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episode9 君がいなくなった世界で

あの日からしばらくして春翔は無罪になったことを知った。春翔の気持ちを考えて会うのは控えていたが、優の呼びかけで今日集まることになった。久しぶりだからか、どこか緊張する。私はみんなで集まっていた公園に向かった。

「あ、小羽。久しぶり」

優と茜が手を振っている。

「久しぶり、元気だった?」

「うん。元気」

茜とは学校が同じなのでよく会うが、優とは久しぶりに会った。元気そうで何よりだ。3人で話していると諒が来た。

「諒!久しぶり!」

「ん、久しぶり…春翔は?」

「まだ来てない」

「…来てくれるかな」

誰も春翔の姿をしばらく見ていないので不安になっていると、後ろから足音が聞こえて振り返る。春翔がこちらに向かって歩いてきていた。

「春翔…」

みんなしばらく黙って春翔を見つめていたが、一斉に走り出して春翔に抱きついた。

「春翔おおおお。心配したよおおおおお」

「元気か?元気だったのか?」

「なんかやつれた?」

「春翔大丈夫?」

私たちの反応に春翔が苦笑いする。

「落ち着けよ、お前ら。元気だし、もう大丈夫だから」

春翔の言葉に安心して離れる。

「ごめんな。いろいろ迷惑かけて」

「いいって。私たちも春翔に何もできなかったから」

「俺はお前が元気でいてくれたら十分だよ」

「本当ごめん…」

「そんな謝られても困る。いつもみたいに馬鹿なことしてる方が春翔っぽい」

「そうだよ。春翔は笑ってないと」

「…うん、ありがとう」

私たちの言葉に今まであった不安がなくなったのか、春翔が少し笑った。

「…俺、お前らに言わないといけないことあって」

春翔の真面目な表情に私たちは顔を見合わせた。

「…俺、今日の夜の飛行機でここ出る」

まるで時間が止まったようにしばらく沈黙が流れ、理解できたと同時に困惑する。

「…え、どういうこと?」

「そんな…急すぎるって」

「ごめん。でも、弟と妹は母さんに引き取られたし、俺は不自由無いように稼ごうと思って」

「ここじゃ駄目なの?」

「1つのけじめとしても経験としても、ここは出ようと思って」

春翔の真剣な表情にもう何を言っても春翔の意思が変わることがないのを察した。

「…春翔も優もいなくなるとかそんなの無理」

「茜と諒はいるだろ?」

「離れ離れとか嫌」

「遊びに帰ってくるって」

「嘘」

「小羽」

「春翔はどっかに行ったらもう会えなくなる。そんな気がする」

我儘だと分かっていても、みんなの前だと分かっていても、目の前から春翔がいなくなってしまうことに怖さを感じて仕方がなかった。次こそ本当に春翔に会えなくなると思うと大人しく見送ることはできなかった。

「ちゃんと帰ってくるよ。約束する」

その言葉を信じることができず、黙って下を向いて涙を我慢している私を春翔がしゃがんで顔を覗く。

「お前のこと迎えに来るから。な?」

優しい瞳で私を見つめてそう言ってくるから、恥ずかしくても我慢が吹っ切れて溜め込んでいた涙が零れ落ちる。春翔が優しく笑って抱きしめた。

「小羽が泣くのはこれで何回目だ?」

「全部お前が泣かせてんだよ」

「最低、春翔」

「イチャつかないでもらっていい?気持ち悪いんだけど」

後ろから鈍い音が聞こえ、諒が痛がっているのでおそらく茜と優から強烈なキックでも食らったのだろう。

「俺はそろそろ行かないと間に合わねえわ」

そう言って立ち上がった春翔。私たちは行かないでほしい気持ちを我慢するしかなかった。

「元気でな」

「…こっちこそだよ。体調崩すなよ」

「崩したら県またいで看病しに来いよ」

「勘弁しろよ」

優が涙ぐみながら笑う。

「俺と優がいなくなってからは茜がこいつらの面倒見るんだぞ」

「今まであんたも含めて見てたようなもんでしょ」

「されてた側だろ、お前」

茜も泣くのを我慢してそっぽを向く。

「諒も。学校ちゃんと行けよ?あと女遊びは程々にな」

「うるさい」

いつも冷たい諒も下唇を噛んで下を向いていた。みんないつも通りだが、いつもとは違う別れで。

「小羽。絶対帰ってくるから。それまで少し待っててな」

「…うん。待ってる」

春翔は安心したようにじゃあ、と手を振って歩き出した。私たちはその背中を見送る。春翔が見ていないのをいいことに我慢していた涙をいっぱい流して。優の「またな」という大きな声に春翔は振り返らずに手を上に挙げた。

春翔がいつ帰ってくるのかは分からない。本当に帰ってくるのかも、私たちを覚えていてくれるのかも、何も分からない。でも、私は沢山の思い出と幸せをもらったから。君がいなくなった世界で私は精一杯生きようと思う。いつかまた会えることを信じて。君の器用なところも優しいところも、いたずら好きなところも口を四角にして笑う顔も、強くて勇敢な君がたまに見せる寂しげな表情も全部。全部、ずっと大好きだから。


fin_

皆様、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます՞߹ - ߹՞

私が人生で初めてしっかり完成させた小説がこれでした。とても思い入れのある小説です。

そんな小説はどうだったでしょうか?どなたかに刺さるお話であれたら、、と願っています。

登場してきた他4人のお話もあるので、そちらも投稿しようと思っています。ぜひ、他4人のお話も読んでいただけたら嬉しいです( ¨̮ )

それではこのお話ではここで…

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