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転生1
私は建築現場のクレーンを見つめていた。
日に焼けて赤茶けたオレンジ色の鉄の固まりが私の視界を序々に埋めていく・・・・・・
西日の射す中、目を細めて歩いていた私の視界の角で、何かが大きく動き、西日を遮った。
視線を元凶へと向けた瞬間から、体は痺れた様に指一本動かせず、クレーンから視線を外すこともできない。
あまりにも圧倒的な鉄の質量に、私の脳は死を確定させたかの如く、体を足掻かせることもない。
私はスローモーションで進む視界の中で安堵していた。
このまま暗闇に囚われ、私は私を失いたい。
鉄の固まりが目前に迫り、鉄錆が浮き出たオレンジ色の塗装が視界を埋め尽くす。
世界とのお別れの代わりに、祈りを捧げる。
私は神サマなんて信じていないから、この世界に。存在する万物全てに祈った。
私が世界中で一番大切で、大好きで、愛する人。
たった一人の家族。
たった一人の姉に。
どうか何にも縛られることなく、思う様に生きてほしい。
視界が暗転する。全ての感覚が遮断された。
それでも私には最後の最後に一瞬だけ、姉が私を呼ぶ声が聞こえたんだ。