弱虫ダニー④
敵の放った矢は円柱の側面に突き刺さりなんとか攻撃を免れた。
「バレッド降りるぞ!」
俺たちは素早く飛び降りその陰に隠れた。
「ダニー、なんなんだこれは」
正直こいつが特殊魔法を扱えるなんて思っても見なかった。
「あまり説明してる時間はねぇ、とにかく俺は今みたいなことができる。この盤面を荒らしながら隙をつくしかない」
さっきまでのダニーでは考えられないくらい、言動がはっきりしている。
こいつの中で何かが変わりつつあるのか。
「でもそういうのはあらかじめ言っとけ」
「使わねぇと思ってたんだよ!攻撃に不向きだしな!!」
しかし、こちらが劣勢なのには変わりない。
打開策を考えろ。
「へぇー!そっちのちっちゃい子も面白いね!!!」
「うるせぇ!!だれがちっちゃいだ!」
円柱の陰からここぞとばかりに怒鳴っていく。
「ただ僕たちも動いて場所を変えることはできるんだけどなっ!」
敵は移動すべく一歩目を踏み出した。
「チューブ。」
今度は相手の周りを筒状に盛り上げその中に敵を閉じ込めた。高さは20メートル程だろうか。塔のように高い。
「今のうちに場を荒らす。悪いがあの筒に蓋をすることはできねぇから時間は敵が浮遊してあそこからでてくる5秒くらいだぜ?」
なるほど地面をそのまま盛り上げることしか出来ず、自由に形を変形させることはできないのか。
奴らがほうきで浮遊してくる間にとりあえず三つの円柱を作ることに成功した。
「ダニー悪いがここからは別々で行動する。お前は引き続きあらせ、俺が隙をつく」
「あぁ、おそらくあの短髪も魔法を奪いながらバリアをはり続けるなんてできないはずだ、チャンスはあるぞ!バレッド」
「死ぬ気でいくぞ、ダニー。」
「分かった、でも俺も限界までやるが限度がある。筒はもうあと一回つくれるかどうかだ、。」
「あぁ、」
ダニーと俺は別々の陰に滑り込んだ。
手始めに筒から出てきた瞬間、そこを狙う。
チャンスは一瞬、自分の位置もバレるがやるしかない。
桃色の髪が筒の中から姿をのぞかせた。
ここだっ、。
1発打ち込むが、すでにはられたバリアに弾かれる。
ちっ、一歩上手か。
奴らが地上へ着地する。
「超魔法の子はそこにいるんだねぇ〜」
案の定位置もバレる。
「おい、ニーシャ、なにかの罠かもしれんぞ」
そんな策ねぇよ、くそが、。
「つぶしにいくよぉ〜」
俺のもとへと歩を進める。
どうする、脳を回転させろ。
「おーい!くそピンク髪!!似合ってねぇーぞ!かかってきやがれ〜」
ダニーが陰から飛び出して煽りをいれた。
「あ?てめぇなんつった?」
性格が変わったかのように表情、口調も変貌した。
「てめぇの髪がクソ似合ってねぇって言ってんだよぉ〜」
そう言ってケツを叩くダニー。こいつの煽りスキルは本当に高い。
「そっちまえよ〜全然似合ってねぇんだからぁ〜」
「おい、ニーシャおちつけ!!」
桃髪は拳を強く握り締め、歯も折れそうなほど食いしばっている。
「ドール、全部ぶち当てろぁぁぁぁぉ」
敵は人形が射れる全ての矢を放たせた。
「よしかかった、バレッドいまだ!!」
5本の弓が一斉に放たれたということは攻撃手段がないということ。おそらく次の矢が準備されるまでに7秒は要する。接近して近くから何十発か打ち込んでやる。
スピードをあげ距離をつめる。
ここできめるしかない。
「やっちまえ!!!バレッド!!!!」
「ねぇ、いつから僕が5体しか人形がだせないことになっての?」
桃髪が指を鳴らした。
その瞬間、敵の後ろに20を超える弓を構えたドールが現れる。
「ほんと勘に触る奴らだな。もうぶっ殺すよ。」
ドールが弓を引く。絶対絶命か。
「バレッド、まだだ!!!!」
ダニーがバレッドの前に滑り込み、手のひらを地面と合わせる。
「射ろ。」
「沈め!」
呪文を唱えた途端俺たち2人分の地面が一気に沈む。それと同時に敵を再び筒の中に閉じ込めた。
「くっ」
少し間に合わず、ダニーの肩と胸に矢が突きささる。
「ダニー!!大丈夫か?!?」
「よぉく聞いてくれ、時間がねぇ」
肩を抑えながら声を振り絞る。
すごい流血だ。
「今から、この地形、全て元に、戻す。俺を、殺せ」
「何言ってんだお前は、そんなこと、」
「俺が、死んだら魔法が消える、だから」
「なぜだ、なぜ解除する」
「俺は、お前を、信じる。だから」
ダニーは最後の力を振り絞り俺の肩を強く掴んだ。
「俺を、信じろ」
俺はその言葉を信じることしかできなかった。歯を食いしばり、指をダニーの心臓に当て撃ち殺す。
「信じるぞ、ダニー」
途端、全ての凹凸が解除された。急な地面の再生により俺は勢いよく空中に飛び上がった。
敵に焦点を合わせる、俺の指が指す先には、ほうきにまたがり唖然とした敵の姿が。
まさか、あいつ。
『おそらくバリアをはり続けるなんてできないはずだ』
ダニーの言葉を思い出した。
短髪がバリアを張っていないタイミングがあるとすれば、、それは
筒の中に閉じ込めてる時、
あいつは、はなからそれを狙って、。
「おぉい!!!ストール、バリアを張れ」
「あぁ!!バリァ」
「死っね!!!!!」
空中で放った2発の弾は敵の脳天まで鋭く伸びてそのまま撃ち抜いた。
「な、にっ、、、、。」
ニーシャとストールも落下し、そのまま息を引き取った。
地面には三体の死体が転がり、そして今タイムアップ。砂時計も消えて、街も元通りに。
ダニーの元に歩み寄り、上半身を抱える。
「やってくれるじゃねぇか、今回ばかりはお前の一人勝ちだな、ダニー。」
血だらけで穴が三つ空いたその体だが覇気を感じた。
「終わったようだなぁ、約束通りダニーを生き返らせよう。」
さっきまで誰もいなかったはずだが、確かに今俺の目の前には学長がいる。そしてダニーの胸に手を当て呪文を唱えた。
みるみるうちにダニーの体が治り回復していく。
「っ、、っておい!!なにしようとしてんだ!バレッド!!!ファーストキスはティアって決めてんだぜ?俺は!!!!」
目覚めたダニーは俺が上半身を抱えた状態にあたふためいている。
「勘違いすんな、」
両手を離しダニーを押し倒す。
「おい!もう少し丁重に扱え!こっちは一回死んでんだぞ!!」
いつものダニーだ。こっちの方がなんか安心するな。
そして目を合わせ強く手を握る。
「俺様を信じて良かったろ?」
「あぁ」
その手を引いて再びダニーは立ち上がった。




