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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第①マッスル ◆筋肉への誘い!!◆
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筋肉的食事!!

 チャックと増山がにこやかに談笑しながら食堂に向かう背後で、肩を落とし歩く金平。

 増山が、社員食堂と書かれたプレートの貼られた部屋の引き戸を開けて中へ。

 続いてチャックが前屈みになりながら入って行く。最初から前屈み気味に肩を落とした金平も続く。

 室内は広く、中央に陣取るアルミ製の長テーブルの脇には、丸椅子が八つ置かれていた。

 見た感じどこにでもある社員食堂だ。

 カウンターの奥には割烹着を着た中年の女性が。

「お母さん、三人分お願い」

 増山が快活な笑みを浮かべている。

 お母さんと呼ばれた中年の女性は「は〜い」と歯切れよい音を出すと、三人の大男を一瞥して微笑み、手際よく動きだす。

 男達がのっそりと席に座ると、チャックが口を開いた。

「カナダイラサンは、ナニカ格闘技をサレテマシタカ?」

 見た目はまんま欧米人だが、片言に聞こえた口調は、若干訛りはあるものの流暢な日本語だ。

「はい……柔道を」

 白い歯を見せてニコニコしているチャックを見上げながら、ボソリと呟く金平。

「チャック、彼はゴールドメダリストなんだよ」

 特に悪びれる様子もなく、増山があっけらかんと説明した。

「オゥ、ファンタスティック。それはスバラシイ」 

 チャックの碧い瞳が爛々とした光を宿す。

「いえ、その……ドーピング検査に引っ掛かって、メダルは返上したんです」

 傷口に塩を塗られた気分の金平は、表情を曇らせた。

「報道じゃ、監督が勝手に食事に混入させてたって話だろ?君が悪いんじゃない」

 増山の口調は至って穏やかだ。

 確かにその通りなのだが、ゴールドメダルを剥奪された現実は撤回しようがなかった。

 うつむいて肩を落とす金平を見て、チャックが声をかける。

「カナダイラサン、大丈夫です、アナタのそのチカラ、これからゾンブンに使えるハズデス」 

 ほくそ笑むチャックを見ながら、増山は声を上げて笑った。

 そんなやりとりをしている間に、先ほどの中年女性がトレイを運んでくる。

「お待たせ」

 手際よくトレイの上の物を次々に配膳すると、お母さんと呼ばれた中年女性は笑顔でトレイを抱え、金平の顔に見入った。

「可愛い顔して、うちの子と同い年ぐらいかねぇ」

「お母さん、気に入った?」

 増山が茶化す。

 金平は複雑そうな表情を浮かべながら、並べられた食事に目を落とした。

 プラスチックの容器には、鳥のささ身が山盛りに。

 ピッチャー程はある巨大なグラスには、プロテインらしき液体が波々とつがれていた。

 そして大量のサプリメント。

 バナナ一房。

 三人とも同じ内容の食事だった。

 見ただけでげっそりする金平。

「おかわり沢山あるからね」

 満面の笑みの“お母さん”。

「は、はぁ」

 相変わらず低いテンションで答える。

 隣のチャックはリスのように頬を膨らまして、鳥のささ身をむさぼっていた。

 増山も先ほどまでの紳士的な態度から一変、気がふれたゴリラのごとき形相でバナナを食らっている。

『いったいこいつらなんなんだろう……』

 底知れぬ不安感だけが、金平の胸に広がっていく。

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