」に透明な羽をつけた感じの可愛い外見で

攻撃方法も「体当たり」「引っかき」「噛み付き」で単体ならさほど攻撃力の有る方ではない

フルプレートアーマー(全身金属鎧)を装備した上級者は殲滅せずにわざわざモフモフ団子状態になって撫でて楽しむ者も居るとロバートは話した『真似したくないがね』とも付け加えた


それはさておき、現時点ではロバートも部分金属鎧なので全身クマ団子状態は望ましくない

ここはいざと言う時即座に殲滅体勢取れるよう6名揃っての狩りを進言しておいた


おっと、狩りに行く前に一つ確認しておく事があった


「ロバート、確かめておきたい事があるからちょっとこっち来てくれないか?」


「なんだ?」と言いつつこちらに来るロバート


「魔法の範囲と影響確かめておきたいから指示した場所に立っててみて」


あの「アイスメテオ」を思い出したのかロバートの顔が一瞬蒼ざめた


「んー、大魔法じゃなく小規模範囲の奴で、威力弱めの奴ね、PTメンバーに影響ないと思うのだけど…」


「いや、その前に離れた状態で威力を見てみないと協力(実験台)はちょっと……」


それもそうだな、フレンドリーファイアーが発生するかどうかを試しておきたかったのだが

その前に範囲と威力を見ておいて心の準備が必要だろうな


ゲームではPTメンバーに一切ダメージ入らなかったから大丈夫と思うがこの世界だとどうなのかはまだだったし


「アイスブルーム(凍結氷柱)と言う呪文は聞いた事有るかな?」

レベル24で収得できる比較的初期の範囲攻撃魔法で威力は低い

この魔法の特色はダメージではなく高確率でフリーズ状態を引き起こす

氷耐性の無いモンスターだとほぼ確実に足止めできる、持続時間はレベル1で約5秒

レベル1と2と3を連続して掛ける事も可能である、まぁショートカットキーに前もって入れとく必要あるけど

モンスターを確実に焼き尽くすなら別の魔法も用意する事ができるがそれだと採取は諦めるしかない

凍らせて地面に落ちた相手なら戦士によるクリティカル(致命攻撃)も容易いので攻撃補助魔法と言うべきか

レベル4でもこの魔法だけで即死するモンスターは少ないが、レベルが上がるにつれて範囲が広がり、凍結時間が長くなるのがこの魔法の特色である


聞いたことは有るが見た事無いとのリクエストいただいたので1から4まで連続発動するよう魔法スキルタブレットを操作して用意、それでは行きますか

合図したら移動しながら発動すると前もって言っておく

ロバート以外のメンバーも少し離れた位置でこちらを見つめている、特に同じ精霊魔道士のレナは興味津々と言った様子である


「行きますよ~」

移動しながらなので発動タイミングはキー操作ではなく音声コマンドを選択、

一所ひとところに留まった状態なら無詠唱でタブレットを指差すだけで連続発動可能だが

PTメンバーとの連係プレーを考えるとこちら(術者)から移動して掛けたりする場合も出てくる

それではと

「我が魔力を糧として 凍える壁を成せ【凍結氷柱】<アイス・ブルーム>レベル1。」



--レナ・リュミエール視点--


(あの人の魔法が見られる、いったいどんな魔法使うのかしら?)

先日ロバートはキノコ森で彼の魔法を目撃してその威力に絶句したと言ってたが

残念ながら自分はその時気を失っていて見ることが叶わなかった

精霊魔法道士して同種の魔法、それも高位の呪文は気にならないといったら嘘になる

(アイス・メテオかぁ…いったいどんな魔法だったんだろう)

いま彼が見せてくれるアイス・ブルームの魔法はレナ自身も聞いて知っている魔法だがまだ使えるレベルには達していない

PT以外の精霊魔法使いが使うのを見るのも初めてである


「我が魔力を糧として 凍える壁と成せ アイス・ブルーム レベル1」


彼がそう唱えたと同時に足元に蒼い光の魔法陣が展開し、直後に白いもやが彼を中心に高速で広がっていく、靄はすぐに消え足元の草にはしもが張り付いていた

その範囲は彼の周囲半径10mほど

(術者を中心に周囲に冷気の塊を作り出す魔法かぁ、狩りには微妙、てところかしら?)

術者から離れた場所を指定し、その周囲に効果を成す遠隔攻撃範囲魔法に比べ、どちらかと言うと防御もしくは足止めを目的とした魔法とレナは分析する


「我が魔力を糧として 凍える壁と成せ アイス・ブルーム レベル2」


(えっ、速い さっき唱えてから数秒も経ってないのに)


大半の魔法は発動して同じ魔法を唱えるには「クールタイム」と呼ばれる待機時間を必要とされる

Aという魔法を唱えてすぐにBの魔法を唱えるのは

所有する魔力総量と詠唱能力次第で連続発動はそう難しい話ではない

それでも同じ階層の呪文、例えば電撃で痺れさせてあとに火球で焼くのは数秒の溜め時間が要る

--レナは知らなかったがアイス・ブルームの魔法は同系列でもレベルごとに別判定扱いで

 1から順に「上書き」する形なら4連続で全部で5秒もかからない特殊な部類に入る

 もちろん実戦ではそんな魔力の無駄使いなやり方をする者は居ないが

 レベル3とレベル4のセットは強襲受けて離脱する時の緊急避難用として用意しておく精霊魔法使いは多い、

 その場合はレベル3の凍結効果を免れてさらに接近する敵を足止めする備えとしてである--


レナが声も無く固まっている間にレベル3とレベル4の呪文発動が終っていた

最後のレベル4発動後、ベルの周囲にキラキラと輝く何かが空気中に漂っていた

大気中の水蒸気が氷点下10度以下の冷気に当たると生じる「細氷:ダイヤモンドダスト」である


凍結した芝が踏みしめるとパリンッと音を立てて粉々になったのを見て真っ青になったロバート

その後アイス・ブルーム1をその身で受けても何事も無かった事で安堵した…が

施設の芝生が所々ダメになったせいで「構内で魔法の試し撃ち禁止」がのちに張り出される事となり

警備兵からPTリーダーとして代表してお叱りを聞く破目となった

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