第2話:真夜中に知った
「あたしね、お昼は生きられないんだ」
彼女の掴めない態度からは、それが嘘なのか本当なのか判別できなかった。
「じゃ!それだけ!この辺、街灯も多くないし、早く帰んなよ~!」
「え?ちょっと……!!」
僕の反応を待つこともなく、彼女は手をひらひらと振り、塀の向こうへ消えていった。
「……なんなんだよ」
ふたたび人気のなくなった路地で、僕はしばらく、その場から動けずにいた。
しばらくして、当初の目的だったコンビニへ向かう。
―――♪―――♪
東京で聞き慣れた入店音。
それだけで、少しだけ現実に引き戻された気がした。
「らっしゃっせ~……」
やる気のないバイトの声。
東京のコンビニと何が違うわけでもない。
棚を一通り眺めて、結局グミをひとつだけ買って、店を出る。
「……お昼は、生きられない……か」
夜風に当たりながら、頭の中でその言葉を、何度もなぞっていた。
東京と違うのは、この、どうにも取れないモヤモヤだけだ。
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『お昼は生きられない』
家についても、その言葉が無性に胸に引っかかって離れなかった。
――― 平日の教室。 窓から入る光がやけに白く感じて、黒板の文字は頭に入らない。
周りの同級生達は笑っている、でも自分だけが一歩遅れているような感覚。
昼休み。
騒がしいはずなのに、なぜか音が遠い。
土日になると、家の中がうるさくなる。
小さな声で始まって、最後には、怒号が飛び交う。
どこにも居場所がないわけじゃない。
ただ、そこに「生きている感じ」だけが無かったのだと思う。
「……ああ」
だから、かもしれない。
彼女の言葉が、どうしても他人事に聞こえなかったのは。
今、僕は昼に生きられているんだろうか?




