第3話:白昼に灼けた
ピピピ――― ピピピ―――
「う……」
けたたましい目覚ましと朝日の眩しさで目を覚ました。
どうやら昨晩は、考え事をしているうちに眠ってしまったらしい。
「湊~!学校遅れるよ~!」
母さんの声だ。
―― そうか。今日から学校だった。
頭とは裏腹に、まだ起きていない重い体を引きずるように起こし、僕は部屋を後にする。
まだ見慣れない廊下を進み、これまた見慣れない洗面所の鏡と顔を合わせる。
寝不足を感じる顔を、冷たい水で洗い流すと、眠気も渋々去っていった。
制服は、まだ新品の匂いがした。
母さんが揃えてくれた、きちんとした高校の制服。
袖を通すと、少しだけ身体が固くなる。サイズは合っているはずなのに、どこか落ち着かない。
鏡をみるとそこには、まだ見慣れない、昼の僕が立っていた。
階段を降り、リビングへ向かうとお皿に乗った食パンが置いてあった。
いただきます、と呟きパンを手に取り、口に運ぶ。
「あ!起きてた!おはよう」
洗濯物カゴを抱えリビングへ入って来た声の主は母だ。
僕とは対照的なほど明るく、僕ら兄妹の前ではいつでも笑顔。太陽のような女性である。
僕は外見も内面もきっと母には似なかったのだろう、そんなことを最近よく思うようになった。
「ほーら!今日から新しい学校なんだから、シャキッとする!」
そういって、座っている僕の背筋を無理に伸ばす。
「グッ...ゲホッ...ゲホッ,,,。母さん、今食べてるから。」
「あら、ごめんね」
母さんはむせた僕に笑いながら謝る。
「明歩は?」
「うーん、まだ寝てるんじゃない?あの子は学校近いからね~。」
「そっか。」
明歩。4歳年下の妹だ。
まだ起きていないらしいが、中学校は家の近くにあるから問題ないんだろう。
そうこう考えているうちに朝ご飯を食べ終え、歯を磨き、玄関に向かう。
「新しい学校、頑張ってね。」
母さんに後ろから声をかけられた。その声には先ほどまでの明るさは無い。
「ごめんね、こんなタイミングで。」
「ううん、僕は大丈夫。じゃあ、行ってきます。」
昨晩よりも重く感じる扉を開いた瞬間。
今日の暑さを予感させる日光が、容赦なく僕を灼いた。




