表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

《声劇台本》シンデレラと不死身の双子

作者: うかんむり

0:暗い部屋


0:ドレスの女が腕を縛られ寝ている


0:すぐ近くに男が椅子に座っている


エラ:あれ……?


カストール:ああ、目を覚ましたか


エラ:あなたは……?


0:カーテンを開けて別の男が入ってくる


0:驚くべき事に2人の男はまったく同じ顔をしていた


ポルックス:兄さん、その子起きたの?


カストール:ああ。ポルックス、手紙は届けてこれたか?


ポルックス:バッチリだよ!


エラ:同じ顔……


ポルックス:はじめまして。僕はポルックス。こっちは双子の兄のカストール


カストール:質問をする。お前がアーサー王子の側室のエラか?


0:アーサー王子の部屋


0:アーサー王子は中央の机に向かい、仕事をしている


0:騎士が部屋の外からノックをする


ランスロット:殿下、急ぎお伝えしたいことがあります


アーサー:入れ


ランスロット:失礼します


アーサー:ランスロット。どうした?


ランスロット:エラが、馬車での移動中に襲撃を受け、誘拐をされました


アーサー:なんだと?


ランスロット:そして、賊からの要求があります


アーサー:ああ、申してみろ


ランスロット:アーサー殿下本人が直接来る事です。詳細はこの手紙に……


アーサー:差出人は書いてないか


0:アーサーが手紙を読む


アーサー:ほう、そうか……。ランスロット。俺は出かける


ランスロット:殿下自ら行かれるのですか!?


アーサー:そう手紙に書いてあるだろう?


ランスロット:ですが、危険です!


アーサー:騎馬100騎は連れていく。お前もついてこい


0:双子とエラの居る部屋


エラ:ここはどこですか?


カストール:質問に答えろ。お前はアーサー王子の側室のエラか?


エラ:ええ……そうです……


ポルックス:兄さん、強い言葉を使っちゃダメだよ。相手は女性だよ?


カストール:だからどうした。こいつは、父上を殺した王国の王子の側室だ


ポルックス:この子には罪はないよ


カストール:ちっ


エラ:カストールとポルックス……帝国のカストール皇太子こうたいしとポルックス皇子ですか!?


ポルックス:僕達の事、知ってくれてたんだ


エラ:存じております。もちろん……


ポルックス:さっきからずっとなんで敬語なの? 君は王妃でしょ?


エラ:でも、おふたりは皇族ですよね?


ポルックス:僕なんて元皇族なだけで、今は何者でもないさ


0:馬に乗るアーサーとランスロット


ランスロット:なんですって? エラの誘拐犯は帝国の皇子おうぞく!?


アーサー:可能性の話だ。お前は王国と帝国の戦争には参加していなかったか


ランスロット:はい。当時、私は同盟国である共和国に留学していて、戦争中は情報が遮断されていました


アーサー:そうか。あの戦争は王国の圧勝であった。俺の手で、皇帝の首をはねた。だが、双子の皇子は……カストールとポルックスは殺せなかった


ランスロット:殺せない? それほどに双子皇子ふたごおうじは剣の腕が立つのですか?


アーサー:片方の皇子おうじの首をはねた。だが、奴は立ち上がった。奴は不死身だ。自分の首を脇に抱え、逃げ出した

ランスロット:不死身……?


アーサー:ああ、首を切り落とされても逃げる奴らを誰も追えなかった


0:ポルックスとエラ


エラ:あなたが、不死身の双子皇子ふたごおうじ……


ポルックス:僕達の事を知ってるんだ?


エラ:戦争の話はアーサー殿下から伺っています


ポルックス:アーサー王子とよく話すんだ。仲良しな夫婦だね


エラ:そんな事ないです……私は平民育ちだし


ポルックス:知っているよ。エラ・グローレンズ。外資系企業がいしけいきぎょうの父上を持つ。母とは死別。アーサー王子主催の舞踏会ぶとうかい見初みそめられ、王子の側室となる


エラ:それだけ聞くととても羨ましがられる経歴ですよね


ポルックス:本当は違うの?


エラ:家では父が再婚した女とその娘達からは使用人同然の扱いを受けていました……王子の側室になって開放されたと思ったら、今度は他の側室や王妃が……


ポルックス:震えてどうしたの……?


