第7話:白昼に還した
休憩の約10分間。
友人と話そうものなら、本題に入る前に過ぎてしまうほど短い時間だが、
現在友達のいない僕にとっては、なかなかどうして苦痛な時間だ。
クラスメイトからの視線や
「お前が声かけろよ」という空気を感じる。
転入生という存在が余程珍しいようだが、僕は宇宙人か?はたまたパンダか?
現国の教科書を取り出そうと鞄に手を伸ばす。
「あ......。」
そこで奴をしまい忘れていたことに気が付いた。
駅で見事なフライトを決めたクマだ。
教科書とクマを机の上に乗せる。
ぬいぐるみには、思念とか宿っていそうで、どうにも捨てる気になれない。
さて、どうしたものか。
「あの......朝霧くん。その子って......。」
そんなことを考えていると、僕に向けられた声が耳に入った。
その声は、正面の席に座る宮原さんが、何とも言えない不安そうな顔で発していた。
「あぁ......。これは、今朝、駅で拾って......。」
「え!?!?!?」
その瞬間宮原さんの表情は一変。
まるで、宝くじに当たったかのような明るい表情になる。
まさか......。
「あ、あのね!私、今朝その子と全く同じ子を落としちゃって!それで......!」
「じゃあ宮原さんのか。はい。」
予感は的中。持主へと返却した。
お前も、ちゃんと帰る場所があってよかったな。とクマを見つめる。
「朝霧くん。ありがとうね。この子クマゴンっていうの。」
受け取ったぬいぐるみを大事そうに見つめながら宮原さんは声を躍らせる。
クマゴン。何故そんなウ〇トラ怪獣みたいな名前が付いているのか流石に聞くのはやめておこう。
何はともあれ、彼女にとってかげがえのない存在なのは明白だった。
「朝霧くん、ありがとう。こいつ、今朝キーホルダーを無くして大騒ぎしてたんだ。」
そう僕に声をかけたのは、デカくてイケメンな男子生徒だ。名前は知らない。
「あぁ。ごめん。誰だかわからないよな。俺は柊木直哉。これからよろしく。」
僕の心を知ってか知らずか、自己紹介をされる。
「ナオくんは、私の幼馴染なんだよ!ねー?」
「いや、隣の家で生まれただけだろ。」
和気藹々という言葉がぴったりな二人の雰囲気に軽く胸焼けしそうになったがグッと堪えた。
――― キーンコーンカーンコーン♪
そうこうしているうちに予鈴が鳴った。
柊木くんはじゃあまたと言い残して廊下側の最後尾に位置する自席へ帰っていく。
一限の現国は、休憩時間とは裏腹に
これまでよりも、ほんの少しだけ長く感じた。




