表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

隣の彼女が突然、こんなことを聞いてきた『好きな人ができたら……どうする?』

作者: ニワトリ
掲載日:2026/08/19

放課後。

教室には、もうほとんど人がいなかった。


西日が窓から差し込み、机の上にオレンジ色を落としている。

その光の中に、俺と――こいつが居る。


「ねえ、ここ分かる?」


隣から差し出されたノート。

見慣れた字だ。

少し丸っこくて、少し雑。

でも、どこか丁寧な字だった。


「……あー、それはな」


顔を寄せて説明する。

肩が、ほんの少し触れた。


「……近いって」


「そっちが寄ってきたんじゃん」


「は?」


「は?」


――そんな、くだらないやり取りを繰り返していた。


「……ねえさ」


ぽつりと、彼女が言う。



「もしさ、好きな人とかできたら……どうする?」



「は? 急に何の話」


「いいから」


ペンをくるくる回しながら、こっちを見る。


「その人のこと、私に教えてくる?」


「……まぁ、別に。普通に言うと思うけど」


「へぇー、言うんだ」


「お前は?」


「えー……どうしよっかな」


にやっと笑う。

でも、そのあと一瞬だけ視線が泳いだ。


「……ヒントは出すかも」


「ヒント?」


「うん。分かる人には分かるやつ」


「絶対分かりにくいだろ」


「分かるよ。ちゃんと見てれば」


そう言って――


「例えば、こうやって隣にずっといるとか」


とん、と肩が軽く当たる。


「……勉強してるだけだろ」


「じゃあ、こうやって」


彼女はシャーペンを俺のノートに転がした。


「わざとちょっかい出すとか」


「邪魔なんだが」


「ひど」


くすくすと笑う。


「あとさ、他の子と話してると、ちょっとムカつくとか」


「それはただの短気だろ」


「……バカ」


軽く小突かれる。








――分かってる。


分かってるけど。









「……で? それがどうした」









わざと、何も知らない顔で言う。


一瞬だけ、彼女の手が止まった。








「……別に」


そう言って、またペンを走らせる。


――沈黙。


カリカリと、シャーペンの音だけが残る。


……やっぱり、少しだけ後悔した。


でも、今は壊したくない。

この距離も、この時間も。








なんて、思ってたのに……










――そんなの、無理だった。








「……なあ」






俺は、教科書を閉じた。


「もういいだろ、勉強」


「え、まだ全然終わって――」


「帰るぞ」


「は?」


立ち上がって、彼女の手首を軽く掴む。


「ちょ、なに急に!?」


「ヒント、分かりにくいからさ」


「は?」


ぐい、と引いて。


そのまま、距離を詰める。



「俺の答え、言っとく」



「……な、なにそれ」


互いの息が触れそうな距離。


彼女は逃げようとするけど――俺は、手を離さない。




「――言うって言っただろ。()()()()()できたら」


「……っ」





一瞬、彼女の瞳が揺れた。






「――お前が好きだよ」






彼女の顔が、ゆっくり赤くなっていった。

ここまでのご読了に感謝。

楽しんでいただけたなら、ブクマや感想、評価をいただけると大きな励みです。

それでは、また。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