部屋とビキニと私!!
「SEが現れる頻度ってのはどのぐらいなんでしょうか?」
「はい。奴らの出現パターンはこれといって決まってないんですよ。ただ、真夜中の人気の無い場所に現れることぐらいしかわかってません。なぜこの県のこの市なのかも不明です。」
腕組みしながら、首をすぼめる三国。
その話を聞きながら、あらかた菓子を食い尽くしたチャックが久しぶりに口を開く。
「ワタシたちは、深夜サギョウがメインなんで〜す」
「あの……それもそうなんですが、なんでSEが現れる位置や時間がわかるんですか?」
金平はチャックに素朴な疑問をぶつける。
「ソレハ、ミクニさんが作ったキカイが教えてくれマ〜ス」
三国に視線を送り、相変わらずの笑顔を見せるチャック。
「社長が初めてSEと遭遇した時に、持っていた通信機器にノイズが入ったそうなんです。SEの接近と共にそのノイズが大きくなったらしく……どうやらやつらは固有の電波を発しているようで。その後の研究で、その周波数を特定できました。やつらは出現する数日前から微弱な電波を出すんです。それを私が開発したセンサーで拾って、出現時間と場所を特定できるようになって」
「やつらが出現して人家にたどり着くまであまり時間が無い。それに我々が街中であのかっこもできないから、出現と同時にやつらを叩かなければならない。三国さんの探査能力が非常に重要なのさ」
増山が隣の三国の肩をポンポンと叩いた。恥ずかしそうに頭をかく三国。
確かにあの格好で街中に出たら、SEより前に彼らが警察に捕縛されるだろう。そう思いながら、金平の脳裏に一つの考えが浮かんだ……。
それは金平にとって、あまり歓迎すべき出来事ではない。
「あの、増山さん、一つ聞きたいんですが」
思いを口にする。
「どうした?金平君?」
「やっぱ俺も着ないとなんですかね?……テラテラのビキニ……」
その言葉に、一堂の間に沈黙が。
眉間に三本の深いシワを刻んで、金平に見入る社長。
屈託の無い笑顔で金平を見つめるチャック。
「もちろん」
増山は軽く顎を引いてキッパリ言った。
眉間のシワを解いて、社長が金平へウィンクと投げキスを送る。
意識が遠退きそうになる金平だった。
◆◆◆
社長がティータイムの終了を告げると、各自部屋に戻ることになる。一人きりになったことで、幾分落ち着きを取り戻した金平は、昨日と同じようにベッドに身を投げた。
幾らもしないうちに、部屋をノックする音が。
「どうぞ」
前夜かなり熟睡したのと、興奮で寝つけそうに無い金平がドアに向かって答えた。
ゆっくりとドアが開き、スキンヘッドがにょきりと覗きこむ。
「金ちゃん、制服持って来たんだけど……」
社長の手には、ビニールにパックされた新品のビキニとビーサンが。
顔を引き攣らせる金平。
「もし良かったら、新品か私のお古、どちらか好きなほう選んで」
恥じらう乙女のように目を伏せ、頬を朱に染める社長。
「新品でお願いします」
光の速さで即答し、新品を受け取りドアを閉める金平だった。
◆◆◆
テーブルの上にポツンと置かれたビキニとビーサンを眺めながら、SEと壮絶な戦いを繰り広げるビキニ姿の自分を想像し、金平は一人部屋で吹いてしまう。




