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百様蝶

作者: 中田 勘

こんにちは、今日おいでの方は怪異好きの方々でしょう。

今日は様々な怪異の中で百様蝶についてのお話をさせていただきます。


とある農村に住む一人の男の話でございます。

彼は真面目で働き者でしたが困った性癖の持ち主でして、それは性格が他人のごとく入れ変わるものでした。

その男は暴力的になったり逆に鬱のように何もしなくなったり、まるで少年のような言動を行ったり、老人のように振舞ったり実に8つに分けられました。

そして当の彼はそのことを一切記憶しておりませんでした。

まれにそこはかとなく、覚えていられるだけでした。

なぜ自分が変人扱いなのかと疑問に思い。なぜ自分が可哀想だといわれるのかと疑問に思っていました。

しかし変人扱いも月日が流れれば周りの人も慣れてゆきます。

いままで可哀想の一点張りだった村の人々は、なんらかの怪異に取り付かれているのではと考えました。

彼らは言いました『お坊さんなら分かるに違いない。』と。

さっそくお坊さんを呼び彼のことを話しました。

お坊さんは実際に見ないことにはよく分からないと言って彼を注意して見ていましました。

半日ほど経った頃、畑仕事をしていた彼が急に焦り始め、泣き始めました。

お坊さんがどうしたんだと聞くと彼は母に頼まれていた用事を思い出し、今から始めても到底間に合わないと言いました。

お坊さんはお前は一人暮らしだろうと聞くと泣いてる彼は両親と兄がいると言いました。

しかし彼は一人暮らしです。

男の泣き声を聞きつけた村人は集まってお坊さんに、いかかでしょうと聞きました。

何が何だか分からないお坊さんは焦りに焦り迷った挙句こう言いました。

これは百様蝶の仕業だ。

怪異を作ってしまったのです。

とうぜん聞きなれない言葉にどんな怪異なのかと聞く者がいます。

そしてお坊さんはこう答えました。

『百様蝶は地域によっては百の蝶とも呼ばれてる。百とは数ではなく多いという意味を表している。なぜ蝶なのかというと、蝶によく似た蛾という虫がいるだろう、形はそっくりだが違うもの。そういう意味で、見た目は同じだが中に多くの心が住んでいるということになった。取り付かれた者に多くの心を持たせる蝶、百様蝶だ。』

村人はなにせお坊さんの言う事なので信じました。

このときにはもう泣いていた彼は元の彼に戻っていました。

彼にお払いを試しても、当然ながら効果がありません。

お払い以外にも多くのことを試しても同様に効果がありませんでした。

考えつくした村人はある者の一言で、一つの結論にたどり着きました。

百様蝶は高位の怪異であるという結論に。

高位の怪異に取り付かれた者が近くにいる。

それだけで不安になった村人は彼を殺す事にしました。

いくら高位の怪異でも心に住むなら取り付いた人間の心がなくると消えるだろうと考えたのです。

彼はそのことを酷く悲しみました。周りの人の中にも悲しんでいた者がいました。

しかし真面目な彼は自分の中にある多くの心のなかの誰かが、同じ村に住む者に村人に取り返しのつかないぐらいの危害を加えてしまうぐらいなら、と受け入れました。

彼は喉を裂かれれ、薪の中へと姿を消しました。


その後自らの命の引き換えに怪異を殺したとされた彼は敬意の対象となりました。

しかし残念ながら今ではその事実は彼の住んでいた地でも忘れ去られたものになりました。

ところで怪談の中では詳しく語られなかった百様蝶についてご説明を。

百様蝶は、とあるお坊さんがその場しのぎに創って、その存在を信じたために今でもその存在が残っている怪異です。

名の由来は、

『百』は数としてではなく多いという意味。

『様』は様子、そこから心の意味となりました。

『蝶』は蛾の形によく似ているが違うものという例えです。

地域によっては百の蝶、心神こころがみ。蛾蝶などど小洒落た言い方をする地域もあります。

百様蝶は取り付いた者の中にいくつかの心を創ります。

創る心の数は8つ。

子供のような心、老人のような心、暴力的な心、鬱な心、極めて善人の心、極めて悪人の心、落ち着きの無い心、そして落ち着きのある心と大まかです。

取り付かれたものは自分自身の繊細部分まで構築された性格を合わせて9つの心を所有する事になり、本来の性格と逆の性格が多く出てきます。

周りのものには変人扱いされ怪談の男のように生贄にされるか、恐れの対象となって殺されるか。逆に敬われる事もありますが殺される場合がほとんどでしょう。

怪異の位としては高い方ではないのですが心を司るものとして高位のものとされてきました。

因みに絵で描かれた百様蝶の姿は、体は蝶で頭は柔和そうな女のものでした。

彼は確かに百様蝶を殺しましたが怪異とは一匹ずつしか存在しないものではありません。

あなたの周りにもそのようなお方がいらっしゃるのではないですか。

百様蝶は人から人へと移ることは無いですが、同類の周りには他の同類も集まってきます。

それは怪異も同様。

もし周りに百様蝶だけに限らず怪異に取り付かれた者がいるのなら皆様も取り付かれぬようお気付かいを。

始めての怪談物です。

これは怖い系より不思議系だと思います。

いまでは多重人格や解離性同一性障害などと科学的に明らかにされていますが、昔はどうだったのだろうと考えて作った作品です。

書いていて面白かったので別の文構成でもかいてみたいですね。

ちなみに百様蝶は僕の創った怪異なので検索しても小説ぐらいしか出ないはずです。

同じ悪さをする怪異がいたらそれは仕方が無いと思って見逃してくれるとありがたいです。

怪異にはあまり詳しくないもので既出の可能性が。

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