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|||||||||||||||ドミノ|||||||||||||||  作者: 仙葉康大
並川七実の第二章
5/27

たしか名前は

 お腹空いた。

 高校生活二日目。

 黒板を書き写す手をとめ、教室前方の壁にかかっている時計を見たりなんかして。

 お昼まであと三分、いや、二分。

 長針が短針に重なるのを、まだかまだかと待ち受ける。

 チョークの先が割れ、破片が落ちたそのとき、チャイムが鳴った。

 古文の教科書をしまう。立つ。挨拶。ありがとうございました。やった。午前の授業終わり。

 体格のよい女の子がこっちへやってくる。手には風呂敷に包まれた何か。多分弁当箱。

 昨日の放課後、ちょっと話をした、バスケ部の熊谷さんだ。思いつめたような目をしてる。

「一緒にお昼、食べてもいい?」

「もちろん。食べよ食べよ。私、おなか減って死にそうだよ」

 机を合わせる。そして手を合わせる。

「いただきま――」

「ちょっと待って」

 手で制す熊谷さん。

「昨日は、ごめん。並川さんの過去もよく知らないのに、勝手に怒って、教室を出て行ったりして」

「あ、いや、私も言い方とか悪かったかもだし、ほんとに全然気にしてないから、アハハ。熊谷さんも気にしないで」

 硬くうなずいて、熊谷さんは合掌し、いただきますとつぶやいた。

 熊谷さんの弁当は茶色いものが多い。きんぴらごぼうとかからあげとか。いいな。

 私がネギ入りの卵焼きをほおばっていると、熊谷さんが言った。

「昨日あの後、バスケ部の練習を見に行ったんだけど」

「どうだった?」

「少し拍子抜けしたけど、雰囲気はよかった。顧問の先生もバスケ経験者でしっかりしてた」

「へー。いいじゃん、いいじゃん。よかったね」

「私はバスケ部で決まりだけど、並川さんはどうなの? 部活。いい部あった?」

「フフフ。実は私も部活決めたんだよねー」

「え? ほんとに? 何部?」

「ドミノ部」

 おかずのれんこんの煮物をお箸から落とし、絶句する熊谷さん。

「私も自分でもびっくりなんだけど、机の中にあったドミノ全部並べたら、お前、ドミノ部入れってすごいロン毛の男の先輩に言われちゃって。それで色々言われてるうちに私もその気になちゃって。アハハ。私って単純」

「それってもう入部届も出したの?」

「うん」

「後悔はしてない?」

「今のところは」

 私がそう言うと、熊谷さんは深く息を吐いて、何かを諦めるようにうなずいた。

「並川さんと一緒にバスケやれないのは残念だけど、仕方ない。ドミノ部、がんばって」

「ありがとう」

「ドミノ部ってどこでどんな練習するんだろう。全然想像つかない。今日の放課後も活動あったりするの?」

「図書室に来るように言われてるんだー」

「図書室? なんで?」

「なんかね、どうしても入部してもらわないといけない人がいるんだって」

 たしか名前は――。


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