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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第②マッスル◆追憶の空◆
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卑怯ですよ!!

「ア、アニキ……」

 地面に転がりのたうつ太田兄の姿を見て、怯える太田弟。

「あががっ……いてぇ、いてぇよ……ビリー!こいつら殺せ!責任は俺がとる!」

 顔面を土に擦りつけながら、苦悶の表情を浮かべる太田兄がかすれた声で叫んだ。

「ワカリマシタ、オータサン」

 一部始終を見ていたビリーだが、悲壮な姿の太田兄を見ても、ピクリとも表情を変えず呟く。

「カラテボーイ、sorryねぇ」

 コートを脱ぎ捨てる。

 分厚い筋肉が、軍服越しにもわかるほどの屈強な体。

 片膝をついた増山ににじり寄って行く。

 増山は頬の血を拭うと立ち上がろうとした。わき腹に鈍い痛みが走る。

 ふと、増山の右肩に置かれた白い手。

 見上げると、司が目線をビリーに向けたまま口を開いた。

「増山、良くやった。(つひたち)……見事だったぞ。お前は休んでろ。あとは俺がやる」

 まるで買い物にでも出かける足取りで、ゆっくりビリーへ向かって行く。

「ビリー、気を付けろ……そのガキは、鬼道空手の<龍>って呼ばれて」

 口を開けたまま白目を剥く。

 どうやら折れた腕の痛みで意識を失ったようだ。

「ワーオ……ドラゴンboy」

 満面の笑みを浮かべるビリー。

 薄暗くなってきた周囲の景色に溶け込む黒い顔面に、ニッと白い歯が浮き上がった。

 2メートルほどの距離を置いて向かい合う両者。

 増山と同じく、司も半身の構えをとった。

 ただし、増山より歩幅(ストライド)を大きめにとり、膝を落とす。

 そのせいか、若干姿勢が低く見えた。

 ビリーも分厚い胸板を張り出し、両の腕を絡めながら胸の前で交差。

 利き脚を斜めに引くと、ほんの少し腰を落とす。

 両者の間に漂う、景色が歪むかのごとき緊張感。

「あぁっ!」

「!?」

 突然、司が声を上げ、ビリーの斜め後方に刮目した。

 冷静な態度を貫いていた司の、異常とも思える驚愕ぶりに、思わず右後方に振り向くビリー。

 その直後、突如広場に鈍い打撃音が響き渡った。

 すらりと伸びた長い脚。

 その脚の先をたどると、ビリーの下顎に行きつく。

 ビリーが司から視線を外したほんの何秒。

 その一瞬で、驚異的跳躍を見せた司が、ビリーの下顎に蹴りを放ったのだ。

「ブッ!つ、司ぁ!?」

 痛みにうずくまっていた増山が、一部始終を見て思わず吹き出す。

「お、お前、卑怯ですよ!」

 動転した増山が、混乱して敬語を口にした。

 ギリギリと音を立てて、ビリーの下顎に叩きこまれた司の足。

 次の瞬間、ダメージを負ったと思われたビリーが、何事も無かったように両手を走らせ、司の足首を掴む。

「ちっ!」

 司の舌打ち。

 強烈な腕力で司の足首を固定すると、一気に右へ回転させた。

 束ねた鋼材並に太いビリーの両腕に、凄まじい力がこめられていく。

 咄嗟に司は着いていた左足を蹴り出し、掴まれた足を軸に、自身の体を独楽(こま)のように回転させた。

 足首をねじ切らんばかりの力を、同一方向に回転し相殺する。

 驚異的な運動神経で、その不安定な状態から蹴りだした左足の踵を、回転運動を利用してビリーの鼻面に叩きこんだ。

 再び広場に鈍い打突音が鳴り響く。

「ウプッ!」

 さすがのビリーも呻き声を上げ、掴んでいた司の脚を離すと、自らの顔面を抑えこみ悶絶。

 落下した司は雑技団並の身軽さで、回転したまま綺麗に着地し、そのまま一歩、二歩と、音も立てずに後方へ飛び退いていく。

 顔を両手で塞ぐビリー。隙間からこぼれた口元に、盛大に鼻血が伝わる。

 厚い唇がわなわなと震えていた。

「Do you Want to die──?」(死にたいのか?)

 司に向かい、くぐもった声で呟く。

「いや。死ぬのはあんただよ」

 もう一度、最初の構えに身を落ち着けると、切れ長の一重の瞳に酷薄な色を浮かべ、冷ややかに呟く司だった。



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