生駒
駒はそろうた。あとはどう使うかや。
ポッケに手ツッコんで鼻歌歌いながら昼飯買いに購買に行ったら、パンを求めて押し合いへし合いする生徒の一団から少し離れたところに、ぽつんとひとり、影の薄い男が立っとった。
「生駒やないか」
「あ、呑神先輩。お疲れ様です」
「自分、パン、買わへんのか?」
「知ってるでしょ。あんな猛獣みたいな奴等の中に割って入っていって、パンを買う気力も体力も僕にはないんですよ。だからいいんです。今日も売れ残った人気のないパンを買って食べますから」
自嘲気味に笑う生駒。こいつはいつもそうや。
「お前、もうちょい気張って生きなあかんで。ったく。しょうがないのう」
俺は頭を掻き掻きし、叫びながら荒れ狂う男の集団の中にダイブする。
「おい、どけや、どけっ、あほんだら。呑神狂鳴のお通りやぞ。どけ言うとんねん。しばくぞ、ワレ。さっさとどかんかい。おばちゃん、焼きそばパン二つね」
腕をねじ入れ小銭をわたし、パンを受け取る。邪魔な男どもをどつきながら売り場を離れ、生駒に焼きそばパンを放る。
「今日の放課後、体育館のいつもの場所に集合な。他の帰宅部のアホどもにも伝えとけや」
「僕、今日塾なんですが」
「んなもんサボらんかい」
購買を出て、一年の教室に寄り、廊下に面してる窓から並川を呼ぶ。ダチと飯食うてた並川がこっち見て、立ち上がる。
「あ、呑神先輩。こんにちは」
「今日の放課後体育館集合な」
「ドミノ部の活動ですか?」
「せや。そうや、このこと、倒山にも伝えとけ」
「え? でも一花ちゃんはドミノ部の部員じゃ――」
「今朝、俺の顔に入部届バーンって叩きつけおったわ、あのアマ。放課後なったらすぐ来いよ。ええな?」
「はいっ」
えらい気持ちのええ返事やな。さては倒山が心変わりしたんはこいつのせいか。いや、わからへんけど。とにかく新生ドミノ部始動や。今年は絶対負けへんからな。あいつの眼鏡にひび入るぐらいのすんごいドミノ作ったるわ。




