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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第①マッスル ◆筋肉への誘い!!◆
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チャック!!

 増山に促されるまま、戸惑いつつも金平は部屋を出た。

 ダッシュで屋外へ逃げる算段も考えたが、増山が夕飯の話をしたせいもあり、確かに空腹だった。

 気になる点は多々あったが、今の所、礼を失する対応をされてはいない。

 そんなことを考えながら、やたらに逆三角形な増山の背中をぼんやり見つめ、通路を歩いていた。

 進行方向からガチャンガチャンと金属音がする。

「おっ、やってるな」

 増山が人懐っこそうな笑顔を浮かべて、音がする部屋を覗きこんだ。金平もつられて覗きこむ。

 そこはさながらトレーニングジムに見えた。

 広い部屋にはオリンピックの強化選手が使用しているのと同等の、高価なトレーニング機器が整然と並んでいる。

 その中で、ベンチプレスを一心に行う男が。

 左右のウエイトの重みで、バーベルが弓なりにしなっていた。

 見ると、左右合わせて200キロ程の重量はあろうか。

 常人では決して持ち上げられない重さだった。

 増山と金平に気づいた男は、事もなげにバーベルを置くと、傍らにかけてある星条旗をあしらったド派手なタオルで首筋に光る汗を拭いながら、のっそりと起き上がった。

「補助無しでそのウエイト、よくもまぁ持ち上げられるもんだ」

 大抵のことには動じ無い雰囲気の増山も、しきりに感心した様子だ。

 起き上がった人物は、20代後半ぐらいの白人男性。

 身長2メートルはあるだろうか。そして、増山や社長と同じく凄まじい体つきをしていた。

 ゴリマッチョである。

 ガチムチ系。

『着ぐるみか?』

 さすがの金平も呆気にとられた。

 現役時代、無差別級の選手を幾人も目の当たりにしたが、これほどの巨漢、見たことがない。

 このエコの時代に、見るからにとてつもなく燃費の悪いであろう体では、ご家族もさそがし迷惑だろうと思った。

「チャック、飯にするがお前も来るか?」

「マスヤ~マサン、ワタシもお腹スキマシタ~」

 チャックと呼ばれた男は、片言の日本語を発すると、爽やかな笑顔を見せた。

 金髪碧眼。

 筋肉にばかり目が行ったが、よく見ればかなりのイケメンだ。

 しかし、ボディービルダー特有の、頬に縦線が入っている。

 それが一層、チャックと呼ばれた男の顔つきを精悍に見せていた。

 まぁ、ボディービルダーでは無いのだが……。

 タオルをバーベルにかけると、ゆっくりと増山と金平に近づいてくる。

 穏やかに微笑むと、碧い瞳で視線を送るチャック。

「あぁ、彼は金平君だ。今日から一緒に仕事をすることになった」

 増山が簡単に金平を紹介した。

「コンニチワ、カナダイラサン、私はチャックデス」

 端正な顔を破顔させながら、握手を求める。

 それに応える金平。

「!!」

 同じ人類とは思えない、恐ろしくでかい手のひらだった。平手打ちなど喰らおうものなら、婦女子なら首が千切れちゃうんじゃね?と、金平は唖然とした表情になる。

「マスヤマサン、今夜デスよね?」

 チャックが意味ありげな言葉を発すると、増山を見つめた。

「あぁ、今夜の予定だ。三国さんの話だと、レーダーにはそう出ているらしい」

 その意味不明なやりとりを聞いて、金平はさらに頭が混乱した。

『レーダー?夜?』

 不敵な笑みを浮かべる増山と、真剣な面持ちのチャックが見つめ合う様を見て、二人がそういう関係なのかと勘繰ってしまい、金平は背筋に冷たいものを感じた。

 この筋肉だるま達といい、ジュラルミンケースに、謎のトレーニングジム。

 まったくもって不可解だった。

 この増山という男といい、チャックと呼ばれるガチムチ白人男性といい、引っ越しセンターの仕事に従事している気配など微塵もない。

 “マッスル引っ越しセンター”と書かれた看板が頭を掠めたが、あれは偽りで、実際は怪しげな業務を行っているのでは?と、嫌な予感がよぎった。

 恐怖と逃げ出したい焦燥感から、膝が笑いだし、尿意が襲う。

 そんな金平の気持ちも知らず、爽やかに談笑する増山とチャックに促され、食堂へと移動することになった。

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