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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第①マッスル ◆筋肉への誘い!!◆
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悪夢!!

「仕方ないわ、無理強いできないわね」

 社長が眉を潜め言い放つ。

 金平以外のメンバー全員が、なんのためらいもなく薬を口にしていた。

 怯えた小動物のようになっている金平を尻目に、次々に車を降りるメンバー達。

 停車したハマーのヘッドライトが照らし出す中、さらに追い打ちをかける衝撃的な出来事が。

 社長が突然、タンクトップと短パンを、荒々しくも素早く脱ぎ始めたのだ。

 表情は真剣そのもの。

「ふぁっ!?」 

 狂気に満ちた異様な姿を視界に捉えた金平は、思わず腰が抜けそうになる。

 スキンヘッドに口髭の五十路(いそじ)近いオッサンが、ピッチピチのビキニ一枚になったのだ。

 テラテラした素材の、紫色のビキニ。

 血管の這う凄まじい逆三の肉体。

 腹筋は割れ、シックスパックが誇らしげに刻まれている。

 続いて、そそくさと靴を脱ぎ始めると、どこから出したのかビーチサンダルに履き替える社長。

 完全に真夏の浜辺の格好だ。

「三国ちゃん、例の物は?」

「はい、社長!」

 三国がハマーのトランクを開け、中から出したのは昨日社長室で見たジュラルミンケースだった。

 それを大事そうに抱え、社長の足元に置いてロックを外す。

 バツンバツンと小気味良い音を立て、ケースが開いた。

 社長が屈んで中の物を取り出す。出てきたのは、一振りの剣だった。

 持ち手の部分から先端まで、不気味な程黒光りしている。

 もはや言葉無く立ちつくす金平は、その姿を見て、「変態剣闘士(グラディエーター)」としか形容する言葉が思いつかなかった。  

『あぁ……そうか。俺はこれからあのオッサンにバラされて、山に捨てられるんだ……その前にチャックや増山さんやみんなで、俺を素敵な気持ちにさせてくれるのかな?』

 目はうつろ、口は半開きで思った。

 なぜだかこの危機的状況下にも関わらず、ちょっと楽しい気持ちになって、微笑みが浮かぶ。

『こんなことなら、パソコンの後付けハードディスク(2TB)の中にパンパンにダウンロードしたエロ動画、消しとくんだった……』

 そんなとりとめも無い思いが巡った。

「昨日説明したように、グリップにセンサーがついてますので、使用者の筋電力(きんでんりょく)に反応して刀身の切れ味と強度が増します」

 社長の目の前で、早口で一気に説明する三国。

 腰が引けて、何かに怯えているようだ。

 すると、三国が抱えていたノートパソコンから警告音のようなものが鳴り響く。

「来ます!」

 ボーッとしていた金平の腕を三国が強く引っ張った。ハマーへ駆け寄りエンジンを切ると、全速力で駆け出す。

「金平君、我々は離れましょう!」

 見ると、暗闇の中、チャックと増山もつなぎを脱ぎ始めたではないか。

 つなぎの下は社長と同じビキニ一枚。

同じ素材、同じカラーで統一されている。

 小麦色に焼けた増山の胸元には、鋭利な刃物でつけられたとおぼしき、斜めに走る二つの傷跡が。

 一瞬、社長と増山がそういう関係なのかと、恐ろしい絵ヅラが思い浮かぶ。

 いったい何をしたらこんな体になるのか、あちこち刺し傷のようなものも見受けられた。

 それにしても異様に引き締められた体だった。

 体脂肪率は一桁台だろう。

 全盛期のス◯ローンも真っ青だ。

 社長と同じく、ブーツからビーサンに履き替えている。チャックもまったく同じ格好だ。暗闇の中で異様に白い体がよくわかる。山のような巨体に、筋肉の鎧を纏っているかのようだ。

 これで三人がビキニにビーサンという常軌を逸した姿になった。

 三国に引っ張られ、三叉路から茂みへと移動する金平。

 目の前で起きている出来事がまったく理解できない。

 むしろ理解したくない。

「金平君、あなたは薬を飲んでいないから、絶対にやつらには触れられてはいけない」

 茂みで金平の頭を押さえつけて、自らも隠れる三国。

 ノートパソコンからは、さっきの警告音が鳴りっぱなしだ。

「増山ちゃん、これはあんたが使いなさい」

 社長はそういうと、黒光りする剣を増山に放り投げた。

 それをキャッチすると、両手で握りしめて構える増山。

「オーウ、マスヤマサ〜ン、シュ◯ルツネッガーみたいで〜す」

 暗闇の中、チャックが愉しそうに微笑む。

「社長、ほんとにこんなもん効くんですか?使えないようならすぐにそこらに放りますよ」

 増山は刀身を肩にポンポンやると、真顔になった。

「まだ試作段階だし、ダメならやっぱこっちね」

 言いながら、社長は自らのごつい拳にキスをする。

 一連のやりとりを見て、彼らがキチガイだと確信する金平だった。 

「来た!」

 三国が叫ぶ。

 次の瞬間、現状でも既に異様な光景が、さらなる悪夢となり金平の目の前で起き始めた。

 社長、増山、チャックが囲むようにしていた三叉路のアスファルトの中心が、何やらぼんやりと光始めたのだ。

 次第に強くなる光。

 三人の筋肉を強く照らしだし、その光が生み出す陰影が、筋肉をより一層際立たせて見せた。

 まるでライトアップされたかのような三人。

『ダンス的な何かを始めるのか?』

 もはや金平は正常な思考を失っている。

 次の瞬間、ただ一色の白い光だったものが、淡い七色の光へと変化し始めた。

「はうあっ!?」

 思わず奇声を発する金平の目前で、アスファルトから何やら出てきた。

 その光の根源となっているもの。

 音も無く、それはアスファルトを透過しながら現れた。

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