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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第①マッスル ◆筋肉への誘い!!◆
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ニューカマー!!

 食堂に入ってきたのは、金平の予想に反して大男では無かった。180センチの金平より若干小さい。年の頃は40代だろうか。

 何より印象的なのはその眼光だった。

 ギラギラと殺気を放っている。

「社長、戻ったぞ」

 ぶっきらぼうに言い放つ男。

「芹沢ちゃんお帰り。成果あった?」

「ダメだね」

 不機嫌そうに言う芹沢と呼ばれた男は、ダウンジャケットのポケットに突っ込んでいた手を抜くと、無精髭をいじり始めた。

「だっておじさん、道場破りみたいなことすんだもん」

 芹沢と呼ばれた男の背後から、もう一人食堂に入ってくる。

 その姿を確認し、表情を強張らせる金平。

 昨日からドキドキしっ放しだが、これは質が違う。

 女性だったのだ。

 透き通るような白い肌と小顔、すらりとした四肢が印象的な、およそこの会社には似つかわしくない美女。

「ソフィ、あんた止めたの?芹沢ちゃん、またボッコボコにしてきたんでしょ?」

 先ほどまでの上機嫌から一変、社長が女に苦言を呈した。

「だって、止める前に始めるんだもん」

 小鼻の脇に軽くシワを作ると、不機嫌そうに視線を社長から反らしながら呟く女。 

「ほんとにあんたたちは……」

 両の拳を腰に当て、社長は頬を膨らます。

「あっ、そうそう、紹介しないとね」

 キョトンとする金平に社長が気付く。

「紹介するわ。ソフィと芹沢ちゃんよ」

『ソフィ?外人?それにしてはそこまで外人っぽい顔をしていないけど』

 口には出さないが、また一つ疑問が増えた。

 そして、芹沢と呼ばれた男を見て、三國志の張飛を思い浮かべる金平。

 確かに芹沢は、戦国時代の武将を彷彿とさせる猛々しい雰囲気を持っている。

「初めまして、金平です」

 唐突に美女と対面したせいか、顔が上気して赤面する。

「こんにちは〜。え〜、若〜い」

 目をキラキラさせながらソフィが金平に見入った。確かにこの会社に籍を置く男性の中では、金平は若い部類に入るのだろう。

「かなだらい?社長、なんだこのガキは?」

 険悪な気配を隠すことなく、芹沢が毒づいた。

金平(かなだいら)君よ。新入社員。芹沢ちゃん、仲良くしてあげてね」

 仏頂面の芹沢とは対照的に、社長は相変わらず穏やかな雰囲気だ。

「おいおい、俺らがあちこち駆けずり回って成果無しなのに……増山の大将か?」

「そうそう、増山ちゃんが見つけてきたの」

 やたらに嬉しそうな社長。

「へ〜、何年ぶりだよ、ここに社員が入るなんてよ」

 物珍しそうな表情で、芹沢が金平を凝視する。

「よし、朝飯食う前に俺が稽古つけてやるよ。社長、こいつはSEのことは分かってんのか?」

「ええ、昨日というか今朝、実物見たわよ」

 急に社長の表情が変わった。

 眉間に二本ほど皺が寄る。

「ちょっと芹沢ちゃん、あんたどーする気?」

 言われた芹沢はポケットから煙草を取り出すと、小気味良い音を立てながらジッポで火を点けた。

「心配すんなや社長」

 冷ややかな視線で金平を一瞥(いちべつ)すると、ボソボソと呟く。

「道場は誰も使ってねーだろ?いや……増山の大将はよく朝飯前に使ったりしてるよな」

『道場?道場まであるのか?』

 金平は唖然とした。

「多分増山ちゃん使ってるわよ。あんた達、まず朝ごはん食べなさいよ。それに金ちゃんいじめるのはダメよ」

 社長が語気を荒げる。

 若干声が野太くなっていた。

「大丈夫だって。ソフィ、おめーも来い」

 しかめっ面で頭を掻くと、斜め後ろのソフィに言葉を投げる芹沢。

「えーっ、お母さんの朝ごはん食べたい〜」 

 見た目は大人びたモデル的な雰囲気を漂わせているものの、ソフィと呼ばれた女のあどけない素振りを見て、自分より年下なのかと金平は勘繰った。

「おい、かなだらい、ついて来い」

 紫煙を漂わせながら踵を返すと、背中を向けたまま右腕を上げ、人差し指をクイクイやった。

 振り返らずに食堂から出て行く。

 金平は覚悟を決めたのか、表情を引き締め、小走りで芹沢の後を追った。

「お腹すいたけど、面白そうだから私も」

 ソフィもひょいひょいと軽い足取りで、金平の背中を追う。

「まったく」

 その姿を見て、腕組みしながら呟く社長だった。

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