9/27
入部届
夜、入部届を机に出すだけ出して記入はせず、だらだらとパソコンで柴犬の動画を見ていたら、おばあ様がやって来た。私はイヤホンを耳から外す。
「ちょっといいかい?」
「うん。今日はありがと。庭のドミノの最後の一牌」
「あんなものお安い御用さ。それより、今日の午後、ウチに来てたのはお友達かい?」
「うん。高校で知り合った子」
そうかい、そうかいと相槌を打ち、おばあ様は遠い目をして言う。
「一花ちゃんがドミノしてるところ、久しぶりに見たよ。楽しそうに並べてたねえ」
「七実はね」
「一花ちゃんもだよ」
「私が?」
それはあり得ない。ドミノは楽しくなんてない。私はそのことを嫌というほど思い知ってる。
「ドミノ部に入るか、迷っているんじゃないかい?」
「迷ってなんか――」
「好きにおし。ドミノ部に入ってもいいし、入らなくてもいい。ただ、これだけは知っといておくれ」
「何?」
「私しゃ一花ちゃんのドミノ、好きだよ。おやすみ」
おばあ様が去り、あとに残されたのは、入部届の空欄のみ。私はペンを取り、一字一字刻みつけるように書いていった。