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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第④マッスル◆新たなる脅威!!◆
110/151

共闘!!

「かなり苦戦してましたね」

 薄ら笑いを浮かべる浅黒い顔。肩口から背中にかけて、うっすらと筋電力の輝きが立ち昇っている。

 “鉄山靠てつざんこう”。

 ライオンを吹き飛ばした技。技の発動時、踏みつけた地面が広範囲に渡り陥没し、巨大なクレーターを成していた。

「どういうことだ?」

 身を翻し、姿を全面に晒すスコーピオンへ、困惑した表情を見せる金平。2メートルはあろうかという長身に、筋肉防衛軍と同様のビキニ姿。チャックより細身だが、引き締められた体と長い手足が岩壁の如く(そび)え立ち、人ならざる不気味な気配を醸し出していた。

「話は後にしましょうか。早く決めないとやっかいそうですよ」

 巨躯にはアンバランスな程の小顔いっぱいに笑顔を作ると、吹き飛ばされたライオン型SEがうつ伏せに倒れた方向を顎で示す。

 つい先日まで、理由も告げず襲って来た男が、肩を並べ加勢する。

 不可解以外の何物でもない。

「なんだかさっぱり分かんねーけど、一緒に戦ってくれるってことか?」

 視線はライオンへ向けたまま、怪訝な表情を浮かべた金平が歯切れ悪く呟く。

「あいつは……?」

 距離を置いた場所で、ようやく立ち上がった増山だったが、謎の男がライオンを吹き飛ばした一部始終を静観していた。

「奴が、スコーピオンか?どうなってる?」

  (いぶか)しみながらも、自らの体が未だ回復しきっていないことを確かめるため、小刻みに震える手を開いては閉じている。

「マスヤマサ~ン」

 意識が明瞭になったチャックが、顔面を鮮血で真っ赤に染めたまま増山に歩み寄ってきた。

「チャック、大丈夫か?とにかく木下が気になる、行こう!」

「イェッサー!」

 金平とスコーピオンが駆け出したのと、増山とチャックが駆け出したのはほぼ同時だった。

「後でしっかり説明してもらうからな!」

「ええ、その前にあのSEを撃退して、()()の優位性を示しましょう」

 ほくそ笑むスコーピオンを視界の端に捉えながら、疑念が金平の胸中に渦巻く。

『敵なのか?味方なのか?』

 その雑念を打ち払い、よろよろと立ち上がりかけるライオンに接近していく。胸部の大穴は塞がりかけ、先ほどの鉄山靠のダメージも、全身を覆う泡が脅威的な速度で回復させていた。

 背中を丸め、両拳を顎に着けた状態からスコーピオンの背中と両肩が破裂しそうな程膨れ上がる。

「シッ!」

 右ストレートが闇夜に弾ける。まるでそれは夜空を切り裂く稲妻。凄まじい速度で、立ち上がりかけたライオンの脇腹に叩き込まれた。

「!」

 強烈な痛みに顔を歪めるライオン。ほぼ同時に、金平の飛び膝蹴りが空中を舞う。

「はぁっ!」

 均整の取れた体が躍動し、難なくライオンの側頭部に叩きこまれた。

『行ける!』

 金平の脳内にファンファーレが鳴り響く。

 しかし──。よろめいたライオンが深く腰を落とし、空気を凍りつかせる程の殺気を放った。

「まずい!」

 スコーピオンが言葉を吐いた瞬間。異様な気配を察知した金平とスコーピオンが、咄嗟に飛び退く。

 地を揺るがす震脚。ライオンの背中が、まるでカメラのズーム機能を使うように拡大して見えた。左右に身を翻した金平とスコーピオンの巨体を掠めた技。

 ──鉄山靠。紛れもなく、先ほどスコーピオンが放った技と寸分違わぬ動きだった。

「ぐあっ!」

「つっ!」

 爆風と圧倒的な衝撃が走る。なんとか空中で体勢を整え、着地する二人。狼狽した表情の金平だが、すぐに半身の構えをとった。右肩に痛みがあるが、致命傷ではない。

 他人事といった表情で金平を見ながら、不気味な笑みを浮かべるスコーピオン。

「まさか鉄山靠まで使うとは。産みの親にそっくりだ」

「どういうことだ?」

 スコーピオンの意味不明な言動に首を傾げながらも、意識は目の前のライオンに向いている。

 その場で回転し、金平とスコーピオンに再び対峙するライオン型SE。

 一方、倒れた木下の元へ駆けつけた増山とチャックの二人。

「息はある。早く病院で手当てを」

「オ~ウ、あのライオンをナントカシナイトイケマセ~ん」

 互いに膝を突き、眉間に皺を寄せ視線を合わせた。

 突如敷地内に響き渡る排気音。目映い一つ目のヘッドライトが、一条のラインを地面に作り出す。

「あれは?」

 ソフィに寄り添われた社長が目を細めた。

「バイク?」

 ソフィの白い顔が、蒼白いヘッドライトの輝きに形の良い鼻と唇を照らし出される。

 前傾姿勢で跨がる、SUZUKIが誇るスーパースポーツ・GSX1300R Hayabusa。

 長い片足を地に着き、逆の足をステップにかけていた。

 ──(あおい)裕樹(ゆうき)。かつて木下と切り結んだ謎の剣士。ヘルメットは被っていない。

 スーツ姿のネクタイが、だらりとバイクのタンクにかかっていた。彫りの深い顔が、ヘッドライトの光に微かに浮かび上がり陰影を濃くしていた。

「木下君も社長もあの状態ですから、葵さんの剣技でとどめを刺してもらいましょう」

 笑顔は相変わらず、スコーピオンは隣の金平へ囁きながら進言する。

「お前ら、いったい……」

「さぁ!来ますよ!」

 金平の言葉を遮って、スコーピオンの表情が険しくなった。

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