エラ:私にもひとり使用人が付けられました……平民育ちの私にも優しい人で……


ポルックス:ほぉ


エラ:王妃の手の者に殺されました……死体には手紙を添えてありました。「次は貴様」と


ポルックス:え……


エラ:王宮での居場所なんてどこにもない。自分の部屋で毎日怯える日々


ポルックス:アーサー王子は助けてくれなかったの?


エラ:彼にとって側室達は自分の欲求を解消する為の道具なんです……たまに夜にふらっと来て、ことを済ませばすぐに帰るだけ


カストール:そうか……お前には人質の価値がないのか……ならこれ以上連れ回しても仕方ないか……


ポルックス:兄さん?


カストール:お前、帰っていいぞ


エラ:え……


カストール:役に立たない人質は足でまといだ。行くぞポルックス


エラ:待ってください……! 私を連れて行って……!


カストール:お前、死ぬぞ。さっきの話が本当ならアーサー王子はお前ごと俺達を撃ってくる


エラ:それでも、おふたりの弾除け(たまよけ)くらいにはなります……


カストール:自殺志願なら勝手に死ね


エラ:私を連れて行ってくれないんですか……


カストール:アーサー王子の夜伽よとぎの相手で役に立ててるじゃないか


エラ:嫌……あそこはもう嫌……


ポルックス:エラさん、大丈夫?


カストール:ポルックス。行くぞ


ポルックス:でも、兄さん、放っておけないよ


カストール:お前……お前は人質に情が湧いてしまうと思って、手紙を届ける役を任せたこのに、結局湧いちまうのかよ……


ポルックス:あはは、兄さんごめんね


カストール:仕方ない。連れていく。役に立てよ


エラ:頑張ります……


0:馬上のアーサーとランスロット


ランスロット:不死身の双子に勝つことが出来るんでしょうか


アーサー:ランスロット、お前は不死身のヴァンパイアの殺し方を知っているか?


ランスロット:ヴァンパイア……?


アーサー:ヴァンパイアは人の姿をしながら、人の血を吸う不死身の化け物だ。そいつらの動きを止める方法は


アーサー:銀の弾丸を心臓に撃ち込む事だ


ランスロット:双子の皇子にも銀の弾丸が有効と?


アーサー:まあ、この銃を試してみる価値はある。待っていろ。カストール! ポルックス! 死なないならば、永遠の苦しみを味あわせるまでだ!


0:エラ、ポルックス、カストールは包囲され追い詰められた


ポルックス:追いつかれちゃったか


アーサー:会いたかったよ。カストール、ポルックス


カストール:ああ、俺もだ。アーサー


ポルックス:僕は会いたくなかったかもね


ランスロット:エラ……今お助けします


シンデレラ:アーサー殿下……


アーサー:2人まとめてぶち抜いてやるから動くなよ


カストール:そんな鉄砲が俺達に効くとでも?


アーサー:試せばわかることだ


0:アーサーが弾を放つ


ポルックス:兄さん! よけて!


0:ポルックスがカストールを庇い、腕を撃たれる


ポルックス:ゔっ……!


カストール:おい、馬鹿野郎……


ポルックス:大丈夫。すぐ再生するから……


シンデレラ:嘘……傷口が塞がっていく


ポルックス:ゔっ……


カストール:ポルックス、どうした!?


ポルックス:腕が痛むんだ……ハァハァ……


シンデレラ:え、完全に治ったのに……


アーサー:銀の弾丸は本当に効果があるんだな


カストール:銀……?


アーサー:特殊性でな? 不死身のお前らの為の銀の毒だ。苦しめ


カストール:貴様ァァァああ!!!


ランスロット:殿下には手出しさせません!


0:カストールはランスロットに剣で斬り付けられる


カストール:ゔあ!


ポルックス:……兄さん! ゔっ……


シンデレラ:ポルックス様……! 大丈夫ですか!


カストール:てめぇ……この騎士野郎……


ランスロット:私の剣は鉄製の普通のものですから、その傷もすぐに癒えるでしょうがね


カストール:ハァハァ……


アーサー:ん?


カストール:ハァハァ……


アーサー:一向に傷が治る気配がないな……何故だ?


カストール:ハァハァ……そりゃそうだろうよ……不死身なのは弟のポルックスだけなんだからな


シンデレラ:え?


ランスロット:なに!?


アーサー:ほぉ……


シンデレラ:カストール様……一体どういう……?


