転生7
サザナが少女の扱いを決めた後、ルートヴィッヒは闇布で少女の身体を再び包み、サザナに隠し通路を使用する許可を取った。ルートヴィッヒは、少女が意識を取り戻した場合は自分がサザナの意思に添う様に言い含めておくと言い残し、寝室の隠し通路から少女を担いで去っていった。
サザナは人払いを解き、慌ただしく登城準備を整えると、二頭立ての箱馬車に乗り込んだ。
ユージニア侯爵邸からイーズウェル宮殿の敷地までは幾程の距離もないが、第二王子の執務室は敷地内の三つの宮門を抜け、幾棟もある建物を抜けた先に位置していた。その為、宮門での検閲を含めると辿り付くまで時間を要する。短縮できないのかと、いつもは忌々しく思う道のりだったが、平常心を取り戻す時間を得たサザナには、今日だけはそれがありがたく思えた。
ルートヴィッヒは少女とサザナを離し、サザナが冷静になるまで時間を置くことにしたのだろうと思う。一瞬にして常識や価値観をひっくり返された自分はあの時、正常とは言えなかった。あのままでは意識を戻した全裸の少女に詰め寄り、質問攻めにしていたかもしれなかった。・・・・・但し、好奇心を押さえることはできない。異世界という言葉。
ーーーーーーそして何よりも、七色の光と共に少女が他の誰でもない〝自分の前〟に現れたという事実。
とにかく今は、少女をサザナの屋敷に保護するという公的な算段をいかにしてつけるか、それを考えなければいけない。
何しろ、幼少時から王子殿下の遊び相手としての栄誉を賜っていたサザナはイーズウェル宮殿に特別に私室を与えられており、登城に要する時間が勿体ないと、宮殿の私室に留まることもしばしばだった。又、普段のサザナの行動範囲と言えば、幾程の距離もないユージニア侯爵邸とイーズウェル宮殿の往復のみである。しかも移動手段は箱馬車に限られている。
その様なサザナが、行き倒れの少女を自らの手で保護しなければいけない。
いつもの行動範囲からいかにして飛び出すか。
・・・・・・・それをまずは考えなければいけなかった。
次回、やっと王子の登場予定です。やっと。