↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第①マッスル ◆筋肉への誘い!!◆
PR
20/151

試着!!そして落下!!

 シャワーを終えた金平は、呆然自失になりながら、よろよろとロッカールームで家から持ってきた服に着替えた。

「あの妖怪オヤジ……」

 うなだれながらベンチに座りこむ。

『予想していたとはいえ防ぎきれなかった……』

 江戸時代の絵巻物に描かれている、首を落とされた落武者の、断末魔の表情と見紛う変態しゃちょうの形相を思い返すだけで、金平は失禁しそうになる。

 とはいえ、久しぶりにシャワーを浴び、清潔なシャンプーの香りに包まれ気持ちもリフレッシュしていた。

 嫌なことは早く忘れようと、自分に何度も言い聞かせた。

 ロッカールームを後にすると自室へ向かう。

 夕飯までにはまだ時間があった。部屋の電気を点けると、カバンをテーブルに置いて、中のパソコンや衣類を取り出し、服や下着は備え付けのクローゼットにしまった。

 ふとテーブルに目をやると、社長から手渡された制服が、室内の照明に反射して紫色の光沢を輝かせていた。

 制服と言えば聞こえはいいが、限りなく面積の少ない布切れなのだが。

 しばらくビニールにパックされたビキニとビーサンを見つめる。

 試しに履いてみようかなんて衝動にかられ、誰もいない部屋でキョロキョロと周りを見渡した。

 この会社に来てから、明らかに挙動不審な金平。若干精神的に病み始めていた。

 緊張感からか、震える両手でビニールを破くと、中のビキニを取り出した。

 いそいそとジーパンとスウェット、トランクスを脱いでビキニを履いてみる。

 想像以上のフィット感だった。なんだか照れながら、ボディービルダー的なポーズを決めてみる。

 その時、突然ドアが開いた。

「金ちゃん、夕飯食べに行こう!」

「おわっ!?」

 勢いよく開いたドアからソフィが入ってきて、金平の姿を見て固まった。

「ノックぐらいしろよっ!」

 挙動不審な動作でトランクスを鷲掴みにし、全身を隠そうとする。

 真っ赤に上気した金平の顔を見て、ソフィがケラケラと笑った。

「な~に恥ずかしがってんのぉ、そんなカッコ見慣れてるから大丈夫だよ」

 吹き出すソフィ。

 何が大丈夫なもんかと、金平はいそいそと服を着こむ。

 そんな二人の恋愛小説的なやりとりを盗み見る影が……。

 天井の角に位置するボード。それがほんの少しだけスライドし、僅かな隙間から覗く血走った眼球が、若い二人の様子を伺っている。

 小刻みに動く眼球は、さながらホラー映画のワンシーンを連想させる不気味さを漂わせていた。幼児が目撃したならば、余りのおぞましさに確実に失禁するだろう。

 ボードの上に張り巡らされている柱と柱の間を、両手両足をおもいっきり広げ、蜘蛛さながらに掴んで自らの体重を支えていた。

「金ちゃん……あなた最高よ……」

 恍惚の表情を浮かべながら、舌で唇を舐めまわす社長。もはやその絵ヅラは、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の類である。

「えっ?……ソフィ、なんか言った?」

「別に何も……どしたの?」

 顔を見合わす二人。

 スキンヘッドの妖怪は、僅かな音すら立てること無く、天井裏から光の速さで退散していた。

「夕飯食べに行こう」

 金平の親指を握ると、無造作にグイグイと引っ張る。冷たい陶磁器のようなソフィの指先の感触に、金平は思わずハッとなった。

「う、うん」

 困惑する金平の親指を握ったまま、部屋から出るソフィ。



 食堂までの通路を二人で歩いていると、ガチャンガチャンと金属音が聞こえる。

 規則的なその音は、トレーニングルームから響いていた。

「チャック、またウエイトトレーニングしてるのかなぁ」

 ソフィがそっと部屋を覗きこんだ。

 星条旗のプリントが入ったタンクトップ。そんなステレオタイプな格好をしたチャックが、仰向けになって200キロ近いウエイトを持ち上げている。

 身を屈ませ、こそこそとチャックの後頭部に向かって忍びよるソフィ。金平はそんな様子を部屋の外から眺めていた。

まったく気づかず、トレーニングを続けるチャック。金髪から汗を滴らせ、表情は真剣そのものだ。

「ワッ!」

 突然チャックの目の前に飛び出すソフィ。

「ワッツ!?」

 目を丸くして、チャックが全身を痙攣させて驚く。その拍子に、思わずダンベルの鉄棒を手から滑らせてしまった。

 斜めに転がり落ちるダンベル。鉄棒が弓なりに反り返りながら、チャックの喉仏に叩きこまれた。

「フンゴオッ!」

 喉を締め上げられた牛。そんな呻き声を発すると、シートから滑り落ちる。

 一種の拷問。そんな状態に陥った。

「チャッ、チャック!?」

 普通そうなるだろうと結末が分かりそうな物だが、ソフィが動揺して叫ぶ。

 殺人現場を目撃してしまった気持ちになる金平。

『こりゃ死んだな……』

 部屋の入り口から家政婦ばりに半身だけ出し、目を見開いて震えながら呟く。

「いや〜、タマゲマスタ〜。ハハハッ」

 死んだと思われたチャックが、何事も無かったかのように起き上がった。相変わらずの爽やかな笑顔で口を開いている。首には鉄棒の落下した衝撃でアザが浮かび上がり、首輪を嵌めたと錯覚する程に痛々しい跡がくっきり残っていた。

 普通の人間ならば即死。

 良くて頚椎損傷、半身不随だろう。

 SEに吹っ飛ばされた時といい、こいつの身体はどうなってるのかと、金平は開いた口が塞がらない。

「チャックごめん」

 両目を閉じ、手を合わせて謝るソフィ。

「オ〜ウ、ソフィアさんにオドロカサレて死ぬなら本望ホモで〜ス」

 まぁ、確かにホモセクシャルなビジュアルではあるのだが。

「チャックも夕飯食べに行こう」

 あっけらかんと言い放つ。

「オ〜ウ、バナナパーリーOK!」

 殺されかけたチャックだっが、満面の笑みを浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。