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第五日目

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iPadの画面を、陽翔は無言で見つめていた。


光沢のある画面には、昨日までに開いた無数のタブが並んでいる。「Administrator」「parallel computing」「逆コンパイル」「import」……ほんの数日前までは、聞いたことすらもないようなものばかり。けれど、少しずつ、意味だけは掴めるようになってきた。


YouTubeの動画、個人ブログ、海外フォーラムまで。片っ端から読み漁った。


その結果、既に陽翔は、"Script::Wolrd"を構成するプログラムを理解し始めていた。少しずつ、少しずつ進んでいる。


まるで、自分がこの世界の裏側を覗いているかのような感覚。


“Script::World”と名乗るこのシステムは、単なるイタズラやウイルスではない。

プログラムひとつで、現実が変わる。

それを、陽翔はもう知ってしまっていた。


それでも、やっぱり思ってしまうのだ。


「こんなもの……捨ててしまえばいいのに」


なのに、指が勝手に動いて、また新しい記事を検索している。

どこまで行っても「姉を殺した装置」なのに。


今日学校で蓮と話した時も、全部本当のことを話してしまいたかった。

小学校入ってからずっと同じクラスで一緒に過ごしてきた蓮に、隠し事なんてしたくない。

でも―――


そうしてしまうことが、できなかったんだ。


蓮にこのことを言ってしまったら、姉ちゃんの死がこれのせいだって、認めてしまうような気がする。

僕はそうやって、大切な人の死を受け入れて進む人になりたくない。


本当は、蓮に責められて、恐れられてしまうのが怖いだけなのかもしれない。

蓮は絶対そんなことしない。そう思うのに、その恐怖から逃げ続けている。卑怯なやつだ。


でも同時に――――絶対に、蓮を巻き込んではいけないと、思ったんだ。


ふと、陽翔はベッドに身を倒した。天井を見つめる。

静まり返った部屋。時計の音さえ、うるさく感じる。


「もし、もっとちゃんと考えてから行動できてたら……」

「もし、この力で人を助けることができたら……」


そんな“もし”が、何度も、何度も頭の中でループする。


でも、どんなに考えても、ひとつだけ変わらないことがある。


姉は、もう帰ってこない。


iPadの電源を落とす。画面が暗くなり、自分の顔が映り込む。


どこか他人のような、知らない顔。


「僕、こんな顔してたっけ……」


そう呟いて、陽翔は枕に顔をうずめた。


明日も、このまま目が覚めなければいいのに。

でも、また朝は来るのだろう。あの忌まわしいアプリと一緒に――。


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