筋肉宿舎!!
増山に案内されたのは、ワンルームの簡素な部屋だった。
ベッドとテーブル、小さな薄型テレビ。他には特に何もなく、がらんとしていて生活感が無い。
「今日からこの部屋で生活してくれ、荷物はそうだな、明日にでも取りに行ってもらおうかな」
「あの、それって住み込みってことですか?」
「そういうことになるね」
壁におっかかりながら、丸太のような腕を組んで、さらりと増山が言い放つ。
「はっ、はぁ……」
あまりに唐突な展開に、言葉も出ない金平だった。
「まぁ、明日の朝にはどうなってるかわからんがね……ククッ……」
何が面白いのか、不敵な笑みを浮かべ、喉を鳴らす増山。
金平は引きつった笑みを浮かべて、どうやったらこのビルから脱出できるか考えを巡らせていた。
およそ社長に似つかわしくない、ごついお姉の社長。
謎の社員達。
怪しいジュラルミンケース。
全てが金平の精神を追いこんでいく。
そもそも、ろくな面接もしないくせに、社長の口振りでは金平は社員になったようだ。
若干お腹が痛くなり、金平の顔が次第に青ざめていく。
「金平君、どうした?」
蒼白な表情の金平に比べ、呑気な増山の笑顔。
「い、いえ、その……」
「あぁ、そうか、腹が減ったんだな?」
腹に手を当てる金平に一瞥をくれると、増山は腕にしているごついタグホイヤーを顔に近づけ、ブルーの文字盤に見入った。
「6時だしなぁ、腹も減るわけだ、よし、一緒に食堂に行こう」
小麦色に焼けたごつい手のひらが、金平の頭をポンと叩いた。