カストール:帝国で、生まれたばかりの赤ん坊の皇子が高熱を出した。医者からも、長く生きれないと言われていた……


ポルックス:年老いた皇帝の初の男児であった。年老いた皇帝が作れる最後の子であろう


カストール:皇子が死んでしまえば皇族は途絶える。そこで、皇帝はとある決断をした


ポルックス:それは悪魔を召喚し、契約を交わすことだった。その悪魔は、赤ん坊を模倣した姿になり、皇子の代わりが生まれた


カストール:だがな? 皇子は死ななかったんだよ。奇跡的に熱が下がり、皇子は一命を取り留めた


ポルックス:悪魔と契約した皇帝にはふたりの同じ姿の皇子が残った。片方は本物。もう片方は偽物


カストール:容姿は同じ。2人とも同じように育てられた双子の皇子


ポルックス:だが、片方は怪我を負ってもすぐ直る。首を落とされても立ち上がる。不死身の皇子


カストール:それが俺達だ


アーサー:なるほど……不死身なのは悪魔が姿を変えた弟のポルックスだけであるということか。まあいい。この銀の弾丸を前には同じ事よ! 両方死ね! まずはお前からだ! カストール!


0:アーサーがカストールに銃を向ける


カストール:…………


シンデレラ:カストール様!


アーサー:死ね!


0:またも、ポルックスが飛び込み、カストールを庇った


ポルックス:ゔっ! ぐぁ……!


カストール:ポルックス!?


ポルックス:兄さん……大丈夫?


カストール:お前……!


ポルックス:僕は大丈夫だよ……不死身だから


カストール:でも、これはお前にも効く弾丸なんだろ?


ポルックス:ああ、そうだね。しかも、心臓ぶち抜かれちゃった。銀が全身回ったら流石に死ぬね〜あはは


カストール:なんで俺を守って……


ポルックス:愛してるからだよ……


カストール:でも、お前は本当は悪魔で……


ポルックス:でも、父上と契約して、兄さんをトレースした時に、僕の悪魔だった記憶は消えたんだ


カストール:ポルックス……


ポルックス:僕達は本当の兄弟だ。この感情は本物だ。そう信じているよ


カストール:ポルックス……!


ポルックス:生きろ……兄さん……!


0:ポルックスは衣服を残し身体が消え去った


カストール:許さねぇ! 許さねぇ! ああああああ!


0:カストールが剣を握り、アーサーに突っ込む


アーサー:来い! カストール!


ランスロット:させません!


カストール:邪魔なんだよ!


0:カストールがランスロットの右腕を肩から切り落とし、ランスロットは倒れる


ランスロット:(腕を切り落とされた強烈な痛みの声)


カストール:アーサー!!!


アーサー:カストール!!!


0:カストールとアーサーの剣を剣がぶつかり合う


カストール:はぁああ!


アーサー:ううううあああ!


カストール:うらっ!


0:カストールがアーサーの足払いをした


0:アーサーが倒れる


アーサー:なっ……!?


カストール:死ねぇええええ! アーサー!


0:カストールがアーサーの喉を突き刺した


アーサー:(断末魔)


シンデレラ:殿下…………


0:全員がアーサー王子の死に立ち尽くす




シンデレラ:(N)アーサー殿下の死の混乱に乗じて、私とカストール殿下はそこから逃走した


カストール:なぁ、シンデレラ。俺はアーサーをぶっ殺して復讐を果たした。でも、残ったのは虚無感だけだ


シンデレラ:そうなんですか……


カストール:お前の旦那を殺した俺が憎いか?


シンデレラ:何も思いません


カストール:ポルックスはなんで、俺を庇ったんだ?


シンデレラ:分かりません……


カストール:分からない事だらけだ……


シンデレラ:それでもポルックス殿下は生きろとおっしゃいました


カストール:そうだ……生きろと……


シンデレラ:カストール殿下?


カストール:決めた。父上の仇討ちでアーサーを殺し、帝国の残された勢力と共に王国を滅ぼすつもりだったが、やめだ


シンデレラ:そうですか……


カストール:特にアテはないが、お前もついてくるか? エラ

シンデレラ:そうですね……私もアテはありません


カストール:俺はポルックスみたいに不死身じゃないし、死ぬまで、生きるしかないな


シンデレラ:生きましょう。死ぬまで

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